住宅ローンを滞納してしまい、裁判所から競売開始決定の通知が届くと、そのあと1ヵ月もしない間に裁判所の執行官からの手紙が届きます。
裁判所の執行官とは競売の手続きを進める裁判所の担当官のことです。
裁判所の執行官からの手紙の内容は、
『この家を競売にかけるための家の調査をしますので立ち会える日時を調整させてください』
という内容が書かれています。
競売手続きは債権者からの競売申立に基づいて裁判所が家の売却を入札によって進める手続きです。
しかし、何の情報も無いのに買いたい金額を書いて入札して下さいと言われても、入札をしようとする側も困ってしまいますよね。
競売で入札するにあたってのある程度の不動産の情報や金額の目安が必要になるはずです。
ネットオークションで例えれば、商品の写真や状況の説明、最低落札価格のようなものです。
なので、競売開始決定がなされると、裁判所が競売手続きで入札を募るために必要になる下記2点、
- 競売入札希望者への競売不動産の開示資料の作成
- 最低入札価格を決めるための不動産の価格評価
を行うために、裁判所から執行官が不動産鑑定士を連れてやってくるというわけです。
上記をひっくるめて執行官からの手紙には『現況調査』と記載されています。
裁判所の執行官が来る目的は『現況調査』のためです
裁判所から執行官が来る目的は、競売入札希望者への競売不動産の開示資料を作成するための『現況調査』です。
競売手続きが進んでいって競売の入札期間のスケジュールが近づいてくると、
という裁判所が運営する競売サイトに競売不動産の情報が掲載されることになります。
裁判所は競売での入札を募る際に、この『BIT|不動産競売物件情報サイト』内で、入札希望者が入札を検討するための資料として、
- 物件明細書
- 現況調査報告書
- 評価書
の3つを競売物件ごとに開示しています。
これらの開示資料は3つあるので『3点セット』と呼ばれています。
これらの『3点セット』の資料をもとに、競売不動産の入札を検討している人は、
- 入札するのかしないのか
- 入札するとしたらいくらで入札するのか
などを検討していくというわけです。
そして『3点セット』の調査結果と評価書をもとに、『売却基準価格』を決めて最低入札価格を提示して『売却基準価格』以上で入札を受け付けますという告知を行います。
最終的には、入札期間内に売却基準価格以上の最高値で入札した人が競売を落札でき、その後落札代金を裁判所に納付すれば裁判所から落札者として競売不動産の所有権を移転されるという流れになるのです。
なぜ競売手続きになると裁判所の執行官による『現況調査』が必要になるのか?
普通に家を売却する時に裁判所から執行官がくるなんてことはありませんよね。
ではなぜ競売手続きになると裁判所の執行官による『現況調査』が必要になるのでしょうか?
一つ目の理由としては、普通に家を買う時と同じように競売不動産を内覧することができないからです。
競売は手続き上、裁判所が債権者からの申立てだけに基づいて、所有者の意向を確認することなく強制的に不動産を入札手続きにかけて売却する仕組みです。
競売申立てをされた不動産の所有者も売りたくて売っているわけではないので、中には協力的な所有者もいるかもしれませんが、所有者の協力が得られないという前提で強制的に進めざるを得ないという側面があるんです。
なので、最初に一度だけ裁判所の執行官によって『現況調査』を行って『3点セット』の資料を開示すれば、あとはそれだけで競売手続きが進んでいくようにしているというわけなんです。
入札する側としては、家の中を見ずに裁判所の開示資料を頼りにいくらで札を入れるかを決めて入札を行うことになるのです。
さすがに家の中も見れないのに、材料も何も無しでさあ入札してくださいとはできないため、『3点セット』の資料を開示して公平に競売手続きをすすめるために『現況調査』を行っているのです。
また裁判所が現況調査を行ってくれていることで、競売で入札を検討する側にとっても、開示資料を見て室内の状況や売却基準価格の根拠となる評価額を確認することで、入札価格を決めやすくなり、よりスムーズに競売での売却が進みやすくなるというメリットもあるのです。
裁判所から執行官が現況調査に来ることを拒んだりドタキャンしたらどうなる?
冒頭でもお話しした裁判所の執行官からの手紙が来て、連絡をよこすように書いてあってもそれを無視し続けてしまう人も中にはいるんです。
また、いついつに来てくださいと約束したのにも関わらず、忘れたのかわざとか、約束の時間に留守にしてドタキャンしてしまう人もいます。
その場合はどうなってしまうのでしょうか?
無視やドタキャンを続けていれば執行官は来ないのでしょうか?
そうなってしまうと競売手続きが進まず裁判所としても案件がどんどんたまってしまいますので、裁判所の執行官は無視やドタキャンが続くようなら鍵屋さんを連れて来て家が不在でも鍵を開けて中に入って現況調査を行う権限を持っています。
これは競売になった家に所有者が住んでいるとは限らないケースも想定されています。
すでに引越してしまっていて空き家になっている場合です。
夜逃げのような形でどこかに引っ越してしまい所有者と連絡が取れず音信不通でも、執行官は競売手続きを進めていかなければならないからです。
なので、執行官からの手紙がきたら、家に住んでいるのであればきちんと連絡を入れて予定を組んで立ち会ってもらうことをおすすめします。
おわりに
ちなみに、裁判所の執行官が来ても家の中の家財道具に赤紙をペタペタと貼られてしまうということは絶対にありませんのでその点では安心して下さい。
裁判所は借金取りではありません。
あくまで住宅ローンの債権者である金融機関からの競売申立てに基づいて競売手続きを『執行』しているだけです。
なので競売手続きを進めていく権限はものすごく強く与えられているのです。
裁判所の執行官からの手紙が来て初めてご相談頂いたご相談者様は、『執行官』という文字の響きに対して、けっこうな割合で家財道具などを持っていかれたり差押えられるのではというイメージを持っていて観念してご相談に来られたという方も少なくありません。
競売開始決定の通知が来たあとに裁判所の執行官からの手紙が来たら、上記のように競売手続きがどんどん進んでいくことになりますので、なる早でご相談を頂ければと思います。
まずは今の大変な状況をお聞かせください。
必ず解決してみせます。