不動産投資の銀行融資審査でなぜ銀行は収益物件の耐用年数にこだわるのでしょうか?
実質まだまだ貸して賃料を取ることができる収益物件でも、
- 木造なら22年
- 鉄骨なら34年
- RCなら47年
で耐用年数オーバーとなってしまいます。
日本政策金融公庫などは別ですが、事業性を見ると言いながら築古の収益物件だと融資が付きにくくなってしまいます。
銀行が不動産投資の融資審査時に収益物件の耐用年数を重視しているのはまぎれもない事実です。
これは認めるしかありません。
そのうえで融資申込者の立場としてどうするかを考えることが重要です。
銀行規定の耐用年数と一般的な法定耐用年数は違う
不動産投資の融資に対する銀行の融資期間のスタンスとして、
◎耐用年数-築年数=融資期間
という大前提があります。
ここで誤解してはいけないのは、
- 法定耐用年数(経済的耐用年数・会計上の耐用年数)
- 銀行が融資規定で定めている耐用年数
の両者は期間も考え方も異なるという点です。
例えば、木造であれば一般には耐用年数は22年と言われますが銀行では場合によっては20年とするケースもあります。
また、RCに関しても一般的には耐用年数47年なのですが銀行によっては35年~40年で設定しているところもあります。
上記のように、銀行と一般的な法定耐用年数には年数の違いが存在することを認識しておく必要があります。
つまり
◎銀行既定の耐用年数≠法定耐用年数
だということです。
なぜ銀行は収益物件購入時の融資審査で耐用年数にこだわるのか?
銀行は収益物件への融資稟議を作成するときに、
◎銀行既定の耐用年数-築年数=残存耐用年数
から融資期間のベースを検討することになります。
銀行的には、物件(担保物件)を評価する場合、耐用年数が切れてしまった物件の銀行評価額は基本的にはゼロ評価です。
評価ゼロでもそれで担保解除することはありませんが評価はゼロとなります。
その理由として、物件(担保物件)の評価額がゼロということは、
- いずれ建物の建て替えが発生する
- 大規模修繕が発生する
と銀行は考えるからです。
そして、建て替えや大規模修繕が発生するということは、
- 建て替え資金
- 大規模修繕資金
が当然ながら必要になります。
その資金を自己資金で賄えない場合は銀行借入が必要になります。
その資金はメインバンクから調達することがセオリーとなっています。
もし、建て替え資金や大規模修繕資金の需要が発生した場合は、アパートローンの残債がありその銀行の抵当権が設定してあるとしたら、他行からの資金調達はほぼ不可能です。
第一順位の抵当権が邪魔になるからです。
なので、収益物件購入時に融資をした銀行から資金調達をするしかないという状況になるのです。
つまり、銀行が融資をするということは、その銀行には貸出先に対して将来も含めて支援を継続する貸手責任があるということです。
アパートローンを貸出しておいてその後の建替えやリフォームの資金の支援はできませんとは言えないのです。
なので銀行は、耐用年数が切れる前、すなわち物件評価額がゼロ評価になる前に既存の借り入れは完済しているようにしたいと考えて融資期間を設定することがセオリーになります。
そして、建て替えや大規模修繕などの資金需要が発生した時に改めて融資取引を継続するのかどうかを検討する余地を確保したいのです。
ここで残債が残っていれば、検討の余地はなく、建て替えや大規模修繕などの資金需要にメインバンクとして応える必要が出てくるからです。
◎銀行の貸手責任=銀行耐用年数≧融資期間
これが銀行がこだわる耐用年数から導かれる融資期間の本当の意味だといえます。
おわりに
- 銀行が規定する耐用年数と法定耐用年数は異なることがある。法定耐用年数ではなく、銀行が独自に定める耐用年数をもとに融資期間がはじき出されることが多いので注意が必要。
- 耐用年数が経過した収益物件の銀行の担保評価はゼロ評価となることが多い。そこまでに貸し出した分はいったん完済できるように融資期間を検討することになる。そして、その後の大規模修繕や建て替えなどの資金需要に対してフラットな形で再検討する余地を残すことが銀行の考え方だといえる。
- 銀行がこだわる耐用年数から導かれる融資期間の本当の意味は、銀行の貸手責任=銀行耐用年数≧融資期間に集約される。