不動産などの資産を持ったままの人が破産申し立てをすると裁判所から破産管財人が指定されて破産管財事件として処理されます。
そうすると裁判所から選任された破産管財人弁護士が担保不動産の処分権限を持つことになります。
ではその破産管財人弁護士は不動産の任意売却にあたってはどのようなやりとりを裁判所と行っているのでしょうか?
破産管財人弁護士は『破産者〇〇 破産管財人弁護士△△』という形で所有者である売主に代わって全ての資産の処分や換価を行うことになります。
その結果破産者の不動産に関してはできるだけ多く回収して債権者への配当に回す必要があるので破産管財人が売主となって任意売却で売却することになるのです。
そして破産管財人弁護士が不動産の任意売却を行うことで破産財団にも配当を組入れることができるので破産手続きの経費や弁護士費用、その他債権者への配当に回すことができるので競売で処理するよりも破産処理には有利になるということなのです。
破産管財人弁護士は不動産の任意売却を行うにあたっては破産法の規定に基づいて、さまざまな事柄について裁判所に報告したり書面を提出しなければなりません。
ここではこれまで多くの破産管財人との取引で教えてもらった破産管財人が不動産の任意売却をする際の手続き内容をご紹介します。
破産管財人とは?破産管財人弁護士が不動産の任意売却の際に行っている手続きとは?
破産管財人弁護士が不動産の任意売却を行う際に裁判所に報告をしたり書面を提出するにあたっては、適切な情報を得ることが大切であり債権者の協力も必要になってくる場合もあります。
しかし破産管財人弁護士と債権者は敵対する立場であって利益も相反するので協力を難しくしている側面があります。
また、担保不動産の任意売却を行い買受人との交渉が成立すると、破産管財人弁護士は裁判所に不動産売却許可申請を行います。
裁判所の売却許可が得られなければ不動産を引き渡すことができないからです。
裁判所に提出する不動産売却許可申請書の具体例を以下にご紹介します。
破産管財人弁護士が任意売却の際に裁判所に提出する不動産売却許可申請書の記載例
- 事件番号 平成 年 [フ] 第 号
- 破産者 ◯◯ ◯◯
- 宛先 ◯◯地方裁判所 民事部 破産係 御中
- 弁護士 破産管財人 弁護士 ◯◯ ◯◯ 押印
1.許可を求める事項
- 下記不動産を下記買主に下記代金に売却し、所有権移転登記手続きを行うこと
目的物 別紙物件目録記載の不動産
代金 金50,000,000円
買主 住所
氏名 - 下記別除権者に下記金額を支払い別除権を受け戻すこと
◯◯銀行 金30,000,000円
◯◯県信用保証組合 金16,812,000円
2.許可を求める理由
- ◎別添資料から相当な価額での売却である。
◎下記事情から相当な価額での売却である。
本物件については数社から買取の希望がなされたが、本件買主がその中で最も高額の希望者である。
本物件の固定資産税評価額は35,000,000円であることからしても、通常の取引価格に相当する売却である。
また、本件では売買代金の3%が破産財団に組み入れられることからしても、破産財団にとっても有利な売買であると思料する
なお、決済日は平成 年 月 日を予定している。 - 別除権者と被担保債権額
①◯◯銀行 金30,000,000円
②◯◯県信用保証協会 金30,000,000円 - 売買代金の使途
①別除権の受戻費用 金46,812,000円
②抹消登記費用等 金50,000円
③仲介手数料 金1,638,000円
④財団組入額 金1,500,000円
財団組入とは破産管財人弁護士が行う任意売却では必ず必要な控除分となり概ね物件価格の5%前後の金額を配当することが多いです。
破産法により財団に組み入れて債権者に配当するという目的のもとに不動産を任意売却するという大義名分があるからです。
3.添付資料
- 不動産登記簿謄本[写]
- 不動産売買契約書[案]
- 買受申込書
上記申請の通り許可されたことを証明する。
平成 年 月 日
◯◯地方裁判所民事部
裁判所書記官 ◯◯ ◯◯
おわりに
今までの管財人弁護士との取引で見せてもらった資料によると概ね上記のような感じです。
破産管財人は裁判所から不動産売却許可を受けるためにきちんとした文書を提出する必要があることが分かります。
なお破産管財人弁護士は裁判所から選任されて決まるので弁護士なら誰でもできるというわけではありません。
また初めて破産管財人に選任された弁護士が担当している場合は手続き自体に不慣れなので、通常の手慣れた破産管財人弁護士より時間がかかることが多いのが現実です。
今までも何度もそういったことがありました。
その場合は時間軸にある程度の余裕を持って任意売却を進めていく配慮が必要です。
これは仕方ありません。
ベテランの破産管財人弁護士に聞いても最初はみんなそうだとおっしゃっていました。