不動産投資での節税対策と自分が目指したい不動産投資の方向性をリンクさせてしかるべき節税対策を行っているでしょうか?
不動産投資における節税対策で取り得る税務戦略は主に下記の3通りとなります。
- 拡大を最重視していく
- 成長を止めて節税に専念する
- 拡大と節税のバランスをとる
どれが良いとか悪いとかではありません。
それぞれの不動産投資の方針と節税戦略が合致していれば問題ないです。
不動産投資を行う以上は、方向性として収益の拡大も節税も両方実現する節税対策を目指したい人は多いです。。
収益の拡大を目指すための節税対策と収益の拡大を止めて節税に専念する節税対策の戦略の違いを理解することで、両方のバランスをとって節税する節税対策を行うことができるようになります。
なぜなら、収益の拡大を目的とする場合と節税を目的とする場合では決算書を作成するうえで180度その方向性が異なるからです。
この記事では、不動産投資の節税3つの方向性別【①拡大②節税③拡大&節税】の節税対策と税務戦略それぞれの重要ポイントをご紹介します。
不動産投資の節税戦略その①:拡大ステージ⇒不動産投資の拡大に専念する際の節税対策と税務戦略
とにかく不動産投資を拡大していく段階では銀行融資を使うことが主眼におかれます。
そのためには銀行にとって良い決算を行う必要があります。
銀行にとって良い決算書とは、
- 損益計算書(P/L)が黒字
- 貸借対照表(B/S)の純資産がプラス
となっているものを指します。
不動産投資初期にこのような拡大の方向性を取るケースが多いのですが、拡大メインの方向性の場合は節税対策はあまり行わない方がよいと言えます。
不動産投資の拡大ステージでは損益計算書(P/L)が黒字
銀行にとって良好な決算とは、絶対条件として損益計算書(P/L)上の黒字が必要となります。
例外として初年度決算だけは不動産取得税等の負担が重いので赤字を許容してもらえますが、2期目以降は1円でもいいので黒字にする必要があります。
銀行融資を使っての不動産投資の拡大を行っていきたいのであれば赤字決算は何が何でも阻止する必要があります。
また、個人の場合は不動産所得を黒字にします。
つまり銀行融資が受けられるレベルの黒字化を目指すことが不動産投資の拡大ステージにおける税務戦略上の最優先事項となります。
2期目以降は例えば経費を多く計上するのではなく資本的支出に振り替えたり、役員報酬を削るなどの節税対策の調整をしながら赤字を回避し黒字にしていくことが最低条件となります。
損益計算書を赤字にするのが一番の節税対策になるのですが、それでは不動産投資を融資を受けて拡大することが出来なくなるからです。
不動産投資の拡大ステージでは貸借対照表(B/S)の純資産がプラス
決算の貸借対照表(B/S)の純資産が黒字ではなく、銀行の担保評価の計算上純資産がプラスになっているかが重要となります。
個人の白色申告、青色申告でも確実に貸借対照表(B/S)を把握し、銀行評価上で純資産がプラスになっているか確認します。
銀行の評価の目安は積算評価で算出した数字を使います。
積算評価で再評価しても貸借対照表の純資産がプラスになる必要があります。
銀行によっては、この積算評価に掛目(8割や7割)を入れるケースもあります。
積算評価:土地面積×路線価+建物面積×(法定耐用年数-経過年数)/法定耐用年数
貸借対照表の純資産がプラスにならない資産を保有している場合は資産を売却して組み換えていくなどの対策をとる必要が出てきます。
不動産投資の拡大ステージでは資産管理法人から不動産投資家への貸付金をなくす
法人の場合で注意が必要なのですが、不動産の資産管理法人を所有していて同族企業で代表や取締役が家族だけなので法人と個人のお金を区別していないことがよくあります。
法人から不動産投資家への貸付があると、
- 資産管理法人のお金に手を付けている
- オーナーがお金にルーズ
- 資産管理法人と個人の区別のできない不動産投資家
というレッテルを銀行から貼られる可能性が高くなります。
銀行は法人を審査するときに、資産管理法人から不動産投資家への貸付があるとマイナスの評価をします。
不動産投資家への貸付を不良債権の区分に落とす銀行もあり法人の与信を傷つけてしまいます。
つまり資産管理法人から不動産投資家への貸付については早期に返済するプランを検討しなくてはならないということです。
不動産投資の節税戦略その②:節税ステージ⇒不動産投資の拡大を止めて節税対策に専念する税務戦略
不動産投資の拡大を止めて節税に専念する場合には、とにかく『経費』を積み上げることが主眼におかれます。
今後において銀行の融資を受けない覚悟があるのであれば赤字決算でもかまわないということになります。
積み上げる経費の候補としては、
- 役員報酬を上げていく
- 社有車を購入する
- 法人保険を使い経費を役員へ還流させる
など多くの手段があります。
税理士と話し合いながらぎりぎりの水準まで経費を積み上げ損益計算書(P/L)で黒字にならないようにします。
こうなると銀行から見る与信評価は悪化しますので、決算書の内容を良くするまでは融資を受けることができなくなります。
不動産投資の税務戦略のその③:不動産投資の拡大と節税対策のバランスよく進めていく税務戦略(難易度高)
銀行の評価を下げずになおかつ節税もしていきたい場合には、かなりの工夫が必要となり難易度が高い調整が必要となります。
融資を受けていく段階のため拡大時と同じように
- 損益計算書(P/L)は黒字にする
- 貸借対照表(B/S)の純資産もプラスを積み上げる
ことになります。
どれくらいの水準まで節税して利益を出せばいいのかがポイントとなります。
ケースバイケースで一概には言えないのですが『債務償還年数』を参考にすると、概ね銀行の評価上問題なく融資を受けることができます。
◎債務償還年数=(有利子負債-現金)/(税引後利益+減価償却-税金)
この基準は簡単にいうと『銀行借入を何年分の手残り現金で返せるか』ということになります。
計算式の中の減価償却がポイントであり、減価償却を増やしていけば税引後利益が低くても減価償却が大きくなるので債務償還年数が増えずに良い水準に保つことができる可能性が高くなります。
つまり、物件を購入し続けることが規模を拡大しながら節税もできるということにつながります。
あえて建物比率の高い物件を継続して取得することで、税引後利益を圧縮しながら銀行の評価を維持するという対策も可能になります。
おわりに
- 自分が目指したい不動産投資の方向性にあった節税対策はどのような税務戦略であるかを明確にすることが先決。
- 拡大ステージでは、物件購入時の経費が重いため黒字化を目指していけばよい。
- 節税ステージであれば物件を購入しなくなっていくので経費を単純に積み上げていけばよい。
- 拡大も節税対策もバランスよく行うためには、銀行の基準である債務償還年数の考え方と税務知識を身につけてバランスの良い節税対策をとっていく。