自分の所有する収益物件で入居者の他殺や自殺、孤独死などが発生すると事故物件となってしまいます。
そしてその後の収益が低下することがほとんどです。
まさか自分の物件では起こらないと思っていても起こってしまうのが入居者の死亡事故です。
不動産投資を長くしていると入居者の死に直面することがそこそこあるということです。
事故物件にはならいまでも、家族に看取られて亡くなる場合を入れると、入居者の死というものに遭遇する可能性は低くはありません。
不動産投資家としてはできるだけ避けたいことだと思いますが、多数の入居者がいる以上、死の問題に直面しないとはいえません。
ましてや今後はどんどん超高齢者社会に突入し入居者も高齢化していきます。
死の問題を避けるよりも、万一事故物件になってしまったときにどのような対処をすればいいのかなど、あらかじめ対策を考えておくことが不動産投資家にとっては現実的です。
この記事では、自分の収益物件が事故物件(自殺・他殺・孤独死)になってしまったらどうすればいいのかをご紹介します。
不動産投資でもしも自分の収益物件が事故物件(孤独死・自殺・他殺・事件)になってしまったらどうする?
対処法①入居者の事故(自殺・他殺・孤独死)を発見してしまったら・・・
- 他殺
- 自殺
- 孤独死
で、死後何日も経過した状態で遺体が発見された場合、まずは警察に通報しその指示に従うことになります。
同時に、連帯保証人や親族などにも連絡をとります。
その後の処理は専門の業者に消毒や原状回復を依頼します。
残置物については遺族にその処理をお願いします。
対処法②次の入居者に事故(自殺・他殺・孤独死)を告知するかの判断
事故物件を再度募集する場合、募集を依頼する宅建業者や入居者に貸主はその事実を告知しなけらばなりません。
貸主が告知をせずに入居者と賃貸借契約し、後日近所の住民などから事故の事実を知らされて『知っていたら契約しなかった』と争いに発展してしまうこともあるからです。
ただし死亡事故のすべてを告知する必要はなく、通常の病死(自然死)のように救急車を呼んだもののすでに死亡していたような場合までは告知する必要はないと考えられています。
貸主が必ず告知しなければならないのは、
- 他殺
- 自殺
- 孤独死の場合で死後長期間にわたり発見されず遺体が腐乱した状態で発見された場合
などです。
このような事故物件は、次の入居者への重要事項として必ず説明しなければなりません。
いつまで告知は必要なのか?
では、事故物件の重要事項の説明が必要なのはいつまででしょうか。
明確な法令はないのですが、
- 期間は5~6年間
- 入居者が2~3回入れ替わるまで
と概ね言われています。
事故物件の告知の期間は、
- 大きな事件として報道された
- 地域住民の記憶に深く残っている
などの場合は、嫌悪感が強いので長めに告知する必要があります。
不動産会社の従業員や知人などを短期間の賃貸で入れ替えて、入居者が何度も入れ替わったので告知の必要はないとする考え方は、悪質とみられるのでインチキは絶対にしてはいけません。
形式上だけクリアしても事故物件の事実は消えることはないからです。
対処法③事故物件の告知方法を不動産賃貸仲介業者とよく検討する
不動産賃貸仲介業者は宅建業法により、物件の事件や事故の事実を重要事項として入居者に説明する義務があります。
したがって、貸主は不動産賃貸仲介業者に事件や事故について説明を行い入居者にどのような説明をするのかを事前に打ち合わせる必要があります。
告知する期間については、あくまで目安であって法令などで定められた期間ではないため、入居者によっては6年以上経過していたとしても、3回以上入居者が入れ替わっていたとしても、『知っていたら入居しなかった』と主張し、契約の解除だけでなく金銭的な要求をしてくる可能性は十分にあります。
最悪の場合は慰謝料などを請求される可能性も否定できません。
やはり事件、事故があった部屋の募集は相当期間にわたって告知することが入居者にとっては望ましいことだといえます。
対処法④自殺や他殺の場合の損害賠償について
入居者が自殺した場合、事故物件となることで貸主が受ける損害について、入居者の遺族や連帯保証人に対して損害賠償を請求することができます。
しかし現実問題として、事故物件として数年間にもわたる家賃の減額分の損害のすべてを補償してくれる確証はありません。
遺族においては、相続放棄をされると損害賠償の請求もできなくなってしまいます。
したがって入居者が自殺した場合の損害賠償請求は困難と考えておくのが妥当です。
一方他殺の場合は、入居者に故意過失がないので室内の汚損についての原状回復義務など入居者側の損害賠償責任はないとされています。
つまり加害者側に責任があるということになり、犯人が特定され逮捕されないことには損害賠償請求ができないことになります。
そして加害者が捕まったとしても、支払い能力があるかどうかは別問題となります。
いずれの場合にしても・・・
貸主としては自殺にも他殺にも十分な補償がないことを覚悟しておかなければなりません。
そのうえで、事件や事故を未然に防ぐためにも、管理業者と協力しながら入居者とのコミュニケーションを密に図ったり、住環境や防犯を強化するなどの努力を続けていくことが重要になります。
特に高齢者入居者の場合は、定期的な安否確認の仕組みが不可欠になります。
収益物件の運用における最大のリスクが殺人事件と自殺
収益物件の運用にあたって、最もダメージが大きいのが自殺や他殺ではないでしょうか?
何も対策を講じなければ、事故物件としてその後も悪評がつきまとい、家賃収入も下がり、入居者が退去していってしまいます。
もし、自分の収益物件で自殺や他殺が起こってしまったら、どのように対処をすればいいのでしょうか?
起こることを防ぎ切ることはできませんが、保険である程度リスクヘッジしたうえで、自殺の場合は連帯保証人や相続人に損害賠償請求を検討し、少しでも損害を減らす努力をするべきです。
しかし、建物内部で入居者が亡くなった場合、状況によってはその後の収益物件の運用に大きなダメージを残す可能性があります。
その中でもダメージが大きいのが、殺人事件と自殺です。ダントツのツートップだといえます。
殺人事件や自殺は、自分の収益物件で起こる確率は低いとはいえ、可能性としては決してゼロにはならないリスクといえますので、いざという時の心づもりとして、どのように準備しておくかが重要だといえます。
自分の物件で殺人事件が起こったの場合の対策
殺人事件は、いつどこで起こるか想定することはできません。計画的な場合もあれば衝動的な場合もあり予測不能です。
昨今では残念なことに閑静な住宅街などでも起こっています。
大家の努力で殺人事件を防ごうと思っても防げるものではありません。
当然ながら殺人事件が起こってしまったアパートやマンションでは、入居者が一斉に退去してしまう可能性があります。
実際に所有する物件で入居が殺されてしまい、殺人事件後に他の入居者が一斉に退去してしまい、2年間にわたって入居者ゼロの状態が続いたケースもあります。
しかもその後やっと入居者がついたのですが、家賃は事件が起こる前の3割ダウンという惨状です。
もちろん入居者がいない間の賃料収入はゼロです。しかし、その間も金融機関への借入金の返済や、固定資産税などの支払いは、ずっと発生します。
このようなリスクをヘッジするためには、保険が有効です。今は入居者の自殺・他殺・孤独死などにも補償特約で対応する火災保険があります。
補償内容内容は各保険によって異なりますが、原状回復費用を補償してくれるほかに、6~12ヵ月程度の空室保証がついている火災保険もあります。
万一に備えてこのような保険にはぜひ入っておくべきです。特に現金ではなく金融機関からの借入によって収益物件を購入し、借入金の返済を家賃収入から充てている人は安心のためにもこういった保険にぜひ加入しておくべきです。
しかしながら、全国報道されるほどの殺人事件となると、保険の補償期間では損失を補いきれないケースも多いと考えられます。インターネットの普及した現在では、事件や事故の情報がいつまでも消えずに残っていることも増えています。
このような場合は、
- 外壁の塗り替え・エントランスの改築など、物件のイメージががらりと変わるようなリフォームを行い、物件名も変える。
- 家賃を下げて入居募集をし、運営を続ける。(家賃が安ければ事故物件でも気にしないとう人も一定数いる)
- 収益物件として売却
- 更地にして売却
などの方法がありますが、正直それでも完全に殺人事件のダメージを克服することは難しいといえます。少しでもダメージを緩和できればよいというイメージです。
自分の物件で自殺が起こった場合の対策
自殺の場合は殺人事件までの悪影響はありませんが、物件内における自殺の発生も防ぎようなないリスクのひとつです。
自殺が発生した場合は、原状回復の必要などもあり、当分の間その部屋を貸すことはできません。また、次の入居者には自殺があったことの告知の義務があるので、当然その部屋は埋まりづらくなります。
募集に当たっては家賃の値下げを余儀なくされ、大家にとっては大損害となります。
このような場合は、自殺してしまった借主との契約に連帯保証人がついていれば、連帯保証人に損害賠償を請求することが可能です。また、連帯保証人ではなくても、自殺した借主の相続人には、その部屋の賃貸契約も相続されるため、相続人に損害賠償を請求することができます。
判例では、家賃5万5000円のワンルームマンションの賃借人が自殺したケースで、賃借人の母親と連帯保証人に対して、大家が676万円あまりの損害賠償を求めて提訴して、132万円の支払いを命じた判決が出た事例があります。
その支払い金額の内訳は、
- 部屋を自殺事故から1年間賃貸できなかった損害を全額
(5万5000円×12ヶ月) - その後賃貸するにあたって従前賃料の半額でしか賃貸できなかったため、契約期間2年間分の半額分の損害
(5万5000円×1/2×24ヶ月)
で計132万円余りの支払いとなっています。
なお、事故の部屋に隣接する住居への影響に対する損害賠償については、現実に賃料の減収が生じていても、自殺と相当因果関係のある損害とは認められないとされています。
このような判例は出ていますが、実際には悲しみに打ちひしがれるご遺族に多額の損害賠償請求はしにくいものです。また、裁判となると時間もお金もかかります。
そこで、『契約期間中は借り続けて欲しい』という交渉であれば、すぐに遺品整理に入れない心境のご遺族も多いため、受け入れられやすい可能性はあります。
最大で2年分の家賃が取れれば、裁判で認められた損害賠償額と同等の額となります。
殺人や自殺などの悲しい事故は起こらないことが一番ですが、起こってしまった場合は、冷静な判断のもとに被害を最小限に食い止めるように行動することが大切です。
そして、自殺の場合は出来る限り周りの入居者に知らせない工夫が必要です。殺人事件の場合は警察やマスコミなども来てしまいどのみち分かってしまいますが、自殺はそこまでにはならないことが多いです。
他の入居者に知らせないことで、連鎖的な退去を防ぐというのが現実的な対応方法だといえます。
おわりに
- 不動産投資をしていると入居者の死に直面することがあり、起こる起こらないは別として、万が一事故物件になってしまったときの対策をあらかじめ想定しておくことが必要になる。
- 事故物件となってしまった場合は、次の入居者にいつまで告知を行うのかが問題になってくる。
- オーナーとしては自殺でも他殺でも十分な補償はないということを覚悟して、事故や事件を未然に防ぐ対策を、日ごろから管理会社と打ち合わせて行っておく必要がある。