不動産投資で入居者からの退去の申し入れがあることは仕方のないことなのですが、退去申し入れの解約通知を受け付ける際にそのまま受けてそれで退去としてしまってはいないでしょうか?
もしそうだとしたら、コスト面や収益面でみすみす大きなロスをしている可能性があり大変もったいない場合があります。
なぜなら、
- 新規入居者の募集コスト
- 退去を引き留める条件交渉のコスト
を比較すれば、両者には非常に大きな差があり当然ながら新規募集のほうが圧倒的にコストがかかるからです。
マーケティング用語で解約を条件交渉やサービス提示で止めることを、『リテンション』といいます。
入居者からの退去申出に関してもそれが賃貸条件によるものが原因なのであれば、新たな条件を提示して交渉することで退去を引き留められる可能性があります。
入居者が退去してそのまま空室になってしまうのと、そのまま住み続けてもらうことは新規募集の費用がかかるかかからないかで収益に大きな差が生まれますので、できるだけ住み続けてもらいたいところではあります。
この記事では、不動産投資で入居者の新規募集よりも圧倒的にコストダウンできる退去希望者の引き留め=リテンションについてご紹介します。
入居者新規募集のコストは退去引き留めコストの倍以上かかっているという事実をまずは知る
賃貸管理会社の重要な業務の筆頭が入居者募集業務です。
空室を埋めていかなければ管理依頼者の不動産投資の売上である家賃収入が増えないからです。
しかし入居者募集の前にもっとしっかりと取り組んでおくべきことが実はあります。
それは、
- 既存の入居者を簡単に退去させないこと
に尽きます。
ここでの注意点ですが無理やり強引に何でも引き留めろというわけではありません。
退去の理由をきちんと聞いたうえで、対応可能な理由であってその原因に対処すれば退去しなくてもよいのであれば、入居者とwin-winの方向にもっていくことで、退去しなくても済む可能性を確認しているかどうかということです。
なぜなら、
- 退去して新規の入居者を獲得するコスト
- 退去を引き留めるコスト
を比べると言うまでもなく圧倒的に新規募集コストのほうが高いからです。
今後人口も減っていき、退去の引き留め提案=リテンションは不動産投資においてもますます重要になっていくと考えられます。
『新規募集のコストは退去引き留めコストの倍以上かかる』
ということを常に念頭に置いておく必要があります。
新規入居者獲得コストと退去引き留めコストを比較してみます。
比較①:新規入居者獲得コスト
- 原状回復費用:家賃2~4ヵ月
- 空室期間:1ヵ月~
- 広告費:家賃1~2ヵ月
- フリーレント:家賃1~2ヵ月
少なく見積もっても5ヵ月分、多ければ12ヵ月分以上の費用がかかります。
特に原状回復費用は大きく、その後の空室期間も長くなるほど損失が拡大します。
比較②:退去引き留めコスト
- 更新料を無料にする:1ヵ月
- さらに2年住んでもらえるなら商品券:1ヵ月(フリーレントは保証会社が入っていると難しいので商品券などをプレゼントする)
- 設備のグレード(給湯器交換・ウォシュレット設置など):2ヵ月
などのサービス施策が考えられます。
これはすべてやってあげなければいけないものではないので、
- 入居者の金銭的なメリット
- 今までの設備の不満
などを解消してあげることを目的に、2ヵ月分程度でおさまる内容で提案できることも多いといえます。
新規入居者募集コストより退去引き留め(リテンション)コストのほうが圧倒的に安い
上記比較①と比較②を比較してみると一目瞭然だと思います。
一例ですが、クレジットカード会社でも優良な顧客がゴールドカードを解約したいというと翌年の年会費が無料になったりします。
これも新規顧客を獲得するコストと解約を阻止するコストを比較した投資対効果での判断結果だといえます。
不動産投資も同じことで、退去希望だからといってハイそうですかと言っていれば、余分な新規募集のコストを負担していることと同じになります。
賃貸管理会社にも退去引き留め提案(リテンション)を徹底してもらう
オーナーは退去を引き留めてコストダウンに努めようとしているのに、退去連絡や退去通知を受けた賃貸管理会社の担当者が、
『ハイ、わかりました。』
で終わってしまっては困ります。
最低限、退去の理由を聞き可能であれば慰留することを賃貸管理会社にも依頼します。
たとえば、『家賃が高い』という理由退去したいという入居者の場合、
- オーナーと交渉してみましょうかと提案する
- 希望はどれくらいなのかをヒアリングする
- 家賃が下がれば住み続ける見込みがあるのか
などを、入居者の窓口である賃貸管理会社が確認、提案をして、退去を引き留めてもらうことは今後ますます必要になっていくと考えられます。
もちろん、どんな入居者でも引き留めろというのではありません。
その点は賃貸管理会社とオーナーで普段からコンセンサスをとっておく必要があります。
なぜなら、退去希望者がクレーマーやトラブルメーカー、人間的に問題があると思われる入居者であれば、そのまますんなりと出ていってもらいたいからです。
これを引き留めるとさらなるトラブルを起こしたり、図に乗って無茶な要求をしても受け入れてもらえると勘違いさせる危険性が高まります。
それ以外の入居者であれば引き留めしてもらうようにするために、賃貸管理会社と入居者に関する情報を打ち合わせしておくとスムーズです。
- Aさんは要引き留め
- Bさんはオーナー相談
- Cさんはそのまま退去
などとある程度振り分けておきます。
退去の理由が、遠方への引っ越しなどであれば引き留めは不可能です。
もし近隣に引っ越すという場合はその理由を聞いて、対処可能であれば相談して、残ってもらえるなら残ってもらうという意識を持つだけでもずいぶんと変わると思います。
管理会社が入居者のリテンションに消極的な理由を考える
しかし、賃貸管理会社は退去の引き留めに関して消極的であるのには理由があります。
なぜなら管理料よりも、
- 原状回復リフォーム費用
- 新規募集して決まった時の仲介手数料
- 広告費
のほうが、賃貸管理会社の収益としては大きいからです。
簡単にいえば入居者が入れ替わったほうが儲かるので、退去を止める理由がないからです。
退去を引き留めてしまうと、その収益機会を自ら潰してしまうことになってしまうということです。
それでも賃貸管理会社に意向を聞いてもらうために、退去時にはこの引き留めプランを提示してみてくださいと管理会社に指示して、入居者退去のたびに確認することが必要です。
裏を取るわけではありませんが、退去が決まった入居者にオーナーから挨拶の連絡を入れて、その時に賃貸管理会社から条件変更等の提案があったかどうかを確認すれば、管理会社に対する抑止効果にもなります。
そして辛抱強く賃貸管理会社と交渉し続けても思い通りにならないのであれば恐れずに思い切って管理会社の変更をして、オーナーの希望が通る管理会社を使って退去率を減らす試みをしてみる価値は存分にあります。
管理会社に希望を伝えるときもコストコストと言わずに、自分の物件に一人でも多く快適に長く住んでほしいというビジョンをもとに伝えると伝えやすいと思います。
不動産投資は入居者に家賃を払ってもらい利益を出す事業なので、
- 新規募集するコスト
- 解約を引き留めるコスト
の違いを理解して、コストパフォーマンスを考慮した不動産投資をすることが大切になります。
おわりに
- 入居者を新規募集して獲得するコストは、退去を引き留めるリテンションコストよりも圧倒的に高いということを理解する。
- 可能であれば退去希望者をサービス条件で引き留めることが望ましいし、コスト面でも有利となる。
- 賃貸管理会社とも、退去連絡や退去通知の受理時にそのまま受理せずに慰留してもらうように日ごろからコンセンサスをとっておく。