不動産投資でローンを組む際に頭金を多く入れたり、繰り上げ返済をしたりして、残債をできるだけ早く返済した方がよいのでしょうか?
実は不動産投資においては、ローンの残債を減らすよりも、手元の資金の確保のほうが大切です。
自宅を購入する際に住宅ローンを使う場合、頭金を多く入れたり繰り上げ返済をしたりすることが、毎月の家計負担を減らすために有効だと言われています。
しかしこれは、アパートなどの収益物件に対する不動産投資の融資には必ずしも当てはまりません。
この記事では、不動産投資でのローンの返済は頭金を多く入れたり繰り上げ返済をしたほうがよいのか?についてご紹介します。
不動産投資のローン返済での繰り上げ返済のメリットが少ない理由
不動産投資では手元の現金を使ってローンの残債を減らすよりも、手元の現金を使ってその分以上の運用ができればその方が得です。
住宅ローンでなぜ多くの人が頭金を入れたり、繰り上げ返済をしたりしたがるのかというと、毎月の給料から住宅ローンの返済にあてる金額を減らしたいという理由からです。
例えば、住宅ローンで3000万円の借入があり、元利均等で金利1.5%、融資期間が30年だとすると、毎月の返済金額は10万3536円になります。
これに対して、頭金を500万円入れて融資による借入金を2500万円にすると、毎月の返済額は8万6280円になります。
頭金を500万円入れたり、繰り上げ返済をしたりすると、頭金ゼロのときと比べて毎月1万7256円の負担減になるので、その分だけ生活が楽になるということです。
しかしこの場合は、住宅を購入する際に頭金として500万円を貯金から使っています。
毎月のお金の流出だけを見ると減っていますが、実際は500万円に対して毎年1.5%の金利分しか得をしていないことになります。
同じ500万円を年1.5%以上の利回りで不動産を含む金融商品を買って運用することができるのであれば、頭金を入れて月々の住宅ローンの支払額を少なくすることは合理的ではありません。
住宅ローンの例を挙げましたが、収益物件への融資については考えるべきポイントがまた異なります。
不動産投資でのローンの返済に関する考え方のポイント
不動産投資では、家賃収入に対する返済の比率は50%を切る水準が安全だと言われています。
頭金を多く入れたり、途中で繰り上げ返済をしたりして返済金額はできるだけ少なくしたほうが、安定的に不動産投資を行うことができます。
しかし、収益物件を所有していると、突発的な出費に見舞われることがよくあります。
- 給排水設備の故障
- 雨漏り
- 退去によるリフォーム
- エアコンの故障
など、いろいろな臨時出費が重なることも少なくありません。
そのような時に、住宅ローンの例のように500万円の自己資金を頭金で入れてしまって貯金額がなくなっていると、これらの臨時出費に対応できなくなる恐れがあります。
毎月の返済を少なくして返済比率を下げることは重要ですが、不動産投資においては臨時の出費に耐えられるだけの自己資金を手元に用意しておくことがリスクヘッジのためには絶対に必要なのです。
不動産投資の投資規模の拡大にも手元現金が必要
自己資金を頭金や繰り上げ返済に利用すべきではない理由は、突発的な出費に対するリスクヘッジ以外にもあります。
不動産投資においては頭金は次の収益物件の購入資金として活用できる可能性があります。
住宅ローンの場合とは違い、次の収益物件という運用先があるということです。
500万円を繰り上げ返済せずに、次の物件を買うための手付金や頭金にすることができれば、よりキャッシュフローを得られる機会が増えることになります。
不動産投資の規模を拡大したいのであれば、自己資金はできるだけ温存しておいたほうが得策です。
不動産投資で手元に自己資金を残す際の注意点
融資を受ける際には、できるだけ頭金を入れずに繰り上げ返済もしないほうが良いといえますが、注意するべきことが1点あります。
自己資金の温存は、現在のように低金利で資金調達ができる場合に限るという点です。
金利が上昇する局面においては、繰り上げ返済をして借入金を減らすことが有効な場合もあります。
また、数億円など投資額が一定規模以上に達している場合は、資金の一部を繰り上げ返済に回して自己資本比率を高めることが、リスクヘッジや追加融資を受ける際に有効に働く場合もあります。
おわりに
借入金を増やして攻めるのか、借入金を減らしてリスクヘッジするのかのバランスは、市中金利が高いのか低いのかによっても変える必要があります。
外部環境によって取るべき行動は変わってくるということです。
しかし。現在のような低金利の状況下では、自己資金をむやみに借入金の返済にまわすよりも、次の投資の頭金にしたり、突発的な出費に対する備えとしてリスクヘッジしておくほうが有効だといえます。