任意売却を進めるにあたって最もやっかいな権利関係は何でしょうか?
不動産に付く権利はいろいろありますが、任意売却の天敵ともいえるやっかいな権利が『差押』です。
これは本当に間違いありません。
突然の差押登記が入ったばっかりに任意売却が頓挫してしまったということはよくあることなのです。
最悪の場合、任意売却をずっと進めてきてやっと辿り着いた決済日に運悪く差押登記がねじ込まれることもあります。
これは任意売却をやっている側からするとたまりません。
しかし任意売却の決済日に差押登記が入ったような場合でも対処法は必ずありますのでご安心ください。
任意売却はピンチに遭遇した経験がものをいうのです。
任意売却時に不動産についている可能性のあるさまざまな権利関係
任意売却を行う不動産には、用益物権や他の担保物権などのさまざまな権利が付いていることがあります。
用益物権には、民法が定める他人の土地を使用収益する権利であり、
- 地上権
- 永小作権
- 地役権
- 入会(いりあい)権
などがあります。
他人に対抗できる地上権や地役権があるときは不動産の買主は制限を受けてしまうので、買主の所有権の行使を阻害する場合は決済引渡しまでに抹消するのが通常です。
しかしその権利の内容がはっきりしていて、買主に引き継ぐ意思がある場合の任意売却においてはそれほど問題になることはありません。
任意売却で一番問題になるのが『差押』の登記
任意売却で買受人が見つかり、不動産の売買契約時には何もなかったのにもかかわらず、その後になって新しく権利が付くことがあります。
その権利で一番問題になってくるのが『差押』です。
任意売却を進めていて『差押』が決済日の当日につくこともあります。
任意売却の決済日当日に突然『差押』登記が入った場合の対処法
任意売却を進めていて『差押』登記がよりによって決済引渡し日当日についたこともよくありました。
担保物件の任意売却を行っていて売却先も決定し、担保権者の同意も取り付け、不動産売買契約も終えてあとは決済引渡しを行うばかりという状況で、その決済当日に司法書士から当該不動産の登記が動いていて事件中になっており閲覧ができないと連絡があったのです。
決済引渡し場所である銀行にはすでに関係者全員が集まっていたのですが、登記簿を閲覧できない原因が不明のままだったのでその日は一旦解散することにしました。
その後すぐに調べたところ、県税事務所の差押え登記が不動産登記に新たに付いていたことが確認できたのですぐに差押え解除の交渉を行い、その結果解除料20万円でなんとか差押登記の解除に応じてもらえることになったのです。
すでに任意売却代金からの各債権者への配分は決まっていたので、その解除料は債務者が負担することで決着つきました。
ちなみにこのときの県税は登記簿に差押などの記載がなかったので、配分計画に盛り込まれることもなければ県税事務所に連絡を取ることすらありませんでした。
しかし確実に県税の延滞は起こっていて何も知らない県税事務所の担当者が差押登記を申請したタイミングと任意売却の決済引渡しが偶然にも重なったというのがことの経緯です。
そして後日もう一度関係者全員が集まり、最終的には無事に任意売却を終えることができたというわけです。
また、同じような決済日当日に『差押』が入ったケースで売主買主がお互いに遠方に住んでいた場合で、司法書士の判断でその日に先に決済引渡しをしたケースもレアですがありました。
『差押』の権利が付いたまま残金決済と所有権移転を行ったことになります。
このケースは午前中に決済引渡しを終えてその足でそのまま市税事務所に行き、『差押え』登記を解除料を30万円払って抹消してもらいました。
決済引渡しの最終確認の前に市税事務所に連絡をしてその場で折り合いがついたから出来たレアケースです。
一度解散してしまうと次に全員集まることができるのがかなり先になりそうだったので確認を取った上で決済を行いました。
日程を延期することで債権者の遅延損害金がまた増えることで、せっかく同意を取り付けた配分計画ではまとまらなくなるという懸念があったため総合的に判断しての結果でした。
おわりに
以上からも分かるとおり、任意売却では通常の不動産取引以上に実にさまざまな権利関係が入り乱れていて、いろいろなところから思いもしなかったことが起こることがあるので、最後まで注意深く取引を行うことが求められるのです。
特に差押え登記はいつでも入れることができるので、債務者が忘れていたような借入先からも突然差押えられる可能性もあるので、債務者に他に借り入れをしているところがないか、税金で払い忘れている先はないかなども含めてきちんとヒアリングしておく必要があります。
それでも『不意打ち』は必ずやってきます。任意売却を携わる限りは注意深くしてしすぎるということはないということを常に肝に銘じる必要があるのです。