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破産管財案件の任意売却で破産管財人弁護士と交渉して財団組入額を下げて任意売却がまとまった成功ケース

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銀行などの担保権者は担保物件所有者が破産していても、競売の申立てをすることができます。

しかし競売を実行するよりも破産管財人弁護士を売主として任意売却を行うほうが、より高く売却することができ回収額がアップします。

破産管財人弁護士も担保物件を任意売却することにより、破産財団に売却代金の一部を組み入れることができるという点で大きなメリットがあります。

破産財団とは破産管財人弁護士が破産者の資産の売却等をした際に一連の手続きの中で債権者への配当に回せるお金の管理を行う管理口座の名称のことです。

ここで問題になるのが、破産財団にいくら組み入れるのか、すなわち破産財団組入金の金額です。

破産実務に精通している破産管財人弁護士であれば、銀行などの担保権者の意図をよく理解してくれているために、破産財団への組入額について常識的な判断をしてもらえるます。

しかし時として売却代金の10%以上などという法外な高値を要求する破産管財人がついていることがあります。

担保権者もその金額に同意できるわけもなく、このことを理由に任意売却が暗礁に乗り上げるケースがあります。

破産管財物件の任意売却で破産管財人弁護士と交渉して破産財団組入金を下げることに成功した事例

破産管財人弁護士が10%の財団組入額を要求してきたケース

【事例の配分案】

  • 担保物件:破産者の自宅
  • 担保物件任意売却価格:3000万円[a]
  • 不動産鑑定時価評価:3500万円・競売想定価格2450万円
  • 諸費用
    破産財団:300万円[破産管財人弁護士が10%を要求]
    仲介手数料:100万円
    抹消登記費用:10万円
    引越費用:10万円
    不動産鑑定費用:10万円
    合計:430万円[b]
  • 配分可能金額:2570万円([a]-[b])
  • 担保権者配当
    第1順位 A信用保証
    根抵当権2500万円 配分額:2500万円
    第2順位 B銀行
    根抵当権1500万円 配分額:70万円

本件は競売が実施されると配当の見込みがほとんどないB銀行が、努力して任意売却に漕ぎ着けたものでした。

何とか回収額を極大化するために、懇意にしている不動産業者にお願いしてようやく買受先を探してきてもらったのです。

そのようなわけで、B銀行は努力をした分として300万円くらいは回収できるのではないかと考えていました。

そこで破産管財人弁護士のもとに任意売却の相談に行ったところ、破産財団に10%組み入れてもらわなければ任意売却には応じられないと言われてしまったのです。

破産財団に10%もの拠出をすれば、B銀行の回収額は配分案のとおり70万円になってしまいます。

これでは解除料とほとんど大差ないことになってしまいます。

その場はとりあえず引き下がりましたが、銀行に戻ってからこれまで任意売却の準備に費やした時間や手間のことに思いを巡らせると、釈然としない気持ちが次第に高まってきました。

回収額を極大化するために頑張った努力が報われない一方で、お膳立てがすべてできていて売主として売却のハンコを押すだけの破産管財人弁護士にどうして300万円も渡さなければならないのか・・・。

どうしても納得がいきませんでした。

現実には破産管財人弁護士が任意売却する物件の多くについて、売却価格を上回る担保権が設定されています。

普通に考えると担保不動産の所有者である破産管財人弁護士の手元には一銭も入りません。

しかし破産管財人弁護士の協力により任意売却が成功すれば、銀行も競売によるよりも多額の回収ができるため、破産財団に売却価額の一部を組み入れることを承諾しているのです。

破産財団への組入金の性質を素直に考えるなら、それは破産管財人弁護士への協力費でありハンコ代だということができるのです。
 

破産管財人弁護士との財団組入金の交渉を粘り強く行う

破産財団への組入金については明確な基準があるわけではありませんので、破産管財人弁護士との交渉によって決定されるということになります。

破産管財人弁護士との破産財団組入額の交渉ポイントとしては、

  1. 任意売却の経緯はどうか?
  2. 買受人を探す努力を誰が一番したのか?
  3. 破産管財人弁護士はどの程度任意売却の過程に関与したか?
  4. 破産管財人弁護士の事務手続きにどれくらいの負荷がかかったか?
  5. 売却代金は競売と比較してどれくらいアップしているか?

などが挙げられます。

本事例について見ると、

  • 任意売却に必要な準備についてはそのほとんどすべてがB銀行主導で行われていること
  • 破産管財人弁護士の手続きとしては裁判所の許可を取って売却に同意することだけであること

などを考慮すれば、破産管財人弁護士の破産財団組入金10%の要求には常識的に考えて無理があります。

B銀行は今回の任意売却の経緯をまとめて、再度破産管財人弁護士と交渉を行いました。

また、B銀行の顧問弁護士からも破産管財人弁護士にお願いをしました。

その結果、諸費用のうち抹消登記費用と不動産鑑定費用の部分を実質破産管財人が持つこととし、あわせて破産財団組入額は売買代金の3%で次の最終配分案にて決着がついたのです。

【最終配分案】

  • 担保物件任意売却価格:3000万円[a]
  • 不動産鑑定時価評価:3500万円・競売想定価格2450万円
  • 諸費用
    破産財団:90万円[3%]
    仲介手数料:100万円
    抹消登記費用:0万円[破産管財人弁護士が破産財団の中から拠出]
    引越費用:10万円
    不動産鑑定費用:0万円[破産管財人弁護士が破産財団の中から拠出]
    合計:200万円[b]
  • 配分可能金額:2800万円([a]-[b])
  • 担保権者配当
    第1順位 A信用保証
    根抵当権2500万円 配分額:2500万円
    第2順位 B銀行
    根抵当権1500万円 配分額:300万円

 

おわりに

このように破産財団組入金については、破産管財人弁護士と真摯に交渉し、お互いに納得して円滑な任意売却を目指したいところです。

余談ですが、担保不動産の任意売却に造詣の深い破産管財人弁護士なのかどうかを知るポイントを経験則からですが挙げることができます。

  • 大きな破産事件の破産管財人弁護士としての実績があるかどうか
    ⇒破産事件は経験がものをいう
  • 金融機関の顧問弁護士を務めた経験があるかどうか
    ⇒金融機関の実務、気持ちを考慮してもらえるか
  • 事務所の棚の書籍に破産関係が多いかどうか
    ⇒破産管財事件に関心があるかどうか
  • インターネットの弁護士紹介
    ⇒強みのある分野をうたっている場合が多い

また、その弁護士事務所に優秀な事務員がいるかどうかも大変重要な要素だと思います。

破産管財事件の事務は実際には事務員の努力によるところが大きいからです。

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