減価償却費で節税ができるのは分かりますが、減価償却費で節税をした結果、資産管理法人の決算が赤字になってしまっては金融機関の評価が下がって次の融資を受けられなくなるのでないかと心配になることはないでしょうか?
今後も銀行からの借入で物件を増やして不動産投資の規模を拡大していきたければ、なるべく銀行からの融資を受けやすい状態にしておきたいのが本音のところだと思います。
結論から言うと減価償却費を計上した結果の帳簿上の赤字は次の物件取得時の銀行融資の評価にはあまり大きく影響しないことが多いです。
この記事では、不動産投資を法人化したあと決算が減価償却費で赤字決算だと次の新規融資の際に不利になるのか?についてご紹介します。
不動産投資を法人化した資産管理法人の決算が減価償却費で赤字決算だと次の新規融資の際に不利になるのか?
不動産投資の減価償却は銀行からはキャッシュフローに加算して評価されるので問題なし
金融機関が本人の属性や経営している会社の財務状況を見るとき、減価償却による利益の圧縮や赤字をどのように評価するのかというと減価償却が多くて赤字になっているからといって金融機関の評価が下がることはありません。
金融機関は個人でも法人でもその貸出先がきちんと返済ができるか、つまりキャッシュフローを最重要視します。
減価償却費はキャッシュアウトを伴わない唯一の経費です。
帳簿上に費用計上されるだけでありその金額が出ていくわけではないのです。
そのため逆に
◎利益+減価償却費
でキャッシュフロー(稼ぐ力)を判断してくれます。
最近ではバランスシート(貸借対照表)、損益計算書に加えて、キャッシュフロー計算書が経営上も重視されるようになってきました。
このキャッシュフロー計算書でも『利益+減価償却費』がスタートの金額になっていますが、発想は同じで減価償却費は支出を伴わない唯一の経費なので利益に加算して計算することになります。
機械や車両、太陽光発電システム、そして収益物件など、これらの償却資産の取得によって多額の減価償却費が計上されていても、それらはきちんと金融機関が見て評価してくれます。
また、法人の場合で稀に高額の役員報酬を取っている人で会社の損益計算書が赤字のケースがあります。こういう場合はどのように判断されるでしょうか?
この場合も同様に融資は受けられます。
オーナー会社においてはオーナー社長が会社に利益を残すか役員報酬として個人に移転するかだけの違いであり、金融機関はキャッシュフローとして、
◎利益+役員報酬+減価償却費
を利益として見ています。
減価償却費で節税して利益を圧縮したら融資の際に銀行評価が下がるのか?
減価償却費を使っての
- 節税
- 資金回収を早める
などの手法は、利益を圧縮するので銀行からの評価に悪影響がでると思われていないでしょうか?
実はそのようなことはありません。
それは、他の経費とは決定的に違う減価償却費だけにある特徴が関係しています。
銀行が減価償却をプラスに評価する理由
銀行員が重視する『債務償還年数』の考え方
銀行員が最も重視しているのが債務償還年数と言われています。
お金を貸す側からすると、
- 確実に返済できるかどうか
- 貸したお金が毎年生み出される現金でどれだけの年数で返せるか
が重要であり、その指標として会社が利益や伽種フローで借入金を何年で返せるのかを見ていることになります。
計算式は下記のようになります。
◎債務償還年数=(有利子負債-現金)/(税引後利益+減価償却)
となり減価償却が分母でプラスされているところがポイントとなります。
債務償還年数の計算式に減価償却費がなぜ入っているのか?
減価償却費とは建物の取得価格を耐用年数で割って経費化していくものです。
実際には手元からキャッシュアウトしないのに経費(損金)計上できるのが減価償却費です。
これは他のどの経費と比較しても減価償却費だけが持つ特徴となります。
他の経費は使えば使うだけ、その分のキャッシュアウトが伴うために現預金が減ってしまい決算書の質はその分悪くなってしまいます。
しかし、減価償却費だけはキャッシュアウトが伴わないために、減価償却費の金額が多くてもその分決算書は良くなりやすいからです。
そのため、銀行は、何年で貸したお金が返ってくるかを見るときに、
『減価償却費をプラス』
で見てくれます。
つまり、減価償却費で利益を圧縮したとしても、減価償却費をプラスで戻して見てくれるため、減価償却費が増えても銀行評価はマイナスにならないということになります。
これは、よく覚えておきたいポイントなのですが、
『減価償却費を増やしても銀行評価は下がらない』
これがくどいようですが、不動産投資にとっては重要なポイントとなります。
もちろん、収益を生まない資産であれば購入する意味がありませんが、収益の上がる資産であればそれだけで銀行の評価が下がるということはないことになります。
おわりに
減価償却費を多く計上することで損益計算書が赤字になっている場合でも、キャッシュフローが黒字であれば正常な経営を行っている企業として判断してよいという金融庁の見解もあり、減価償却による赤字は融資の際の金融機関の審査にマイナスにはならないと考えて問題ありません。
金融機関は会社の属性のなかでも『お金を稼ぐ力』を最重要視するからです。
そしてその稼ぐ力は、
◎利益+減価償却費
という形で利益に足して計算することになります。
収益物件の取得によって多額の減価償却費が計上されていたとしても、それらはきちんと金融機関が見て評価してくれますので安心です。