住宅ローンを滞納してしまい競売になる前に任意売却をしようと考えたときに、債務者本人以外にも連帯債務者や共有者がいて連帯債務者は任意売却してしまいたいのに債務者本人との連絡がつかずどこにいるのかもわからないというケースがあります。
逆に債務者本人は任意売却をしたいのに連帯債務者や共有者と連絡がつかないというケースもあります。
多いのは離婚してから連絡を取っていなかったりしてお互いにもう連絡が取れないなどの場合です。
債務者本人や連帯債務者が行方不明の場合は任意売却はできないのでしょうか?
結論からいうと任意売却を行うことはかなり難しくなると言わざるを得ないです。
任意売却を進めるにあたっては、あくまで債務者本人や連帯債務者の売却意思と協力を得られることが大前提となるからです。
そして連絡が取れなくて一番困るのは債権者です。
- 債務者がお金を返す気があるのか
- 物件を処分して返済する気があるのか
などが何も分からなくなるからです。
連帯債務者は自分に債務が降りかかってくるので気が気ではありません。
このような場合は適切なプロセスを踏んで、債務者本人や連帯債務者が本当に行方不明であるのかどうかをできるだけ早く確認する必要があります。
債務者や連帯債務者が行方不明で連絡がつかないような場合は任意売却はできないの?
任意売却といっても不動産の売却にはかわりがないので、任意売却を行うことができる大前提として、物件所有者である債務者本人や連帯債務者の任意売却の意思確認が必要になります。
債務者本人や連帯債務者の売却意思がなくても不動産の売却ができるのは『競売』と『破産管財人』の場合のみだからです。
なので債務者本人や連帯債務者が行方不明で意思確認ができなければ、原則として任意売却はできないということになります。
そのような債務者本人や連帯債務者と連絡が取れない場合には、債権者としても競売するしかないのか、連絡がつけば任意売却する気があるのか分からないので債権の回収判断が難しくなります。
また、連帯保証人などは自分に残債務が降りかかってくるのでできるだけ債権者と話し合いをして、任意売却するにしてもできるだけ高額で売却して残債務を圧縮したいという希望があります。
債務者本人や連帯債務者は逃げてしまっているのでどう考えているのかは分かりませんが、何とかしようとしている側としてはものすごく不安な思いをすることになります。
債務者本人や連帯債務者の行方不明は一般的には債務から逃れようと意図的にされていることがほとんどです。
なのでいつまでも探し続けることは難しいと言わざるを得ません。
債務者や連帯債務者が行方不明で連絡が取れず任意売却が出来ない場合の6つの確認方法
債務者本人や連帯債務者が本当に行方不明であるということを最終的に確認するプロセスはどのようなものがあるのでしょうか?
これからご紹介する6つの方法は私もご相談者様と一緒に実際に行ったことがあり、それで債務者や連帯債務者と連絡がついたこともあります。
そしてこのプロセスを踏んでも債務者や連帯債務者と連絡が取れなければ競売でも仕方ないですねとご相談者様や債権者ともお話ししていたものです。
任意売却をするために行方不明の債務者や連帯債務者を探す確認方法①:現地調査を行う
とりあえず何はさておき物件現地にまずは行きます。
意外にこれだけで行方不明と言われていたバッタリ債務者本人や連帯債務者に出会うこともありました。
やはり何事も現場が大切です。
『事件は会議室で起こっているんじゃない現場で起こっているんだ!』
という某映画の言葉は現実味があります。
物件現地に行くメリットはなんといってもバッタリ債務者本人や連帯債務者と会うことができればその場で直接話しができ、メリットを感じて頂いて任意売却の同意を得ることもできるということです。
また物件現地に行くことで債務者本人や連帯債務者が立ち寄っている形跡があるかまったく別の場所に行っているのか確認や判断もある程度できるメリットがあります。
電気メーターや水道メーター、ガスメーターなどの数値を確認して後日再度確認すれば使っているかどうかもわかります。
またご近所の人にそれとなく話をすることで最近見てないとかよく見かけるよとかヒントがつかめる場合もあります。
現地に行くことのデメリットはなかなか1回現地に行ったくらいでは会えることは少なく、何回も時間を変えて行ったり、現地にある程度の時間とどまっておく必要があることです。
真夏や真冬はずっと待っているのも体にこたえます。
近くの物件でもかなり大変で、遠方だともっと物理的に難しくなります。
任意売却をするために行方不明の債務者や連帯債務者を探す確認方法②:住民票や戸籍の附票で確認する
役所で住民票や戸籍の附票を取って異動の手続きがないか確認します。
しかし、行方不明になっている債務者や連帯債務者がきっちり住民票の異動の手続きを行っていることはまずありませんでした。
逆に手続きをしていないから逃げて行方不明なのだろうという確認にはなります。
任意売却をするために行方不明の債務者や連帯債務者を探す確認方法③:周辺へのヒアリング
家族、勤務先、親戚、近所の人、町内会の人、連帯保証人などにヒアリングを行います。
仕事をしている人であれば意外に普通に職場にいた場合もありました。
注意点としては、ヒアリングする内容がセンシティブなものであるのでヒアリング先とその聞き方を慎重に行う必要があることです。
変にかぎまわっていて逆に所有者からプライバシーの侵害などで訴えられてしまっては元も子もありません。
まずは利害が絡む関係者からヒアリングをして一緒に探してみるところから始めるのがおすすめです。
任意売却をするために行方不明の債務者や連帯債務者を探す確認方法④:電話帳や自動車の登録を調べる
電話帳や自動車の登録を調べて行方不明後に転送や移転手続きがないかを調べます。
しかしこれも行方不明後になされていることはまずありませんでした。
電話帳は固定電話の登録自体もされていない人が増えているので効力もあまり期待できません。
任意売却をするために行方不明の債務者や連帯債務者を探す確認方法⑤:郵便局に確認する
郵便局の集配課に転送届が出ていないかを照会します。
ある程度の期間行方不明でも郵便ポストがいっぱいであふれていなければ、転送手続きをしている可能性があります。
任意売却をするために行方不明の債務者や連帯債務者を探す確認方法⑥:手紙を出す
アナログな方法ですが手紙を投函したり郵送するという方法ですが、意外にこの手段が一番反応がありました。
手紙を読んだ債務者本人や連帯債務者からご連絡を頂いて任意売却に着手できたことが何度もありました。
現地に行ったときに持って行って郵便ポストに入れてもいいですし郵送でも構いません。
配達証明よりは普通郵便のほうがポストインされますので見てくれる可能性があります。
配達証明の場合は債務者はそういう配達証明や内容証明などの郵便が債権者などからも頻繁に来る状態になっており受け取り拒否されて戻ってくることがよくありました。
最近のマンションではフルオートロックになっていて何度お伺いしても出ないのに手紙だと安心したのか折り返しの連絡があったこともよくありました。
なんだ・・・いたんじゃないですか・・・とは思いましたがそれくらい心を閉ざしてしまっていたのでしょう。
おわりに
債務者本人や連帯債務者が行方不明の場合に行方不明のままでは任意売却を進められないことと、行方不明者を探す6つの確認方法をご紹介しました。
調査方法によっては個人の信用にかかわる問題でもあるためくれぐれも慎重な対応が望まれます。
無理矢理探し出しても任意売却への協力を得ることが難しければあまり意味がないからです。
債務者本人や連帯債務者の心証を悪くしていらぬトラブルを招いてしまっては本末転倒です。
確認という形でチェックを行ってダメなら競売になってしまうだけです。
それ以上でもそれ以下でもないので不動産会社側としては任意売却を進めて仲介手数料がほしいところですが、あまり深追いはしないというスタンスが必要だと感じてきました。
なお、債務者や連帯債務者が行方不明だと任意売却ができないというのは原則論です。
やろうと思えば債権者が家庭裁判所に利害関係人として不在者管理人選任の請求を行い、不在者財産管理人を相手に交渉を行って任意売却を成立させることもできます。
しかし債権者としてはそこまで時間をかけてやるなら競売のほうが手っ取り早いと考えるのが時間的にも金銭的にも合理的だと言うことです。
そこまでする意味がないというだけの話です。
債務者本人や連帯債務者にとっても逃げてしまえば担保の家はは取られてしまうことに変わりはありません。