不動産投資で収益物件を購入する際に、できるだけ自己資金の割合を減らし、フルローンやオーバーローンで融資を引きたいと考える人は多いと思います。
今はなかなかフルローンやオーバーローンは出ないといわれていますが、現実にフルローンやオーバーローンの融資を行っている金融機関もあるのですが、ではいったいどうすれば物件価格以上の融資を引くことができるのでしょうか?
フルローンやオーバーローンの融資を引くことができる条件として、
◎物件の担保評価額+借主の信用貸出枠が物件価格を上回っている
ということが挙げられます。
そして少しでもフルローンに近づけて引くためには、銀行の審査の仕組みを理解することが重要です。
物件の担保評価と融資の関係
フルローンやオーバーローンの融資を引ける物件は積算評価の高い物件だと考えている人が多いです。
たしかに、固定資産税評価額が売値より高い物件であれば、担保評価が高くなりフルローンが引きやすくなるのは事実です。
なぜなら、万が一借主が返済不能になった場合に金融機関は担保不動産を競売などで処分して資金を回収することになりますが、担保評価が高いほど金融機関はより多くの資金回収ができる可能性が高まるからです。
しかし、物件は必ずしも積算価格だけで評価されるのではありません。
金融機関それぞれに評価の基準を持っていますが、収益還元法で評価する銀行もあれば、積算評価を重視する銀行、その両方を見て判断する銀行などさまざまです。
そして、出された評価額に応じて担保評価の額が算出されます。
借主の信用での貸し出し枠がある
金融機関は担保評価の金額の範囲でしか融資をしないということではないのです。
金融機関の担保評価では、一般的に掛け目が入り、一般的には売買価格(市場価格)を上回ることはほとんどなく、売買価格の60~70%で評価されます。
しかし金融機関は物件の担保評価だけではなく、借主の属性に重きを置いて融資をします。
どちらかといえばこの属性のほうが重要だということです。
そして、物件の担保評価を超える範囲の融資は信用での貸し出しとなります。
これが担保をとれていない部分の貸出枠ということになります。
特にプロパーローンの融資を行っている地方銀行や信用金庫はこの信用での貸し出しに柔軟で、フルローンやオーバーローンの融資が出るのはこのプロパーローンでの融資になります。
アパートローンの場合の融資は、どんなに属性がよくても融資割合がパッケージとして決まってしまうので難しいのです。
例えば、1億円の物件を1億円の融資を受けて取得する場合、金融機関の担保評価が7000万円だとすれば、その差額である3000万円は借主の信用での貸し出しということになります。
この信用での貸し出しをどれだけできるのかというのは、その借主個人の属性によって変わるのです。
どこまで信用で貸し出しをするのかは、個人の属性に応じて金融機関ごとの判断になります。
借主の個人の属性によって融資可能な金額を設定するということです。
属性とは個人の場合は年数や保有資産、個人事業主や法人の場合は主に経営している本業の経営状況によります。
具体的には売上や利益や内部留保などが挙げられます。
極端な話をすれば、属性が良ければどんな物件でもフルローンやオーバーローンが出るというのが現実です。
ただし、原則は、
- 借主の属性
- 物件の担保評価
の掛け合わせで融資が行われるので、金融機関にとっては担保評価の高い物件のほうが貸し出ししやすいというのは事実です。
また、金融機関は、自社での貸出額と、借主が受けている他の金融機関も含めた全体の借入総額という二つの視点で見ています。
まず自社の貸し出しですが、一人の相手先に対して総額いくらまで、信用額でいくらまでという基準を持っています。
自社では貸し出しを行っていなくてもすでに他の金融機関からの借入が多く、これ以上の借入はできないという判断をされる場合もあります。
これは全体での借入が限度にきているという状況です。それ以上の融資を受けるには、属性をさらに上げるか、資産の整理をして借入枠を空ける必要があるということになります。
フルローン・オーバーローンのポイント①:フルローンは今は難しい
結論から言うと、サブプライム前のミニバブルのときはフルローンが出ていましたが、サブプライム後はなんでもかんでもフルローンが出るわけではなくなりました。
当時は地方や郊外物件のように、売買価格よりも積算評価が高い物件を購入することによって、積算評価額ベースで資産価値を増やし、それを資産背景として新たな物件のローンを組むという方法がありました。
実態をまったく反映していない積算評価を根拠に、簡単に融資を出してしまうあたりが融資バブルだったといえます。
社会システムの歪みをうまくつく錬金術が好きな人は多いのですが、サブプライム危機の後はルールが変わり、そういった投機的な融資基準は聞かなくなりました。
現在の融資制度では、銀行ごとに基準はありますが、
- 保有収益物件の積算評価よりも、借入者の実質的な純資産額や金融資産を重視
- 少なくとも自己資金を1割程度出せる
という基準で、まっとうな事業をしている人にまっとうな融資をする姿勢になっています。
フルローン・オーバーローンがなくなったわけではない
もっとも、フルローンは全くなくなったわけではなく、地方の信用金庫などでは、積算評価で物件を評価してフルローンに近い融資を出すところもあります。
投資価値やリスクは別として、とにかくフルローンで一棟買いをするのが第一条件という場合は、地方物件を検討するのがいいでしょう。
地方物件周辺の銀行すべてをまわるくらいの気合いがあれば、フルローン銀行に出会える可能性はあります。
ただしローンに関するウルトラC的な武勇伝はあちらこちらで散見されますが、偶然に運がよかったり、本当に積算評価が高い物件だったり、融資には様々な背景がありますので、背景のわからない話をあまり鵜呑みにするのはナンセンスです。
フルローン・オーバーローンのためだけに地方物件ばかりを買うデメリット
例えば、札幌、仙台、福岡に数千万円クラスを一棟ずつなど、フルローンが出るからといって中途半端な規模で場所を分散して地方物件をもつと、都心部の金融機関では保有物件の調査不可となり、それ以上のローンが出ず、その結果、思いがけないところで規模の拡大がストップしてしまうという弊害がありますので注意が必要です。
一方、都心部の物件では積算評価も収益還元評価も出ないため、自己資金のない人にはフルローンは困難です。
古くからの地主さんや遺産相続で物件を取得したなどで、抵当権設定がされていない物件をもっている人は、それを資産背景としてフルローンを受けることは可能です。
『フルローンをつけます』と前面に押し出す不動産業者には注意が必要
『弊社の顧客はフルローンで収益物件を買い進めている』というのを前面に押し出して、あたかもフルローンを引き出すノウハウを持っているかのような宣伝をして集客している不動産業者は存在します。
すごいなと思われるかもしれませんが、よくよく見ると「書き上げ」と呼ばれる古典的な手法で売買契約書を偽造するなど、詐欺罪に該当するような方法でローンを引き出しているケースもありますのでかかわらないことをおすすめします。
こんなのは銀行との交渉スキルでもなんでもなく、小手先の不正なテクニックでしかありません。やろうと思えば誰でもできます。
書類を偽造してのフルローンやオーバーローンは逮捕者も出ています。
私が声を大にして言いたいのは、これで一番損害を被るのは、不動産業者ではなく、実はまぎれもない顧客であるあなた自身だということです。
不正が発覚して、不動産業者は銀行から取引停止になります。
しかし、不動産業者は会社をたたんでしまえばリセットできます。
従業員の独断でやったのなら、その従業員は退職して、また別の会社に行くでしょう。
しかし、あなた自身はリセットすることはできません。フルローンを欲張ったばっかりに、不動産投資の規模の拡大はここでストップとなります。
あなた自身の銀行からの信用を大きく毀損してしまうからです。
不動産業者の口車に乗せられて、知らない間に犯罪行為に巻き込まれないように、注意する事も必要です。
余談ですが、詐欺で警察沙汰になった際に、「借入者の希望がフルローンだったのでやった」などと業者が言い逃れをされてしまったあかつきには、あくまで借入者はあなた自身ですので、面倒なことになるのは容易に想像できます。
最悪の場合、銀行から全額返済を求められれば、物件を手離さなくてはならなくなってしまいます。
フルローン・オーバーローンのポイント②:銀行ごとの審査基準
銀行が物件を評価する際、下記の6項目を総合的に判断して融資を出します。
- 物件の所在地と買主の居住地
- 買主の純資産と職業
- 固定資産税評価額をもとにした積算価格
- 純利回り
- 競合金融機関の状況
- 金融機関の今期の貸出目標
各項目の重みづけは銀行によって異なりますので、A銀行で断られた融資がB銀行では通るということも起こり得ます。
銀行の貸出目標に依存するのもおかしな話ですが、銀行も営利企業ですので、申請のタイミングによっては融資が通りやすいということもあるということです。
銀行ごとに、独自の査定方法により物件評価を算定し、その査定額の範囲内で貸し出しをすることが基本です。
しかし、地方の信用金庫などでは査定額の範囲に限定してしまうと、十分な融資金額を出せないために、信用貸しといわれる、評価額を超える貸し出しを行うこともあります。
フルローン・オーバーローンのポイント③:サラリーマンが受けられる融資額
一般的なサラリーマン投資家が利用しやすい金融機関は、年収600万円以上ならスルガ銀行、800万円以上ならオリックス銀行といわれます。
それぞれ年収の20倍程度までの融資が基準です。
これは年収の20倍以内ならばフルローンが出るという意味ではありません。自己資金を1割程度入れることが求められます。
また、家族構成や保有物件の残債、返済比率によって限度額の上限を借りられるとは限りません。
日本政策金融公庫も物件価格5,000万円までならば、自己資金1割程度で融資が出やすいようです。
地銀、第二地銀、信金、信組などでもそれぞれが限度額を設定しています。
フルローン・オーバーローンのポイント④:自営業で融資を受ける条件
税金対策での赤字決算でも融資は出るか
これは困難です。
一次的な赤字で説明のつくものならば融資するという金融機関もあるにはあるかもしれませんが、ほとんどの金融機関は赤字や債務超過の会社や個人事業主に対する融資は嫌がります。
決算書が悪いと融資しない理由
『どう見てもたいした赤字ではないし、税金対策で赤字にしているだけで本業は好調なので必ず返済します』と言っても融資は断られるでしょう。
その理由は、金融庁の金融検査マニュアルの存在があります。
金融調査マニュアルによれば、金融機関は貸出先を正常先から実質破綻先に分類して金融庁に報告することを義務付けられています。
分類の悪い貸出先は、
- 金融庁から理由の説明を求められる
- 貸し倒れ引当金を負債計上しなければならない
ために、銀行の自己資本比率を下げる原因となります。
銀行の自己資本比率が低下すると、
- 金融庁から怒られる
- 増資が必要となる
- 債券を発行して外部から資金調達しなくてはならなくなる
- 原因となった支店長や担当者はマイナス評価となり出世に響く
などでデメリットが多く、格付けの悪い先に無理に貸し出して受け取る利息収入よりも余計にコストがかかってしまうのです。
債務者区分と貸し倒れ引当金
- 正常先 貸出額の0.5%
- 要注意先 貸出額の5%
- 要管理先 担保評価を超える部分の15%
- 破綻懸念先 担保評価を超える部分の75%
- 実質破綻先 担保評価を超える部分の100%
上記のように、要管理先よりも悪い分類の貸出先に対しては、担保割れしている部分に対して多額の貸し倒れ引当金を積み増す必要があるため、これも銀行が担保評価以上に融資をしない理由となっています。
このような銀行の会計事情があり、金融庁からも絶えず厳しく監視されているため、赤字や債務超過など、決算書の汚れた貸出先には融資をしたがらないのです。
フルローン・オーバーローンのポイント⑤:住宅ローンで収益物件を購入できると聞いた
収益物件を住宅ローンで購入すると、金消契約や法律に違反することになります。
ある日突然、融資の全額を一括返済することを求められる可能性もあります。
しかし、実際には住宅ローンで購入した物件を賃貸に出している人は多くいます。
理由はさまざまですが、当初は自分が住んでいたが転勤や家族構成の変化などで引っ越しをせざるを得なくなり、いままでの自宅を賃貸に出したなどのケースああるためです。
このように、結果的に住宅ローンが投資になってしまうことは認められていますが、最初から投資目的の物件を、住宅ローンを使って購入することはNGです。
『住宅ローンで投資物件が買えます』という業者の口車にのると、知っているいないにかかわらず契約違反となり、全額一括返済を求められるなどのペナルティを課せられますので注意が必要です。
違反をしていないか担当者が抜き打ちで自宅訪問することもあるようです。
フルローン・オーバーローンのポイント⑥:長期ローンで購入した物件は短期転売できるか
銀行はバブル期の反省より、短期転売を目的とする投機的な不動産取引に対しては融資を出しにくくなっています。
もちろん、経済情勢やライフプランの変化により、中途売却することに問題はありませんが、1年などの保有で売却を繰り返すと、短期転売目的の投資家としてマークされ、次回以降は融資を受けられなくなることもあります。
融資担当者も上席から責任を問われますので、担当者との人間関係にも悪影響をあたえます。
よほどの理由が無い限り短期転売は控えるのが賢明です。
保有期間の目安としては、5年以上の保有を長期保有とみなす個人の譲渡益課税規定にならって、それ以上保有すれば金融機関に文句を言われることはないと考えていいと思います。
仮に保有期間3ヶ月で転売するすることになっても、変動金利で借入しているならば、金融機関はペナルティなしで早期返済、抵当権抹消に応じてくれます。
まったく違法ではないからです。
そのため、出入り禁止になっても元が取れるくらいの十分な利益を確保できる際には、早期売却を検討してもいいでしょう。
投資家も金融機関もお互いにビジネスだからです。
フルローンやオーバーローンは危険?満室家賃収入に対する返済比率を50%以下に抑えれば安心
フルローンやオーバーローンは危ないというイメージを持ちやすいです。
結論から言うと、フルローンやオーバーローンにかかわらず満室家賃収入に対する返済比率が50%以下に抑えることでリスクヘッジが可能になります。
つまり、満室家賃収入に対する返済比率が50%以下であればローンの金額に関係なくリスクは同じだと考えることができます。
ポイントは満室家賃収入に対する返済比率50%という数字です。
満室家賃収入に対する返済比率の考え方
満室収入に対するローンの返済比率の安全度の目安は、
- 40%以下:安全
- 50%以下:比較的安全
- 50~55%:注意が必要
- 55%以上:危険
理由としては、銀行への返済以外に、
- 経費(リフォーム・管理料等)
- 固定資産税
が大きくかかるからです。
経費と固定資産税の合計は家賃収入の概ね20%程度かかってきます。
それと、永遠に満室というわけでもないので、空室率を10%程度見込んでおく必要があります。
経費と固定資産税で30%とすると、返済比率が55%の場合、全部合計すると85%のキャッシュが出ていく計算になります。
マージンが15%だと、空室が増えたり、修繕などの不測の出費が出たときに、キャッシュフローが赤字になるリスクがあります。
経費と固定資産税と空室率で30%は最低かかってくるので、あとは返済比率で収支をコントロールすることになります。
そのため、安全な水準としては、返済比率40%以下です。
経費・固定資産税・空室率を合わせても70%となり、およそ3割のキャッシュマージンがとれるからです。
ただ、なかなか返済比率を40%以下にできる物件も少ないため、返済比率50%以下を最低限ラインとすることで、経費・固定資産税・空室率を合わせても80%になり、およそ2割のキャッシュマージンを取ることができ、リスクヘッジになります。
返済比率50%以下を目標にして進めていくことで、比較的安全な不動産投資となるのです。
フルローン・オーバーローンが借りやすい返済比率50%以下の物件とは
融資期間が重要ファクター
多くの銀行では、融資年数は耐用年数内で設定します。
そのために、収益物件を融資を受けて買うときには物件の築年数に大きな影響を受けます。
収益物件の築年数次第で、融資期間が長くなったり短くなったりするからです。
当然融資期間が長くなれば、月々の返済額が少なくなり、返済比率は下がります。
逆に融資期間が短くなると、月々の返済額が大きくなり、返済比率が上がるのです。
物件の構造別に耐用年数が異なるために、物件の新築からの経過年数に対する融資期間もまた異なってきます。
たとえば、鉄筋コンクリート造であれば、築20年経過していても、まだ27年の融資期間が取れますが、鉄骨造なら14年、木造ですと2年という短い融資期間に基本的にはなってしまいます。
鉄筋コンクリート(RC)造の場合
- 耐用年数:47年
- 築5年経過:融資期間42年(実際は最大35年融資)
- 築10年経過:融資期間37年(実際は最大35年融資)
- 築20年経過:融資期間27年
重量鉄骨(S)造の場合
- 耐用年数:34年
- 築5年経過:融資期間29年
- 築10年経過:融資期間24年
- 築20年経過:融資期間14年
木造の場合
- 耐用年数:22年
- 築5年経過:融資期間17年
- 築10年経過:融資期間12年
- 築20年経過:融資期間2年
融資期間に基づく月額返済額
借入額1億円・借入金利2%でシミュレーションしています。
鉄筋コンクリート(RC)造の場合
- 築5年経過時購入:29万3千円/月
- 築10年経過時購入:31万8千円/月
- 築20年経過時購入:39万9千円/月
重量鉄骨(S)造の場合
- 築5年経過時購入:37万8千円/月
- 築10年経過時購入:43万7千円/月
- 築20年経過時購入:68万2千円/月
木造の場合
- 築5年経過時購入:57万8千円/月
- 築10年経過時購入:78万1千円/月
- 築20年経過時購入:425万4千円/月
満室家賃収入に対する返済比率
1億円の物件で利回りが10%、家賃収入が1,000万円/年、83万3千円/月でシミュレーションしています。
鉄筋コンクリート(RC)造の場合
- 築5年経過時購入:35.1%
- 築10年経過時購入:38.0%
- 築20年経過時購入:47.8%
重量鉄骨(S)造の場合
- 築5年経過時購入:45.3%
- 築10年経過時購入:52.4%
- 築20年経過時購入:81.8%
木造の場合
- 築5年経過時購入:69.3%
- 築10年経過時購入:93.7%
- 築20年経過時購入:510%
フルローン・オーバーローンのシミュレーションから分かること
以上からも、融資期間によって、満室収入に対する返済比率に大きな差があることがわかります。
鉄筋コンクリート(RC)造なら、築20年経過しても満室収入に対する返済比率は基準である50%を下回ります。
それと比較して、築年数が経過した木造の返済比率はかなり厳しいことと、鉄骨(S)造でも築10年以下程度が返済比率50%以下に収めるぎりぎりのラインとなります。
余談ですが、新築であれば、木造でも22年の融資期間が30年に延びる可能性は高くなります。
日本の銀行は不思議なことに新築であれば融資年数が耐用年数より延びることがよくあります。
大手の土地活用のアパート建築会社などでは普通に35年ローンで建築請負をしています。
話を戻しますが、結論として満室収入に対する返済比率を50%以下に収めようとするならば、選択する物件は鉄骨(S)造の築浅もしくは、鉄筋コンクリート(RC)造が適しているといえます。
フルローンやオーバーローンは危険なのか?
フルローンやオーバーローンと聞くと、融資額が大きいので危険な印象を受けると思いますが、論理的に考えると一概にそうではないといえます。
たとえフルローンやオーバーローンで物件を購入していても、満室収入に対する返済比率が安全圏内であれば、返済に何ら問題はないといえるからです。
フルローンやオーバーローンが出る物件は、利回りが10%を大きく超えているものもよくあり、返済比率が50%を下回るのであれば、フルローンやオーバーローンというだけで危険性が高いとはいえないのです。
逆に頭金を2割入れていても返済比率が60%なのであれば、返済にリスクがある物件だと判断できます。
融資総額には関係なく、満室収入に対する返済比率が低いほど、借入返済に対するリスクを低くした運営ができるということになります。
木造は厳しい?
木造投資がダメなのではなく、築年数の経過した木造は、満室収入に対する返済比率が高くなるという特徴があるということです。
返済比率が高くても購入していく層は、
- 既存保有物件で利益が出ていて減価償却狙いで節税をしたい人
- 頭金をたくさん入れて、現金投資に近いかたちで返済比率を抑えている人
などになり、木造にも購入する理由があるということです。
おわりに
フルローンやオーバーローンの融資を引くための必要十分条件とは、
◎物件の担保評価額+借主の信用貸し出し枠が、物件価格を上回っていること
です。
借主の属性が高ければ高いほど、信用貸し出し枠が大きくなるので、極端な話をいうと、どんなに物件担保評価が低くても属性が良ければフルローンの融資が引けるということになります。
特に地方銀行や信用金庫は借主の属性に対してプロパーローンで信用貸しを行う傾向が強いといえます。
そしてフルローンやオーバーローンだから危険だというわけではなく、満室収入に対する返済比率が高い状態が危険だといえますので、一概にフルローンだからといって危険な不動産投資になっているとは言えません。