不動産投資で家賃収入がそれなりにあるのに収支がきつくなる最大の要因は『デッドクロス』にあります。
どんな収益物件でも減価償却が節税対策にならなくなるデッドクロスには早かれ遅かれ必ず陥ることになります。
不動産投資におけるデッドクロスとは家賃収入に対する課税金額と実際のキャッシュフローが逆転してしまう現象を指します。
つまり手元キャッシュフローよりも課税額が多くなってしまうということです。
不動産投資でデッドクロスが起こるとキャッシュフローが赤字となりますので手元の現金がどんどん減っていき財務面で危機的な状況に陥ることがあります。
なのでデッドクロス状態になってしまう前に何かしらの手を打っておく必要があるということです。
またデッドクロスに陥っている収益物件を所有していると銀行から新たな融資を引きにくくなりますので収益物件の買い増しがしにくくなってしまいます。
減価償却とデッドクロスの関係、支払金利とデッドクロスの関係をきちんと理解し、前もって出口戦略もにらみながら運営していくことが不動産投資における最善のデッドクロス対策となります。
この記事では、デッドクロスで不動産投資を失敗する前に知っておくべき4つのこととして、
- デッドクロスと減価償却との関係
- デッドクロスと支払利息との関係
- デッドクロス物件を所有していると次の融資が致命的になる理由
- 銀行がデッドクロスの処理を嫌がる理由
を中心にご紹介します。
不動産投資におけるデッドクロスと減価償却の関係をきちんと理解する
建物などの固定資産の費用は新築や取得したときに一度に経費として計上することはできません。
それは、建物の取得費などを経費として認めると高額なだけに
『今年は利益が出そうだから、建物を取得して利益を減らしてしまおう』
となり、国は税金を徴収することができなくなってしまうからです。
それで建物などの固定資産は、その耐用年数を法律で定め(法定耐用年数)、毎年一定の減耗分のみ分割して経費にしてよいとしているのです。
それが『減価償却』です。
不動産投資における実際の減価償却の方法
減価償却の方法は下記の二つがあります。
- 毎年一定額を償却する『定額法』
- 毎年一定割合を掛けて償却する『定率法』
上記のいずれかの償却方法を選択することになっていますが、全体の7割にあたる建物本体(躯体)部分は定額法しか選択できません。
全体の3割にあたる設備部分については定率法を選択することができます。
設備部分は定額法での償却も可能ですが通常は計上できる償却費が初年度に最も多くなる定率法を選択するのが一般的です。
そのほうが初年度に帳簿上での赤字を出しやすくその損失を青色申告によって3年間(法人は7年間)繰り延べることができるという税制上のメリットがあるからです。
減価償却の定額法と定率法の違いと特徴
減価償却の定額法の計算方法
定額法は減価償却費の額が毎年同額になるのが特徴です。
定額法の計算方法は取得価額を法定耐用年数で割り、その年に経費とできる減価償却費を求めます。
また、取得価額に定額法の償却率を掛けることでも求められます。
◎定額法による年償却可能額=取得価額/法定耐用年数
もしくは、取得価額×定額法の償却率
減価償却の定率法の計算方法
定率法は減価償却費の額は初年度が最も多く、年とともに減少するのが特徴です。
定率法の計算方法は、未償却残高に定率法の償却率を掛けることで求められます。
未償却残高とは、取得価額からすでに償却した前年までの合計額を差し引いた額です。
◎定率法による年償却可能額=未償却残高×定率法の償却率
定率法を採用するためには届出が必要
定率法を選択するときは、
『所得税の減価償却資産の償却方法の届出書』
に定率法を用いる旨を明記し、管轄する税務署に届け出なくてはなりません。
この届出書を提出しなかった場合は、定額法を選択したことにされてしまうので注意してください。
建物・付属設備の法定耐用年数と償却率
下記左から構造・設備、耐用年数、償却率(定額法)、償却率(定率法)
- SRC造・RC造 47年 0.022
- S造 34年 0.030
- 木造 22年 0.046
- 一般的な建物付属設備 15年 0.067 0.167
- エレベーター 17年 0.059 0.147
- 消火・排煙・災害報知設備 8年 0.125 0.313
デッドクロス:キャッシュフローと申告税額の逆転現象
減価償却費は初期投資分を毎年分割して経費にしているにすぎません。
実際に不動産投資家の財布からお金が出ていくわけではないので、手元に残るキャッシュより申告所得が少なくなるという現象が起きます。
その結果、所得税が節税できることになります。
これが逆になると、手元に残るキャッシュより申告所得が大きくなってしまうデッドクロスが起こります。
減価償却には大きく経費を出せるというメリットがありますが、大きな罠も潜んでいることに気付かなければ後で痛い目にあってしまいます。
収益物件の購入当初は減価償却額が大きいので、その分大きな節税メリットを受けることができますが、年月の経過とともに節税効果も薄れていってしまいます。
建物・設備の償却期間のズレがデッドクロスの原因となる
これは、建物、設備それぞれの法定耐用年数と償却方法の違いが関係しています。
前章でも触れたように、建物の償却方法は簡便計算により、全体の7割を定額法で、コンクリート造が47年、鉄骨造が34年、木造が22年で、毎年均等に経費に計上していくことになります。
一方、設備は全体の3割を定額法で償却していくのが一般的で、その基本的な償却年数(法定耐用年数)は15年。
その結果、年数が経過するほど節税に有利な減価償却費が減っていくことになります。
減価償却による節税効果は15年もたてば、設備部分の減価償却費はすっかりなくなってしまうからです。
ローンが追い打ちをかける
その一方でローンの返済方法が追い打ちをかけることになります。
ローンの返済方法は
- 元利均等返済
- 元金均等返済
の2つがあります。
元利均等返済は毎月、元金と金利の合計額を一定額にして返済していく方式で、返済開始当初は返済額のほとんどが金利分で、返済が進むごとに元金の返済割合が高くなっていきます。
元金均等返済は毎月の元金返済額を一定にする返済方法で、当初は金利との合計額が大きくなりますが、毎月一定額で元金が減っていくため、トータルで見れば元利均等返済よりも総支払額は少なくなります。
不動産投資家は変動金利で元利均等返済方式で借りることが圧倒的に多いです。
なぜなら、元利均等返済のほうが元金の返済を遅らせることができ、毎月の元利返済額が一定なので事業計画が立てやすく、元金は時間をかけてゆっくり返済することができるため、当初手元に残るキャッシュフローが多くなるからです。
増えていく元金の支払い分と減っていく金利部分
ローンで不動産投資をする場合は、このことに注意を払わなければなりません。
元利均等返済は毎月の返済額は一定ですが、返済額に占める元金の割合は次第に増えていきます。
毎月元金の返済が増えていくということは、次第に経費にならない元金の返済が増え経費にできる金利部分の返済が減ってくるということです。
その一方で減価償却費の額は年々減っていきます。
そうなると、そのうち不動産投資によるキャッシュフロー収入と税金による支出額が逆転してしまうポイントが訪れることになります。
このポイントがデッドクロスです。
デッドクロスを過ぎると手元に残っているキャッシュフローよりも申告所得のほうが多くなってしまうという節税と正反対の結果となってしまうのです。
それはすなわち、手元にキャッシュが残っていないのにさらに課税がかかって税引後利益がマイナスになるということです。
不動産投資におけるデッドクロスと支払利息との関係
不動産投資における支払利息の経費計上
経費計上できるのは借入金返済のうち支払利息分のみです。
ただし、不動産所得が赤字の場合は赤字のうち土地等を取得するために要した借入金利子部分は必要経費には算入できません。
経費計上できないものは
- 銀行への毎月の支払いのうち、元本返済部分(負債が減っているため)
- 不動産所得が赤字の場合は、赤字のうち土地等を取得するために要した借入金利子部分
- 開業前に支払う土地、建物の借入金利は、資産の取得原価に計上
支払利息しか経費計上できない
銀行への借入金の返済は、支払利息しか経費になりません。
つまり、元本返済分については必要経費とはならないということに注意が必要です。
銀行への返済で現金支出をしているのですが、元本返済分は経費とならないため、元本返済分については現金支出が伴うのに税金がかかる対象ということなります。
ここが不動産投資の税務においてもっとも大変なところです。
現金が出ていくのに経費にできない支出となるためキャッシュが手元にないのに税金の支払いに追われることになるからです。
初めて不動産投資を行う場合にデッドクロスについて確認すべきこと
初めて不動産投資を行う場合は、業務開始日前までに取得した土地、建物の借入金金利は取得価額に含めることになります。
すでに業務を営んでいる場合は経費化できます。
業務開始の判断は、建物が完成して賃貸するという意思表示を客観的にした時点と考えられています。
- 不動産会社に入居者の仲介斡旋を頼んだ時点
- 入居者の募集広告を行った時点
などがその意思表示だとされており、よく確認することが必要です。
デッドクロスについて
どのような状況でデッドクロスが発生しやすいかというと、
- 元本返済額が減価償却費より多くなる
- 課税所得が上がる
- キャッシュフローが出にくくなる
という組み合わせで起こりやすくなります。
つまり、元本返済分と減価償却は課税所得を計算する際に真逆の動きをします。
この関係が崩れるとキャッシュフローが出にくくなるということです。
- 元本返済分・・・現金支出があるのに、経費にできず税金がかかる対象
- 減価償却・・・現金支出がないのに、経費にできるので税金がかからない対象
そして、デッドクロスが心配されるのは収支があまり良くない状況の収益物件を買ったときです。
利回りが高く家賃収入が高い物件であれば、確かにキャッシュフローは落ちてきますがそれほど恐れる問題ではありません。
不動産投資を拡大していくのであれば、収益物件を購入して増やしていけばそれに伴う経費や減価償却が増えてきます。
法人であればさらに、
- 役員報酬を増やす
- 旅費規程を作る
- 法人保険を活用する
などのいろいろな節税手法を組み合わせることができます。
デッドクロスの心配は、どちらかといえば少ない棟数を長年にわたって持ち続けるような運用の仕方をしている場合に発生しやすいといえます。
不動産投資でデッドクロス物件を所有しているだけで銀行からの次の融資には致命的に不利になる理由
もし所有している収益物件がデッドクロスになってしまったら銀行からはどのように見られるのでしょうか?
だれもがデッドクロスにしようとして収益物件を買っているわけではありませんが運営した結果として
- 当初は収益があがっていたのに、気が付いたらデッドクロスに陥っていた。
- 税金や諸経費等を支払したあとで見直すと、収支がマイナスになっていた。または、ほとんんど手残りがなくなってしまっていた。
ということも多いのかもしれません。
融資がちゃんとついた収益物件にもかかわらずです。
実は銀行融資が通った収益物件が良い収益物件でありデッドクロスしない収益物件というわけではありません。
このようなデッドクロス物件を所有しているだけで次の融資には下記のような理由で厳しくなります。
デッドクロス物件を所有しているだけで次の融資には致命的に不利になる理由
デッドクロス物件は保有しているだけで銀行には不動産投資家としての資質を疑われます。
不動産投資も銀行から見ればひとつの事業であり、不動産賃貸業である以上、収支が経常的にマイナスで慢性的なデッドクロスに陥れば、銀行は所有者に対し、不動産投資家としての資質、能力に疑義があると判断せざるを得ません。
これは不動産投資に限られたことではなく、銀行から運転資金を借り入れて事業を行っている事業者すべてにおいて当てはまることです。
不動産投資の場合は、
- 物件購入によるもの
- 大規模な修繕によるもの
など短期的な原因による事業収支のマイナスは問題ないとみなされます。
しかし、
- 赤字が慢性化
- 収支は常にマイナス
- 融資の返済に支障をきたす
- 早晩滞納するのが明らか
などのような致命的な状況に陥ってしまったときに、銀行の目は借入当初とは180度異なってきます。
この段階で銀行の貸出債権の分類が下がってしまうことが多いからです。
これは、融資した事業案件が事業として成り立っていないとみなしているということです。
不動産投資で所有物件がデッドクロスに陥ると次の融資はない
もし既存の保有物件にデッドクロス物件があれば、次の融資は大変厳しいものになってしまいます。
たとえ次の案件が、超優良物件で担保物件としても申し分なく、銀行も是非うちで融資したいと思っても、必ずデッドクロスに陥っている保有物件について合理的な説明を銀行は求めてくるからです。
なぜなら、次の物件がどれだけ高収益でデフォルトリスクの小さい案件であっても、
- ここで上がった収益は、既存のデッドクロスに陥っている物件の赤字補てんにまわってしまうのではないか?
- どんなにこの物件で稼いだとしても、稼いだ分がそのままデッドクロス物件に吸い取られて、この物件でも利益が残らないのではないか?
という質問が本部審査から来るのは目に見えているからです。
まして、そのデッドクロス物件の取得が他行での資金調達によるものであり、他行の抵当権が設定でもされていれば、
- なぜうちの銀行から融資して取得した優良物件なのに、その収益で他行の借入の返済を手助けしないといけないのか?
- 本来うちの銀行に歩留まりするはずの預金で、なぜ他行の借入を返済しなくてはならないのか?
- 融資するのみで取引内容に膨らみや複合取引化もなく、預金すらないのだったら、融資する意義はないのでは?
などと、本部審査からこれでもかとデッドクロス物件のことを突っ込まれると、これに対抗する材料を見つけるのは至難の業であるといえます。
なぜなら、本部審査がデッドクロス物件について突っ込んでいることはすべて合理的で筋が通っているからです。
たとえ不動産投資が初めてで知識不足の中で投資した収益物件であったとしても、それはデッドクロスを擁護する理由にはなりません。
初めての収益物件であったとしても、デッドクロスは絶対に出してはいけないことだからです。
不動産投資におけるデッドクロスは銀行の責任ではない
不幸にも保有物件がデッドクロスに陥ってしまった場合、その案件に融資を付けた銀行に対して、
- なぜ融資する前にその危険性を知らせてくれなかったのか?
- なぜ融資する前に一言アドバイスしてくれなかったのか?
- そうしたらもしかしたら買わなかったかもしれない。
- そうしたらこんなことにはならなかったのに。
- 銀行も貸したいから融資したんだから責任の一端はあるのではないか?
などと思ってしまう気持ちは分かります。
しかし誤解してはいけないのは、その収益物件を選択し購入したのはまぎれもなく自分自身だということです。
他の事業者がそんなことを言っているでしょうか?
『私の事業が失敗したのは貸した銀行にも責任がある』
という事業者がいるでしょうか?
たとえ不動産業者に煽られたとしても、満額融資がついたとしても、最後の事業判断は自分自身が行ったことなのです。
時々、銀行融資さえ満額で通りさえすれば不動産投資がすべてうまくいくと勘違いされている人もいますがこれは誤りです。
融資が通ることと、不動産投資が上手くいく上手くいかないは、別次元の話だと考えることが合理的です。
デッドクロスに陥るということは銀行にとっても想定外のお話しなのです。
あくまでも銀行が融資を決めるのは、独自の融資基準の中で回収見込みが高い場合です。
不動産投資は物件を取得した後に、運営して利益が出続けるようにしていかなくてはなりません。
なので、デッドクロスに陥ったのは資金を融資した銀行のせいではなく、所有者の運営の失敗にあるということになるのです。
不動産投資で銀行がデッドクロスの案件処理を嫌がる本当の理由
不動産投資で所有している物件がデッドクロスに陥った場合、まずは銀行に相談されるのではないでしょうか?
売却するという方法もありますが、先に銀行に対して返済の見直しやく見直しの相談が必要になる場合も出てくるかと思います。
しかし、こういう場合の銀行の対応はいまひとつなことが多く、こちらは困っているのに、もう少し親身になって対応してくれてもいいのではないかと思われるかもしれません。
実は、銀行にとって既存の融資案件を慢性的な事業収支のマイナスの赤字を理由に組み替えすることは積極的には取り組みたくない業務なのです。
デッドクロスの処理を嫌がる理由①:担当者の営業成績にならない
新規貸出案件ではないので、担当者も自分の営業成績にならないことをわかっています。
銀行の担当者としては、時間と労力をできれば営業実績にカウントされる新規貸出案件の発掘に使いたいというのが本音のところです。
デッドクロスの処理を嫌がる理由②:事後管理は返済猶予に該当する
返済困難を理由に、
- ローンの組みなおし
- 金利引き下げ
- 元本返済の猶予
といった対応である事後管理は返済猶予に該当します。
銀行としては正常債権以上の引当金の計上が必要になり銀行の収益を圧迫することになります。
しかも銀行内部的には収益につながらない後ろ向きの案件になりますので、担当者も気持ち的には後ろ向きになってしまうのです。
おまけにその類の稟議書は新規に貸出する稟議書以上に手間暇がかかり営業成績にもならないという踏んだり蹴ったりの状況になるからです。
デッドクロスの処理を嫌がる理由③:自己の評価にも影響する
デッドクロスに陥って恒常的にマイナス収支の赤字になってしまった案件が、まさに自分が融資した案件でしかも1年を待たずしてそのようなデッドクロスに陥ったとしたら担当者にとっては最悪の案件となります。
自己の評価にも少なからず影響することになるからです。
デッドクロス物件の銀行相談時のポイントは2つ
相談を受けた銀行担当者も条件変更(組み直し、金利引き下げ、元本返済猶予など)の稟議書を作成する際にも必ずこのことがポイントになってきます。
デッドクロス物件を銀行に相談する際のポイント①:原因の追求
どうしてデッドクロスの状況に陥ったのか?
その原因を把握することが最初のプロセスとして重要です。
『家賃収入が減少した』
というのは理由になっていません。
そんなことは事業収支をみれば不動産の素人の銀行担当者でも分かるからです。
銀行担当者は、
『なぜ家賃収入が減少したのか?』
という原因を知りたいのです。
また、
『当初の稟議書では事業収支が十分成り立つ形で事業計画書を提示していたのに、なぜこのように短期間で状況が変わってしまったのか?』
ということを知りたいのです。
まずこの原因が明確で納得のできるものでなければ銀行の審査部に対する説得力は無いといえます。
デッドクロス物件を銀行に相談する際のポイント②:改善策
原因を踏まえて実際にはどのように状況を打開する改善策を考えているのかを説明しなければいけません。
ただ単に、
『家賃収入が減少したから仕方がないので返済条件を変更してください。』
では稟議書の組み立てはできないのです。
大切なのは、
- 今後どのように不動産を運営していくのか?
- 少しでも家賃収入をアップさせるためにどんな努力をしていくのか?
- 空室率を抑えるために、どのような努力をするつもりなのか?
など、自分自身が不動産投資家として経営努力をするという姿勢が重要になってきます。
そして、これらを考慮して今後の事業展開をあらためて提示することが必要になります。
所有している収益物件がデッドクロスに陥り銀行に相談に行ったとしても担当者はあまり乗り気ではないことが多いです。
条件変更など後ろ向きの事後処理業務は担当者の成績になるどころか自分の融資した案件であれば評価を下げることにもつながるからともいえます。
それでも、デフォルトになる前に銀行には相談する必要があることは間違いありません。
その際には、まず自分自身で原因の追究と改善策を考えスキームを組み立てて、その上で返済計画の見直しが必要というロジックに持っていくことが最低限必要となります。
おわりに
- 不動産投資が所得税の節税対策として有効である大きな理由のひとつは、収益物件そのものが税法上減価償却を認められている資産だからであり、減価償却方法は建物は7割で定額法のみ、設備部分は3割で定率法で償却することが一般的となっている
- 。減価償却は大きな節税効果がある反面、償却できる額が年々減っていき、節税にならなくなってしまうデッドクロスが必ず訪れる。そしてローンで元利均等返済を選択している場合は、年々経費にできる金利部分が減って、経費にできない元金部分の返済額が増えていきデッドクロスは必ず訪れることになる。
- 不動産投資の帳簿上の経費の大きな部分を占めている減価償却費と金利支払額は年々減っていき、元金支払額は年々増えていく。その結果、実際の手元に残るキャッシュフローよりも申告所得が多くなってしまうというデッドクロスがいつ起こるのかは、収益計算によって予測でき、その前に売却をして減価償却がとれる物件と入れ替えるという出口戦略を立てるのが継続的な減価償却を使った節税方法となる。
- 不動産投資上、借入金の元本返済分と支払利息の経費計上ルールは非常に重要なもので、元本返済分が経費にならないことを理解して、利益をコントロールしていく必要がある。そしてデッドクロスは元本返済分が減価償却費よりも多くなると課税所得が上がり、キャッシュフローが圧縮されておこる。ただ、不動産投資を拡大して物件を購入すれば、それに伴い経費や減価償却がふえるので、必要以上に神経質になる必要はない。
- 保有物件ごとに見て、デッドクロスの兆候がある物件は全体の収益の足を引っ張ることになるので、早めの資産の入れ換えなどを検討する。
- デッドクロス物件は保有しているだけで銀行には不動産投資家としての資質を疑われる。不動産投資も銀行から見ればひとつの事業であり、不動産賃貸業である以上、収支が経常的にマイナスで慢性的なデッドクロスに陥れば、銀行は所有者に対し、不動産投資家としての資質、能力に疑義があると判断せざるを得ない。そして、既存の保有物件にデッドクロス物件があれば、次の融資は大変厳しいものになってしまう。
- 必ずデッドクロスに陥っている保有物件について合理的な説明を銀行の本部は求めてくるが、それに対抗できる材料がない。デッドクロスに陥ったのは、資金を融資した銀行のせいではなく、所有者の運営の失敗にあるということを理解する。