不動産投資において収益物件の運用を始めると、2棟目、3棟目の収益物件を取得して、不動産投資の規模を拡大していきたいと考える不動産投資家は多いです。
では、実際に不動産投資の規模をスムーズに拡大していくために、1棟目を取得するときの借り入れ条件などでは何を注意すればよいのでしょうか?
ひとつの答えとして1棟目の収益物件の取得の際はとにかくキャッシュフローが回る長期の借り入れをするべきだということがいえます。
この記事では、複数棟の収益物件を取得するための資金調達の考え方をご紹介します。
不動産投資で1棟目購入時の借入でキャッシュフローが回ることの重要性
不動産投資において収益物件の運用は1棟取得して終わりというものではありません。
1棟だけでなく複数棟を取得して規模を拡大していくことで事業としての不動産投資における収益の最大化を目指すことがひとつの目的となります。
そのためには、複数棟の収益物件を取得するための資金調達の考え方が必要になってきます。
2棟目、3棟目をスムーズに取得できる資金調達ができなければ、効果的な収益物件の運用が行えず、資産を形成して守っていくことができなくなります。
収益物件の借入において最も大切なのがキャッシュフローの考え方です。
キャッシュフローの回らない借り入れ方をすると、2棟目、3棟目の借り入れができなくなってしまいます。
実際に、既存物件(1棟目)のキャッシュフローが回らないという理由で、他の金融機関から2棟目の融資を受けられなかった例は多くあります。
1棟目を取得する際に実際に起こりうるケース
1棟目の収益物件を取得するにあたって借り入れを行う場合に、金融機関は物件のキャッシュフローを見ますが、同時に本業の収入も見ます。
そして物件のキャッシュフローでは返済が厳しいとわかっていても、本業の収入をあてにした返済年数を設定してしまうことがあります。
つまり、賃料収入以外にも給与があるから貸出期間を10年や15年に短く設定してしまうのです。
そして、その金融機関はそれ以上の2棟目、3棟目の追加の貸出をするつもりがない場合が多いです。
1棟目をうまく取得できないと他の金融機関でも2棟目の借り入れができなくなる
上記のような状態で借り入れをしてしまった人が、2棟目の物件を取得するために他の金融機関にあたるとどうなるでしょうか?
金融機関は既存物件を調査して、キャッシュフローがマイナスの物件を抱えていると判断することになります。
既存物件のキャッシュフローがマイナスであれば、その既存物件の返済ができないために競売にかけられ、新規で融資をしても自行が融資した新規の案件に影響が及ぶ可能性を嫌うのです。
つまり、キャッシュフローがマイナスの既存物件を抱えている人に対しては、それが他の金融機関だとしても、融資をすることができなくなってしまうということです。
なので、特に1棟目の借り入れにおいては、とにかく物件単体でキャッシュフローが回る条件を設定する必要があります。でないと後が続かないからです。
これには具体的には借り入れの年数が最も大きな影響を与えることになります。
元利金の借り入れ総額は、
- 返済年数
- 金利
で決まります。
金利はそれほど大きな差はありませんが、年数は10年~30年と大きく変わることになります。
また、金利は後から交渉次第で下げることもできますが、借入年数を減らすことはできても、後から延ばすことはできません。
なので、複数棟の取得を借り入れで行うためには、とにかくできるだけ長く借入年数を設定することが、何よりも大切だといえます。
不動産投資で複数棟の収益物件でポートフォリオを構築するための3つのポイント
不動産投資において複数棟を取得することが重要なのは分かりますがどのように複数棟を取得していくのがよいのでしょうか?
収益物件を複数棟取得することを前提とした資産のポートフォリオを構築することが目的となります。
実際に金融資産においても分散投資という考え方は一般的です。
ひとつの銘柄にすべてを投資するのではなく、バランスを考えて投資を行っていく手法です。
収益物件の運用においてもその考え方はまったく同じです。その根底にあるのはリスクの管理であり、リスクの分散です。
この記事では、複数棟の収益物件でポートフォリオを構築するための3つのポイントをご紹介します。
不動産投資には努力しても避けきれないリスクがあるという考え方
不動産投資にはいくら経営努力しても回避しきれないリスクが存在します。
例えば、
- 災害
- 事件
- 事故
などのリスクがそれにあたります。
これらの回避しきれないリスクが絶対にある以上、収益物件を複数棟取得してリスク回避の対応をしなければ投資の危険度が上がってしまうことになります。
収益物件を複数棟取得することで、万が一その中の一つに事件があったとしても、他の収益物件の賃料収入で補うことができるのです。
1棟で10億円の収益物件を取得するよりも、3億3000万円ずつを3棟に分けて取得するほうがリスクが低くなるということです。
不動産投資での収益物件のポートフォリオ構築3つのポイント
収益物件のポートフォリオを構築するにあたっては、
- 築年数
- エリア
- 物件種別
の3項目に焦点をあててリスク分散を行います。
不動産投資でのポートフォリオ構築におけるポイント①:築年数によるポートフォリオ
築年数による分散投資を行えば、その後発生するであろう修繕のリスクに備えることができます。
例えば、古い収益物件ばかり所有していては、突発的な修繕が同時に発生した場合に想定外の巨額な費用がかかってしまい、キャッシュが回らなくなってしまう危険性があります。
場合によっては収益物件の運営そのものができなくなってしまうようなこともあります。
高利回りを期待できるのが古い物件のメリットなのですが、修繕が同時期に集中してしまうリスクをカバーするために、比較的築浅の物件とあわせてバランスよく所有することが大切になります。
不動産投資でのポートフォリオ構築におけるポイント②:エリアによるポートフォリオ
ひとつのエリアに集中して収益物件を所有していると、
- 地震などの災害
- エリアが依存する大規模工事や大学などの大型施設の撤退や閉校
などのリスクをすべての物件で背負ってしまうことになります。
例えば、そのエリアの雇用を支えている大規模工場が撤退した場合、そのエリア内に所有するすべての収益物件の空室率が高まってしまう危険性があります。
その一方で、本当に良いエリアであれば、よりメリットを享受するために集中投資する戦略も取り得ますので、判断はケースバイケースとなります。
不動産投資でのポートフォリオ構築におけるポイント③:物件種別によるポートフォリオ
物件種別を分散させることによるリスクの分散も考える必要があります。
事務所や店舗などの事業用テナント物件だけをたくさん所有するのは一般的にはハイリスクです。
安定的な収益源として、マンションやアパートなどの居住系の収益物件を組み合わせる必要があるといえます。
おわりに
なにも考えずに1棟目を借り入れで購入すると、2棟目の借り入れで思わぬ苦労をしてしまうことがあります。
具体的には、1棟目の借り入れでキャッシュフローの回らない物件を取得してしまうと、他の金融機関であっても2棟目の借り入れを行うことができなくなってしまうということです。
それを防ぐために有効なのは、まずは1棟目の借り入れで十分キャッシュフローが回る条件で収益物件を取得することです。
具体的には、借り入れの金利よりも、返済年数をできるだけ長期に延ばすほうが、物件単体でキャッシュフローが回りやすくなるので、借入年数を長く取ることに重点をおいて借り入れを検討するべきだといえます。
収益物件のポートフォリオを構築するための3つのポイントは、
- 築年数
- エリア
- 物件種別
の3項目に焦点をあててリスク分散を行うことです。
起こりうるリスクを想定して、そのリスクがまとめて起こらないようにリスク分散を行うことは、不動産だけに限らず投資全般においても重要な考え方です。