あなたの不動産投資事業において毎年作っている損益計算書を本当に節税に生かせているでしょうか?
個人であれ法人であれ、不動産投資の1年間の収支である損益計算書の基本を理解しておくことは大変有益です。
なぜなら、損益計算書には個人/法人の1年間の収入と支出の流れが表れ、
- 売上
- 経費
- 利益
の3つをきちんと押さえておかないと節税するポイントがずれてきてしまい目的としている効果が出ないからです。
この記事では、不動産投資の損益計算書(P/L)を節税に活かす不動産投資の目的に応じた3つのポイント【個人・法人別】をご紹介します。
不動産投資の損益計算書(P/L)を節税に活かすポイントその①:不動産投資事業の損益計算書(P/L)を理解する
不動産投資事業における損益計算書とは、
- 家賃収入がどれだけあり
- 家賃収入を得るために費用はいくらかかり
- 結果どれくらい儲けがあったか
といった収支の情報を記載したものです。
あなたの不動産投資事業の1年の成績表ともいえ今期(通常は1年)得た利益を示します。
簡単な式で表すと、
◎収益-費用=利益
が大前提となります。
不動産投資事業は、固定資産である不動産の仕入れを行った後は、その固定資産から収益をあげていくビジネスモデルであり、利益の出し方がシンプルな損益計算書となります。
不動産投資の損益計算書(P/L)を節税に活かすポイントその②:不動産投資事業の損益計算書の中身を知る
大事な項目を理解することで、不動産投資事業の損益計算書はそれほど難しくないことに気づくと思います。
損益計算書は収入からどれくらいの費用がかかり、その結果どれだけの儲けが出たかを表しています。
その利益の概念がやや難しく感じますが慣れれば大丈夫だと思います。
法人の損益計算書を基本としますが、個人の申告もほぼ同じ概念です。
個人の損益計算書の中身
- 収入金額・・・家賃収入、駐車場収入等(法人の売上高に相当)
- 必要経費・・・経費、支払利息(法人の販管費、営業外費用に相当)
- 差引金額・・・家賃収入から必要経費を引いた経常利益(法人の経常利益に相当)
- 専従者給与・・・家族への給与
- 青色申告特別控除
- 所得金額・・・税引前の利益(法人の税引前当期純利益に相当)
法人の損益計算書の中身
営業損益の部
- 売上高・・・家賃収入、駐車場収入等
- 売上原価・・・物品や製造ではないので基本はゼロ
- 売上総利益・・・不動産投資では売上高=家賃収入等と同じになります
- 販管費及び一般管理費・・・管理費や修繕などの経費
- 営業利益・・・家賃収入から経費を差し引いた利益(主たる営業活動の利益)
- 営業外収益・・・受取利息や保険金等
- 営業外費用・・・金融機関への支払利息等
- 経常利益・・・営業利益に営業外の損益をプラス
- 特別損益・・・物件の売買などで出た損益をプラス
- 税引前当期純利益・・・経常利益に特別損益をプラス
- 法人税等・・・法人税支払い
- 当期純利益・・・税引き後の純利益
個人と法人で勘定科目が異なりますが、概ね似た内容になっていると思います。
不動産投資の損益計算書(P/L)を節税に活かすポイントその③:損益計算書の個人と法人の項目の対応を理解する
個人の収入金額≒法人の売上高
基本は家賃収入となります。
- 駐車場収入
- アンテナ基地局収入
- 自販機収入
- 太陽光発電収入
なども含まれます。
個人の必要経費≒法人の販管費及び一般管理費、営業外費用
必要経費すべてとなります。
- 管理費
- 修繕費
- 広告費
- 通信費
- 交際費
など、不動産投資に間接的にかかる費用となります。
※法人では、銀行への支払利息を営業外費用に計上しますが、不動産投資上は営業内費用ととらえても差し支えないと思います。
法人の営業利益
不動産投資事業の主たる営業活動で得た利益を指します。
つまり、家賃収入から売り上げをあげるためにかかった費用を差し引いた利益のことです。
不動産投資事業の本業でどれだけの儲けが出たのかがここの数字でわかります。
初年度は物件の購入費用で赤字になる可能性はあるものの、2期目以降でマイナスになると致命的で会社としての与信が傷つきます。
もし減価償却の金額を外しても赤字の場合は、キャッシュフローがマイナスになっているため銀行への借入金の返済が厳しい状況になっているといえます。
個人の差引金額≒法人の経常利益
- 不動産投資の主たる営業活動で得た利益と
- それ以外に得た利益
をプラスした利益を指します。
法人では銀行への支払利息を営業外損益にしますが、個人の申告書では営業利益と経常利益を分けていません。
また、法人では役員報酬や人件費が『販管費および一般管理費』に含まれますが、個人の専従者給与は別勘定となっているところが相違点です。
- 法人は『経常利益』ベースが事業全体の利益を表しているので、最も重要です。銀行が最も注目する数字で、経常利益が黒字になる決算にしていきます。
- 個人は、『個人の差引金額』も重要ですが、『所得金額』がより重要となり銀行が見ます。
個人の所得金額≒法人の税引前当期純利益
法人では、物件の売買がない限り特別損失は発生しづらいので、概ね経常利益と税引前当期純利益が一緒になります。
個人では、専従者給与(法人での役員報酬もしくは人件費)と青色申告なら65万円の青色申告控除がありそれらを差し引いた金額が所得となります。
すなわち、個人の所得金額と法人の税引前当期純利益が不動産投資における事業全体の利益を表しています。
ここで大切になってくるのが、
- 不動産投資を拡大したい人は、所得金額、税引前当期純利益を黒字化します。法人は物件売却による特別損失がある場合は、理由を付しておくと銀行は経常利益側を重視して与信評価してくれることが多いです。
- 不動産投資でとにかく節税したい人は、必要経費≒販管費・一般管理費を積み上げることで利益をゼロ、もしくは赤字にしていくことになります。
不動産投資事業の目的によって真逆のことを行うことになるので、目的と違う損益計算書にしていかなければならないということです。
おわりに
- 損益計算書の売上、経費、利益の基本的な部分については、不動産投資を進めていくうえできちんと理解しておきたい。
- 上記がわからないと、節税するにもポイントがずれてきてしまい、当初想定していた効果が出ないことにつながる。
- 不動産投資を融資で拡大していきたい人は、個人なら所得金額、法人なら税引前当期純利益を黒字化させる。
- 不動産投資で節税のみをしていきたい人は、個人なら必要経費、法人なら販管費・一般管理費を積み上げて利益をゼロ、もしくは赤字にすることで目的が達成される。当然ながら、赤字決算では新たな融資は受けられない。