中古の収益物件の購入を検討するときに、現状で入居率の低い物件は購入しないほうがよいのでしょうか?
レントロールの表面的な数字だけをを漠然と見るのではなく、ポイントを絞ってレントロールを読むことが必要です。
具体的には、
- 賃料水準の妥当性の確認
- 入退去履歴のチェック
- 入居率が低い原因追究
の3点チェックを行うとよいでしょう。
現状のレントロールや物件の履歴や環境ををきちんと分析することで、期待利回り以上の利回りを得られる可能性もあればその逆もあり得ます。
現所有者の管理がずさんだったり、入居者募集や管理がきちんとできていないと入居率はなかなか上がらず、本来あるはずの収益力が埋もれている収益物件というのは、案外たくさんあるものです。
それを目利きすすことで将来的に大化けする可能性のある収益物件を発掘できるかもしれません。
現状の賃料を現在賃料に引き直す
収益物件の運用による不動産投資における収益とは賃料収入です。
賃料収入は毎月安定しているかわりに、営業努力で売上を大きく伸ばすこともできないため、いくらの家賃で入居者が入っているか、そして今後も入るかということが非常に重要になってきます。
収益物件の資料には必ず既存入居者の入居条件の一覧表が付いています。
この表をレントロールといいますが、収益物件の購入を検討する際には、このレントロールの妥当性を確認する必要があります。
レントロールの入居期間と賃料の関係をチェック
入居者の入居期間と賃料の関係をチェックします。長期間入居している入居者の賃料は、現在の賃料相場に比べて高くなっているはずです。
たとえば、10年前に賃料10万円で入居した人が退去になった場合、10年間で賃料相場が7万円まで下がっていると、次の入居者募集時には3万円もの賃料下落を考慮する必要が出てきます。
つまり、現在の賃料水準に引き直して検討する必要があるということです。
賃料収入の下落はすなわち物件価格の下落を意味します。
20%賃料が下がるということは、キャップレート(期待利回り)が同じなら20%物件価格が下がるということを意味します。
そのため、賃料が下がることに対しては、慎重に考慮しなければいけません。
また、法人契約で複数戸を長期間借り上げされているような物件も、借り上げが続く限りは優良物件ですが、一斉解約や家賃の引き下げを要求された場合などは、収益に対するダメージが大きくなります。それだけで物件価格も大きく変わってしまうことになります。
入退去履歴に変なのがないか確認する
物件購入前に入退去の履歴も必ず確認する必要があります。
直近数カ月の入居が不自然に多い場合は、入居率の偽装が行われているかもしれないと疑ってかかる必要が残念ながらあります。
収益物件を高値で売却するために、知り合いなどに高めの家賃で入居させて賃料収入を意図的に上げて、満室物件として高値で売り抜けるという手法もないこともないからです。
当然、このケースで利回りを偽装するためだけに入居していた人たちは、物件が売れてしまえば一斉に退去していきます。
その物件を購入した人は、空室が急に増えてキャッシュフローが厳しくなるだけではなく、賃料収入が下がってしまうので、初期段階でせっかく購入した収益物件価格が大きく下がってしまうということになってしまいます。
レントロール上での悪質な入居率偽装事例
購入した物件の売主が意図的に知り合いを高めの家賃で入居させていて、購入後ほどなく約半数の部屋で退去が発生して困ってしまったというケースがあります。
空室を埋めることはできますが、もともとの賃料から20%以上下げなければならず、物件の価格が購入直後にもかかわらず大幅に下落してしまいました。
購入を検討している収益物件の利回りが高い場合、
- 家賃が相場より高いから利回りが良い
- 物件価格が安いから利回りが良い
のどちらかを判別して、前者の場合は、賃貸借契約書を全て確認して、ある程度の期間をさかのぼって入退去履歴を確認し、不自然な契約があれば購入を見送ることも必要となります。
地元の賃貸仲介不動産会社へのヒアリング
レントロールの妥当性や近隣の家賃相場を確認するには、地元の賃貸仲介会社に直接ヒアリングすることが確実です。
地元の賃貸仲介会社や管理会社は、
- 地元の物件の家賃相場
- 入居者層の傾向
- 入居づけのしやすさ
などの情報をしっかりつかんでいます。
特に過去にその物件に直接客付けをした経験のある賃貸仲介会社の担当者から話を聞くことができればベストだといえます。
そして、地元の賃貸仲介会社や管理会社は、その物件を購入後は長いお付き合いになる可能性もあります。
ヒアリングは電話だけで済ませるのではなく、直接訪問してみてどんな不動産会社なのかも確認しておくとよいでしょう。
なぜ入居率が低いのか原因の追求
収益物件の取得時において、入居率にも注意を払うべきです。
現在の入居率が低いのであれば、その原因を追究して知っておく必要があります。
たとえば、現在の売主が資金的な面で原状回復をする余裕がなく、新規の募集ができていないというのが原因であれば、物件取得後のリフォーム工事をきちんと行うことで改善の余地は十分にあります。
しかし問題になってくるのは、
- そもそも不人気な立地でその一帯の入居率が低い
- 迷惑入居者がいて他の入居者が退去してしまう
- 物件で殺人事件や自殺が起きて告知事項がある
などの事情が原因の場合は、簡単には入居率を改善できない可能性が高いです。
また、現在の管理会社の能力不足のために入居率が下がっているようなら、管理会社を変更することで解決します。
つまり、入居率を見る上で大切なのは、物件取得後に入居率を改善できるのかどうかという点で、そこが判断の分かれ目になります。
その判断のために入居率が低い原因を追究して特定する必要があるのです。
おわりに
大化けする可能性のある収益物件は、現状ではパフォーマンスを発揮できていませんが、きちんと運営すれば見違えるポテンシャルを持った収益物件だといえます。
現所有者の管理がずさんだったり、入居者募集や管理がきちんとできていないと入居率はなかなか上がらず、本来あるはずの収益力が埋もれている収益物件というのは、案外たくさんあるものです。
そのようなくすぶっている収益物件は物件価格も比較的抑えられている可能性が高いので掘り出し物になる可能性を秘めているのです。
大化けする可能性のある収益物件を見極められる目利き力を養っていきたいものです。