不動産投資に取り組んでいて困るのが予定していた家賃収入が入ってこないことです。
不動産投資で予定していた家賃収入が入ってこないパターンは
- 空室
- 家賃滞納
の2つです。
では不動産投資において空室で家賃が入ってこないことと家賃滞納で家賃が入ってこないことではどちらが損失が大きいのでしょうか?
実は家賃滞納のほうが空室よりもはるかに大家さんへの損失が膨らみダメージが大きくなります。
空室なら賃貸付けで部屋を埋めることができればそれ以降は家賃が入ってきます。
しかし家賃滞納は、
- 相応の時間
- 相応の費用
をかけて、
- 家賃滞納者に出ていってもらう
- 原状回復を自費で行う
ことまでやって初めて空室状態にできることになります。
家賃滞納を長期間解決できないと、不動産投資家が被る損害額は逸失利益も含めて甚大なものとなりやすいのです。
この記事では、不動産投資で家賃滞納が起きた場合に家賃滞納トラブルを早期に解決するポイントをご紹介します。
不動産投資で家賃滞納が起きたらどうする?不動産投資の家賃滞納トラブルを早期解決するポイントはコレだ!
家賃滞納問題を専門に取り扱い法律事務所によると、大家さんからの家賃滞納の相談件数は年々増加しているそうです。
ちなみに、弁護士に家賃滞納問題を依頼するとどれくらいの費用と期間がかかるのでしょうか?
弁護士費用の目安
法律事務所によっても異なりますが弁護士費用の相場としては、
30万円~40万円
が一般的です。
あくまで弁護士費用の相場です。
法律事務所によっては、顧問先であれば上記の金額で引き受けますが、一見さんだと35万円~45万円の弁護士費用となるところもあるようです。
一概に弁護士費用が安ければよいというわけではありません。
必要以上に安さをアピールしているところは非現実的な期間設定などを行っている場合もあり、家賃滞納問題を解決するという目的が達成できないおそれもあります。
あくまで問題を解決することを最優先に依頼先の法律事務所を決める必要があります。
家賃滞納問題解決までの期間の目安
家賃滞納問題を解決するステップとして、
- 示談交渉
- 裁判(明け渡し訴訟)
- 強制執行
の3段階があります。
おそらく1の示談交渉ではこの段階の入居者は応じないケースが多いので必然的に裁判から強制執行という流れになっていきます。
裁判での明け渡し訴訟は家賃滞納が起こってすぐにできるわけではなく、3か月程度の滞納期間が必要になります。
そして裁判での明け渡し訴訟で最低でも2か月の期間がかかります。
裁判で判決が出て強制執行が完了するまでにさらに最低でも1か月半ほどかかります。
なので家賃滞納が始まってすぐに着手したとしても最低でも6ヵ月ほどの期間がかかることになります。
大家業の繁忙期といわれる1月~3月のかき入れ時に間に合わせようとすると、上記の期間を逆算して遅くても夏前くらいから取り掛からないと間に合わないということです。
弁護士費用以外に裁判から強制執行にかかる費用の目安
上記の30万円~40万円という弁護士費用以外に、
- 裁判法定費用:1万円~3万円
- 強制執行:6万円(予納金)
- 補助業者:30万円~100万円
などの費用がかかります。
補助業者に払う費用は、強制執行の数時間の間に部屋を空にするための人数で来ることになるのでそれなりの金額がかかってしまいます。
そしてトラックで撤去して倉庫で1か月間保管して、最終的には大家さんが処分をすることになるのでその処分費用も別途必要です。
ケース事例①
- 弁護士費用:324,000円
- 裁判費用:79,400円
- 強制執行費用:680,400円
このケースでは、所要期間4か月と約110万円の費用を要しました。
なんと、入居してからまともに1度も払わずに強制執行を迎えたというケースです。
最初の賃貸契約時の日割り家賃しか大家さんは家賃収入がなかったのに、4か月以上の無収入期間と110万円のキャッシュアウトという大きな被害を被りました。
さらに悪いことに、ペット不可にしていたのにもかかわらずペットを2匹飼っていて、原状回復にさらに100万円を要したとのことでした。
ケース事例②
- 弁護士費用:32万円
- 裁判費用:7万円
- 強制執行費用:117万円
このケースでは費用の合計が150万円という結果になっています。
室内にゴミが散乱というよりは積みあがっていて窓の高さまでゴミがあったそうです。
家の入口からすべてゴミで、高さは人の高さよりも高く部屋中すべてゴミの山という状況だったとのことです。
家賃滞納者でも入居者『追い出し』の社会問題化
貸主側に不利な世論形成となっています。
原因は一部業者の違法な督促が発端で貸主=強者、借主=弱者という前提に立った報道がなされていることです。
全国追い出し屋対策会議で被害対策弁護団を形成しています。
自力救済は絶対にNG
なんとか大家さん自身で解決しようとしての自力での執行は違法になってしまいます。
違法行為になりますので、
- 民事:損害賠償
- 刑事:刑事告訴(住居侵入等)
が課せられる可能性まであるのです。
『なぜ自分の物件なのにここまでされなければならないのか』
と理不尽に思われる大家さんも多いのですが、違法行為にならないように法律にのっとって手続きを進めていくしか今の現状では手段が無いのです。
『コンビニや飲食店で料金を払わなかったら窃盗で捕まるのに、家賃を払わなくても払ってもらっていないほうが負けるのはいささか理不尽だ』
と思われる大家さんは多いのですがそれでも違法行為にならないようにするしか今は手が無いのです。
やってはいけない!よく見られる大家さんの失敗例
①鍵の無断交換・荷物の無断搬出
これは完全に違法です。
不法行為として民事では損害賠償の対象になり、刑事でも住居侵入などで刑事告訴の対象になりますので、絶対に行ってはいけません。
②張り紙
これも名誉棄損や営業妨害を根拠に損害賠償を請求されることがあります。
悪質な場合は刑事告訴の可能性も考えられますので、腹が立つのはわかりますが大家さんとして軽率な行動は慎む必要があります。
③正当理由なく職場に連絡
職場に督促の連絡を大家から行ったことで、『職場にいられなくなる』などと主張されて大トラブルに発展することもあります。
名誉棄損と主張される可能性もあります。
ただし、本人に連絡を取ろうと自宅に何度か連絡して証拠となる痕跡を残すなどのプロセスを踏んだ上であれば正当理由とみなされる可能性はあります。
④感情的になり大声で滞納家賃の支払いを要求
これもダメで、下手をすると脅迫や恐喝と言われかねません。
いくら相手が払っていないからといって入居者を威迫する行為は刑罰の対象になり得るのでしてはいけません。
いかにして家賃滞納を防ぐか?
対策ポイント①入居審査に力を入れる
トラブルを起こしそうな人とは契約をしないことが大切です。
契約して入居してしまうと立場が弱くなりますが契約前なら断ることもできるからです。
問題になりそうなことは水際で防ぐことが大切です。
ポイントはまずは『職業』です。
- 雇用や給料は安定しているのか?
- 長期間勤めているのか?
などをチェックします。
次に『転居理由』です。
お金をかけて引越しをするからには納得のいく理由があるはずです。
そして、『転居までの期間』も重要です。
なぜ短期間で転居するのか?
合理的な理由があるか?
などをチェックするとより厳しく審査できます。
対策ポイント②資力のある連帯保証人を確保するか滞納保証を利用
最終的な損害を大家さんが負担することを避けるためのリスクヘッジを行っておくと万一の際も費用的な部分に関しては安心感が増します。
対策ポイント③なるべく多くの連絡先を確保する
家賃滞納者とは連絡が取れなくなることが多いです。ほぼ100%です。
家族や職場の先輩等こちらから遠慮なく連絡できる人を『緊急連絡先』や『身元引受人』としてなるべく多く確保します。
そうしておくことでトラブルの抑止力が働く可能性があります。
連帯保証人や緊急連絡先、身元引受人といった入居者側の人たちにはトラブルになっていることを知られたくないと考える入居者は少なくありません。
そしてトラブル解決力を発揮してくれることもあります。
万一トラブルになった際も、入居者側の人たちは入居者を説得してくれることが多いです。
そして入居者もそれらの人たちであれば耳を貸すことが多いのです。
対策ポイント④契約書をきちんと整備する
契約書はトラブル解決の一番の指針となります。
条文数が少なく必要な記載がない古いタイプの契約書を使っている人が依然多いのですが、その場合は契約書はトラブル解決の指針としては機能しません。
また、定期借家であれば悪質入居者と契約を更新しなくても済みます。
いかにして家賃滞納を解決するか?
対策ポイント⑤迅速な対応
家賃滞納には早期対応が最も重要となります。
1週間も放置すれば、逆に『1週間は滞納してもよい』と都合よく解釈されるのです。
支払い期日の2~3日後までには動き出す必要があります。
初動が一番の勝負所だからです。
対策ポイント⑥連帯保証人・緊急連絡先・身元引受人を巻き込む
入居者側の人間に前述のように入居者を説得してもらいます。
連帯保証人には本来であれば家賃を支払わせることができます。
しかしその前にまずはこちら側の味方になってもらって、入居者を説得してもらいます。
緊急連絡先や身元引受人には家賃を支払わせることはできませんが、入居者を説得してもらうことはできます。
対策ポイント⑦感情的にならない
感情的になって大声で罵ったり暴言を吐いたりしてはいけません。
脅されたと後々言われないようにする必要があります。
余計な恨みは相手が悪くても買わないようにします。
対策ポイント⑧違法な行為はしない
前述のとおり、大家さんを取り巻く環境は厳しくなる一方です。
入居者はインターネットで情報を入手し何が違法行為なのかを知っているものと考えて動く必要があります。
違法行為を逆手に取られて足元をすくわれないように注意します。
損害賠償を請求すると入居者に主張されてしまっては、こちら側が訴えられる側になってしまうからです。
話し合いで解決しない場合は、法的手続きを粛々と進めていき解決を試みるしかありません。
ドアロックや鍵の交換、荷物の搬出などの自力救済行為は違法です。
絶対にしてはいけません。
訴えられれば100%大家さんが負けてしまい、さらにお金を巻き上げられます。
おわりに
- 当然ながら不動産投資において収入である家賃が入ってこなければ収益はあがらない。
- 不動産投資において予定している家賃が入ってこないケースは①空室②家賃滞納の2パターン。
- 空室と家賃滞納であれば家賃滞納のダメージは甚大で空室のほうがよっぽどマシ。
- 家賃滞納者を強制的に退去させるには時間と費用をかけて裁判をする必要がある。
- 裁判をしてやっと強制退去してもそのあとの現状回復が必要。
- 家賃滞納者を時間と費用をかけて退去させて初めて空室の状況に戻るのでそこから募集しなおしとなる。
- 極論だが無理して変な入居者を入れて家賃滞納されるよりは空室のままのほうがよほどマシと言える。