一棟収益の不動産投資効率を考えた場合に、
- 一棟収益を購入したあとはローン完済までずっと保有するのが良いのか?
- ローン返済途中での一棟収益の売却を視野に入れる方が良いのか?
どちらのほうが投資効率がいいのでしょうか?
結論から申し上げると、一棟収益を購入する際の投資シミュレーションに出口戦略(売却計画)を盛り込むことが重要であるといえます。
それは、
- なるべく早く前倒しでローンの残債を減らして早く一棟収益を自分のものにする
- 急がずゆっくり返済を続けながら一棟収益の売却による収益確定を目指し、その都度手元現金を増やしていく
前者よりも後者のほうが、一棟収益の不動産投資規模の拡大においてより資産を増やすことができる投資効率の高い不動産投資戦略といえるからです。
この記事では、不動産投資でローンの繰り上げ返済をするとなぜ損なのか?繰り上げ返済が投資効率を悪くする2つの理由をご紹介します。
ローンの繰り上げ返済が不動産投資の効率を悪くする理由①:一棟収益のローンの完済を目指すのは投資効率が悪い
『ローン途中で売却してしまったら、賃料収入が入ってこなくなるから売らない』
と考えている人は、より条件の良い再投資の機会を逃してしまっている可能性があります。
多くの人は
『一棟収益のローン完済まではがんばって返済を続けて、ローンの返済が終われば一棟収益は自分のものになり、キャッシュフローもたくさん出る』
とシミュレーションしていると思います。
それは何十年も先のことでにはなりますが、まったく悪い想定というわけではありませんが、いかんせん時間がかかりすぎます。
それまでずっと返済返済の日々になってしまうからです。
しかし、収益物件を買ってから数年で、
- 買った時の値段よりも高い値段でその物件を買いたい
- 買った時と変わらない値段でその物件を買いたい
という人が現れる確率が結構高いのが一棟収益物件投資の醍醐味でもあります。
- 前者は家賃収入+売却益が利益となる
- 後者でも家賃収入が丸々利益となる
厳密にいえば、買ったときと同じ値段で買ってもらえる後者でさえ、保有期間中にローンの残債は減っているので、ローンを完済した後の手残りはそこそこ残ることになります。
だからこそ、売る売らないは別にして、保有している一棟収益物件の売却をいつでもできるように、事業計画において出口戦略(売却計画)を盛り込んでおくべきなのです。
事業計画に出口戦略を盛り込んでおくことで、
- 収益物件を数年保有したあとに事業計画で想定した価格で売却するという出口戦略をとる
- その売却益により増えた資金を元手に再投資をすることにより投資規模を拡大させていく
- 投資規模を拡大することで投資が安定し利益率が上がって投資効率も上がる
という好循環を生み出します。
必ずしも買った時よりも高い値段で売る必要はないというところがミソです。
また、事業計画上ではキャッシュフローが出る収益物件でも日々の賃料収入は生活費や修繕費、そして返済や税金を支払うと、ほとんど手元に残らず、手元資金がドカンと増加することはまずありません。
賃料収入が増えると自然と生活費や贅沢費も増えるという原因もあります。
日々儲かった分だけ意外と使ってしまっているのです。
そのため、現実的には手元資金を増やす唯一のタイミングが売却による収益確定のときだけというのが一般的でもあります。
それが一棟収益物件投資の事業計画において売却するしないは別として出口戦略を盛り込んでおくことが重要である理由です。
ローンの繰り上げ返済が不動産投資の効率を悪くする理由②:一棟収益のローンの繰り上げ返済は手元現金を減らすので投資効率が悪い
現在の金利水準であればローンの繰り上げ返済を急いでする必要はありません。
なぜ一棟収益物件を購入するときには少しでも多くのローンを組みたいと考えるのにローンを借りたあとは早く返したくなってしまうのでしょうか?
せっかく厳しい銀行の審査を通過して多額のローンを組むことに成功したのに非常にもったいないことです。
『繰り上げ返済すればキャッシュフローが増えるというメリットがあるじゃないか』
とおっしゃる人もいると思いますが、自己資金を多く入れることや繰り上げ返済をしたことによって生まれるキャッシュフローは、自己資金や繰り上げ返済した現金があとから戻ってきているだけと考えたほうが理にかなっています。
現金はもっと有効に使うことができます。
今はゼロ金利政策の恩恵にあずかって世界的に見ても歴史的に見ても低い金利でローンが組めています。
高くて安定した賃料収入とこの低金利の差を利益にするのが少ない自己資金で多くの利益が得られる仕組みです。
ここで自己資金を追加投入することは資金の運用効率を悪化させることになってしまいます。
特に不動産に再投資して金融機関にローンを申し込む際には繰り上げ返済してローン残高が減っていることよりも手元現金が豊富であることのほうが属性評価は圧倒的に高くなります。
手元に現金があれば、
- 急な修繕にも対応できる
- 個人的な支出にも対応できる
- 細かなキャッシュフローを気にしすぎる必要もなくなる
- 現金買いの人限定の収益物件の情報も新たに入りやすくなる
などのメリットがあります。
手元に多額の現金を置いておくことができれば金利の急上昇など想定と違う方向に進んでしまいレバレッジ比率を下げて安全運転したいと思ったタイミングではじめて繰り上げ返済すればいいのです。
個人投資家が安心してローン借入できるのは物件価格が下落してもロスカットされず、財務状況が悪くなった場合は全額返済しなくてはならないという約束が無いためであり、個人投資家は一般企業の自己資本に対する考え方よりも大胆なレバレッジを効かせてもリスクは少ないといえます。
おわりに
- 不動産投資の事業計画には売却による出口戦略を盛り込んでおく。事業計画に出口戦略を盛り込むことで、売却時の価格やタイミングを自身でコントロールすることができる。
- 常に保有している物件を売却できる体制をつくっておく。売却して収益を確定させて自己資金を増やし、再投資して投資規模を拡大させて収入の絶対額を増やす出口戦略をとることができる。
- 賃料収入はランニングコストや贅沢費で使ってしまい、実のところ手元現金は爆発的にはなかなか増えない。大きく手元現金を増やせるタイミングは売却のとき。出口戦略を収益計画に盛り込むべき。
- せっかく低金利で借りたローンを繰り上げ返済するのはもったいない。ローン返済には不可逆性があり、一度返済したものは取り戻せない。手元に現金を置いておけば、好きな時に返済ができる。不動産の買い増しをする際にも、返済が進んでいるよりも手元現金が潤沢であるほうが銀行の審査では有利に働く。