不動産投資で融資による収益物件の仕入れを検討する際に、たくさんある金融機関の中からどの金融機関を選べばよいのか基準を知りたいという人は多いのではないでしょうか?
不動産投資ローンの融資を行う金融機関は大きく分けて、
- 都市銀行(都銀)
- 地方銀行(地銀)
- 信用金庫(信金)
- 信用組合(信組)
- 日本政策金融公庫
- 商工中金
- 農協(JA)
- ノンバンク
などがあり、融資額や融資基準にそれぞれ違いがあります。
各金融機関の種類ごとの大まかな基準を知っておくことでどこに融資打診をするのかを決めやすくなります。
この記事では、不動産投資で融資による収益物件の仕入れを検討する際に頭に入れておきたい、都銀・地銀・信金・信組・日本政策・商工中金・農協・ノンバンクの金融機関ジャンル別の不動産投資ローンの特徴をご紹介します。
不動産投資の融資における都市銀行(都銀)の特徴
- 三菱東京UFJ銀行
- みずほ銀行
- 三井住友銀行
- りそな銀行
がいわゆる都市銀行と呼ばれています。
明確な定義があるわけではないですが、東京・大阪に本店を構え日本全国広域に展開している銀行を指します。
預金量や金融取引量が膨大であるため資金調達コストが低く、貸出金利が比較的低い銀行です。
その反面、融資評価基準が地銀や信金などよりも厳しく個人で投資用ローンを借入するのは一番難しい銀行です。
比較的低金利で借り入れができるため、都銀でローンが引ければ不動産投資のキャッシュフローも自然と良くなるといえ、都市銀行でローンの借り入れができるくらいになるとさらに拡大できるといえます。
たまにですが、都市銀行の中でも不動産投資用ローンに積極的になる銀行が出てきますが、その時には有利な融資条件で借り入れができますので、タイミングを逃さないようにすることが大切です。
現在は比較的りそな銀行が積極的に融資しています。
不動産投資の融資における地方銀行(地銀)の特徴
地方に本店がありその地名が付いている銀行がほとんどです。
関東地方なら横浜銀行や千葉銀行、関西地方なら京都銀行、関西アーバン銀行、池田泉州銀行、近畿大阪銀行、九州なら福岡銀行、西日本シティ銀行などが有名です。
スルガ銀行は地方銀行ですが、ほぼ都市銀行と同じエリアに融資が可能な珍しい銀行です。
地方銀行は都市銀行であるメガバンクよりも規模が小さくなります。
地方銀行は都市銀行より融資評価は緩い傾向にありますが、保守的な傾向が強く積算評価を重視している場合が多いと言えます。
そのため、積算評価が大きく出る物件は地銀でのローンが通りやすくなる傾向にあります。
スルガ銀行は積算評価、収益還元評価ともしますが、どちらの基準も銀行のなかではもっとも評価が出やすい銀行となっています。
地方銀行は地方に根ざした銀行のため、借入する人の居住地にある地方銀行で融資依頼をすることになります。
たとえば東京の人が縁もゆかりもない愛知の地方銀行に融資依頼をするのは難しくなります。(地方に登記する法人を所有すれば可能となります。)
金利は都市銀行よりは高めですが、信用金庫や信用組合よりは概ね低くなる傾向があります。
不動産投資の融資における信用金庫(信金)・信用組合(信組)の特徴
信用金庫・信用組合は、地方銀行よりもさらに規模が小さくなります。
地方の狭いエリア(市単位、都道府県単位)を融資対象エリアとしています。
サラリーマンの人は通常都銀や地銀で給与振込をしているので信用金庫や信用組合へのかかわりが少ないですが、不動産投資ローンやアパートローンではとても重要な金融機関でもあります。
居住地と購入する物件の両方が信金・信組の近くにないといけませんが、信金や信組は都道府県の一部のエリアにしか支店を出していなかったりしますので、エリアの問題さえクリアできればとても融通がきく金融機関だといえます。
都市銀行や地方銀行が相手にしない個人零細事業者や中小企業を相手にしているため不動産投資を始める人にも親身になって相談に乗ってくれやすい傾向があります。
ただ、普段は商店街のおじさんなど個人零細事業者や中小企業の社長を相手にしているため、サラリーマンが副業として始める不動産投資について後ろ向きというか保守的な担当者が多いのも事実です。
信用金庫や信用組合では不動産投資への融資に詳しい担当者をいかに見つけられるかがカギとなります。
不動産投資ローンに後ろ向きでやる気の無い担当者に当たってしまうとまったく前に進みませんが、やる気のある担当者であれば属性や収入に難があっても融資を引き出してくれるケースもあります。
都市銀行や地方銀行よりも属性の評価が緩い傾向にあり、融資額が伸びるかはさておき融資自体は出やすい傾向にあります。
都市銀行や地方銀行では融資対象となる属性評価が出ない人は、信用金庫や信用組合に積極的に融資依頼をしてみることがおすすめできます。
不動産投資の融資における日本政策金融公庫の特徴
日本政策金融公庫は政府系の金融機関です。
全国がエリアでとても使いやすい金融機関といえます。
公的な機関のため起業家や社会的弱者にも積極的に融資を出します。
女性や若者、高齢者などは特に他の人よりも融資期間等で優遇されるため、融資の候補として挙げておいたほうがいいです。
金利は低めで、1%後半~2%中盤くらいまでです。
変動金利ではなく固定金利です。
固定金利でここまで金利が低いのは他の銀行にはない最大のメリットといえるでしょう。
弱点としては、融資期間が通常10年から15年未満と伸びないこと、融資額が5,000万円が上限となることが多いことです。
物件の利回りが高くないと収支がまわりにくいところがネックとなります。
融資評価は厳しめでフルローンを狙うのであれば共同担保を要求されるケースが多くなりますので、小型物件でチャレンジしてみるのがよいと考えられます。
不動産投資の融資における商工中金の特徴
商工中金も日本政策投資銀行と同じように政府系の金融機関です。
正式には商工組合中央金庫と言って、政府系の金融機関でありながら民間と共同出資の金融機関です。
他の政府系金融機関とは違い、融資だけではなく預金や債券の発行など、民間の銀行と同じような業務も行っています。
商工中金は全国がエリアであり、各都道府県に支店がありますので不動産融資も全国対応となります。
不動産投資ローンは他の銀行と同じように、積算評価と収益還元評価の両方により審査されます。
耐用年数が厳しいため築浅の物件しか評価が伸びにくい傾向です。
金利は1%~2%程度ですが、融資期間が最大で15年が基本のため、評価が出てかつ築浅の物件しか対象になりにくいのです。
築浅しか物件評価が出ないため、使い勝手は良くない金融機関です。
築浅であれば、都銀や地銀、信金や信組を使ったほうが長期ローンが組めて条件がいいからです。
ただし、それらからすべて断られたら検討候補にはなり得ます。
不動産投資の融資における農協(JA)の特徴
農業者によって組織された協同組合です。
他の組合では金融事業が禁止されていますが、JAでは金融事業を行うことができます。
知らない人も多いのですが、農家の預金をほぼ預かっているので資金量も豊富で、農家の組合員向けに様々な事業(冠婚葬祭事業、観光事業など)を行っている総合サービス業です。
基本は農家向けの事業ですが、農家以外の一般の人も利用することができます。
農家の土地の不動産投資への転用などの貸付も豊富で、不動産投資ローンについても積極的に実施しています。
しかし組合という組織のため、農家を中心とした組合員には貸しやすいのですが、農家ではない組合員(準組合員)には優遇があまりありません。
金利などでも農家は優遇されますが、農家でないとやや高めになる傾向です。
JAは地域ごとにJAバンクがあるので、融資対象エリアはそのJAバンクのエリアに限定されます。
なので融資対象エリアは信用金庫や信用組合と同じように狭い傾向があります。
融資期間は、都市銀行や地方銀行、信金や信組などと同じような考え方であり、政府系の日本政策投資銀行や商工中金とは異なるため長期融資も組めます。
金利は属性によりますが、2%~3%前後で借り入れできるので使い勝手は悪くなく、金利タイプも変動も固定も選べるようになっています。
不動産投資の融資におけるノンバンクの特徴
ノンバンクというと高利貸しのイメージがある人も多いかと思いますが一概にそういうわけでもありません。
預金業務を行わず他の銀行から借り入れて消費者に貸付業務だけを行う会社を指します。
不動産投資ローンを行っている有名なところでは、
- 三井住友トラストローン&ファイナンス
- セゾンファンデックス
- 新生プロパティファイナンス
などがあります。
都市銀行や地方銀行、信用金庫や信用組合などとは全く異なる評価基準で貸出業務を行っています。
各社、特色が全く異なるので、融資スタンスも各社各様です。
共同担保を取れれば再建築不可や違法物件にも貸し出したりもします。
融資金額は借りる側の属性にもよりますが2,000万円~5,000万円くらいまでがほとんどで、一定の金額を超えると基準が一気に厳しくなります。
なのでもし利用を検討するなら小型の物件の場合になります。
そして、融資評価基準が他の通常の銀行とは異なるので最初にノンバンクで借り入れた物件が2棟目以降購入するうえで足を引っ張るケースもあります。
ノンバンクは預金業務もなく他の銀行から資金を調達する仕組みなので、調達した金利よりも高い金利を取らないと利益が出ません。
なので金利は当然高くなります。
金利4%以上とることも普通ですので、収支をまわすためには高利回りの物件でしか難しくなります。
借りやすい反面、他の銀行では融資の下りない物件や評価の低い物件を購入する可能性が高いので、ノンバンクでの融資を受ける際には慎重に検討することが必要となります。
おわりに
- 不動産投資の規模拡大の実現には金融機関からの融資が必ず必要になります。融資を受ける金融機関を間違えたばっかりに拡大したくても拡大できなくなったなどのことがないように、金融機関の種類ごとの大まかな傾向を知っておくべきといえます。
- 世の中にはたくさんの金融機関があり、同じ銀行でも支店によって融資スタンスが大きく異なったり、同じ支店でもタイミングによって融資への積極性が異なったりするので、銀行×支店の数だけの融資の可能性があることを知ってあきらめずに可能性の追求で金融機関に融資の打診を行うべきといえます。