不動産投資で管理業務を委託する賃貸管理会社の業務範囲は多岐にわたり、入居者募集広告の作成から媒体への掲載、管理計画やリフォームなどについてのアドバイスまでが管理会社の役割となります。
そのなかでも一番重要視しなければいけない点は、入居者募集に関する提案力だといえます。
賃貸付けの営業力とは別で入居者募集の提案力ですから、賃貸仲介店舗を持つ管理会社でも、PM専門管理会社でも必要な要素となります。
入居者募集の提案力がない管理会社が稼働率を上げている場合、単に家賃を下げて埋めているケースが多いです。
不動産投資で空室の稼働率を上げるためには家賃を下げることも最終的には必要になる場合もありますが、家賃を下げる以外の入居者募集方法の提案力を確認しておく必要があります。
また家賃設定を管理会社任せにするのではなく、オーナー自身でも本当にその家賃設定が家賃相場に対して適正なのかをチェックする必要があります。
なぜなら不動産投資における収入のほとんどが家賃収入であり、その生命線ともいえる家賃設定を簡単に下げることは、不動産投資の収支上で一番重要な問題でもあるからです。
この記事では、不動産投資で家賃を下げて空室を埋める提案をする管理会社はダメなのと安易に家賃を下げてはいけない3つの理由をご紹介します。
不動産投資で家賃を下げずに空室を埋める募集方法2つのポイント
家賃を下げずに空室を埋めるポイント①:入居者募集広告の作成能力
今の時代空室を埋める戦略としてまずはインターネット戦略に長けていることが重要です。
賃貸管理会社の重要な仕事の一つが、募集広告を作りそれを部屋探しをしている人の目に触れるよう、あちこちの媒体に掲載することです。
- 立地が悪くない
- 賃料は適正水準
- 物件管理も行き届いている
などのような物件で空室が埋まらないとしたら、原因はインターネットなどの募集広告のマズさにある可能性があります。
最近の部屋探しでは、いきなり現地の不動産会社に出向いて、そこで物件を探すケースはほとんどなくなってきています。
まずはインターネットで多くの物件をチェックして、賃料相場を把握したうえで候補となる物件を絞り込むことが一般的になっています。
そのため、募集広告の出来栄えとともにアクセス数の多い物件紹介サイトにきちんとアップされているかが大切になります。
賃貸管理会社の候補となる会社の募集広告を下記サイトなどでよく確認すればわかります。
- Homes、Suumoなどできれいに写真が撮られているかどうか(広角レンズを使っていると部屋が広く見えます)
- 備考を含めてアピールポイントがしっかり掲載されているかどうか
- 募集図面がみやすいか
- インターネット掲載が何社くらいあるか(Homes、Suumo、自社HPは必須)
などを確認します。
家賃を下げずに空室を埋めるポイント②:空室対策の提案力
家賃を下げる以外の空室対策がどれだけ打てるかが管理会社の空室対策における提案力です。
提案力のある賃貸管理会社は、空室対策についてもいろいろな引き出しを持っています。
プレゼントキャンペーンも取り組み方次第で結果は変わります。
例えば、成約者へのプレゼントキャンペーンという方法があります。
その際もただ、『ご契約いただいたお客様に〇〇をプレゼント!』とするのではなく、費用がほぼ同額のA・B・Cの3つのプレゼントを用意し、その中からお好きなものを選んでいただくといった方法を考えてくれたりします。Aはウォシュレット、Bは照明、Cはリビングにクロスを選べるなどです。
入居者に選んでもらえるだけでなく、それをプレゼントすることで部屋の付加価値を上げることができるような設備だと、一石二鳥です。
例えば先ほどの例ならウォシュレットや浴室TVなどを設置すると、今回の入居者だけでなく次回以降の入居者にもメリットがある方法となるからです。
フリーレントを1ヵ月や2ヵ月入れるならこのように設備のアップグレードをプレゼントという形で提案すると、将来的な部屋の価値までアップできるのでとても投資対効果のある取り組みとなります。
期間限定の家賃値下げも効果的な場合があります。
期間を限定して『家賃を値下げします』というキャンペーンを打ちます。
本来なら月に6万円の家賃の物件について、『半年だけ特別に5万円でOK』などとします。
そうすると、1万円×6ヵ月=6万円なので、実質1ヵ月分の広告費やフリーレントと同額の費用となりますが、お客様にはキャンペーンとしてお得感を演出できます。
この方法が効果的なのは、期間限定であっても、安いと思わせる効果があるからです。
賃貸広告で掲載されれば反響は増える可能性が高い取り組みです。
家賃を単に下げるのではなく、提案次第では入居者にお得と思わせる効果ある提案を考えることができるということです。
このような提案の引き出しを多く持っているかを賃貸管理会社に聞いてみるときは、
『家賃6万円の部屋が半年以上空いているのですが、どのような募集提案が考えられますか?』
と聞いてみると効果的です。
この時に、いろいろなシチュエーションを通じて、提案が複数種類出てきて面白いと思える提案があるかどうかがポイントとなります。
ここで相場がどうのこうの、物件がどうのこうの、近隣がどうのこうのと家賃の金額に終始した提案の場合は、お客様に対する募集の提案力はないとみなしてもOKだといえます。
不動産投資で家賃相場より下げて空室を埋めようと焦ってはいけない3つの理由
家賃相場より下げて空室を埋めようと焦ってはいけない理由①:収益を上げるため家賃相場に合った家賃設定が必要
家賃相場をきちんと考えた募集家賃設定をしっかり考えることが大切です。
不動産投資における収益の根源である家賃の設定は本来ならばオーナーの仕事であるはずです。
それにもかかわらず、入居者募集の家賃設定を管理会社が提示する家賃設定のままにしている場合が散見されます。
もし本気で高収益化を図ろうと思うなら入居者募集の家賃設定を賃貸管理会社と一緒になって決めていく姿勢がなければなりません。
家賃相場に合った適正な家賃設定とはどのようなものなのでしょうか?
当然、入居者を決めるためには家賃相場に対して適切な家賃設定をする必要があります。
空室を埋めるための要素の中では、家賃設定が6~7割もしくはそれ以上の部分を占めているとも言われます。
どんなに広告費を払うといっても家賃相場と乖離した家賃設定では決まるものも決まらなくなります。
適切な家賃設定をするためには
- 間取りに対するターゲット
- ターゲットに対するリフォーム個所を選別
- どの家賃価格帯で入居者が決まるのか
などのリサーチと査定スキルが必要となります。
退去があった場合は、次の入居者のターゲットを明確ににした募集体制をすばやく整えることができるかどうかで、その後の空室期間に大きな差が出るのです。
家賃相場より下げて空室を埋めようと焦ってはいけない理由②:家賃設定が管理会社の言いなりになっている
大切な家賃設定をオーナーの多くは管理会社に一任しすぎています。
任せ過ぎることで不動産投資にどのようなリスクがあるのかを理解するべきです。
低めの家賃設定で空室を埋めようとするのは無策と同じです。
管理会社に家賃設定を一任すると何が危険なのでしょうか?
答えは単純で、管理会社はとても保守的に家賃を見積もる、つまり低めの家賃設定を好む傾向があるからです。
賃貸仲介店舗が決めやすい家賃で募集をかけて早く空室を埋めたいというパワーバランスが働くのです。
オーナーの収支や財務状況を把握して、オーナーの立場に沿った提案というのは残念ながらしてこないのです。
これは古くからオーナーは大きな不動産を持っていて儲かっているという前提条件で仕事をしてきており、管理会社はオーナーの収支よりも、自分達が決めやすい家賃設定を続けてきたからです。
一度家賃を下げるとどんどん募集家賃が下がっていくにには理由があります。
家賃を下げることを市場で繰り返していった結果、競争が激しいエリアでは、みんなどんどん家賃を落としてしまいます。
極端な場合は満室なのに借り入れ返済ができなくなることも冗談ではなくあるくらいです。
例えば、3LDKの市場相場の平均が7万円のエリアがあるとします。
物件は、
- 仕様のグレードが高い
- ペット可など条件を緩めている
ために平均8万円以上の家賃で満室だとします。
それを伏せて管理会社に家賃設定を相談すると、判でついたように募集家賃7万円という設定を提案されるのです。
適正な家賃設定をするためには、この物件レベルならこの家賃帯までは支払うことができるだろうというようなリサーチや分析をすることが必要です。
家賃相場より下げて空室を埋めようと焦ってはいけない理由③:管理会社の家賃設定が家賃相場に合っているとは限らない
家賃設定の判断材料とはどのようなものなのでしょうか?
オーナー自身が市場調査を行い、管理会社が提示している募集家賃が適正なのかを判断していくには、
- どのようなターゲットに
- どのような差別化を行い
- どのような条件で
- どのような営業方法で
決まるのかを分析して家賃設定をするべきです。
適正な家賃設定をするために、賃貸仲介店にヒアリングするのが一番わかりやすいです。
- 現在どのような間取りが
- どのような差別化をして
- 敷金・礼金をどのような条件にして
- 営業手法は広告費2ヵ月分なのか
などを詳しく調査した結果、適正な家賃を査定できることになります。
募集家賃を下げるということは不動産投資事業の売上が下がるということです。
家賃を下げた期間の売上は逸失利益となり永遠に取り戻すことはできません。
簡単には家賃設定を下げないことを考えるべきです。
募集家賃を下げることで物件売却価格も下がることがさらなるネックとなります。
家賃収入が下がれば、その期間の売上が下がるだけではなく、収益還元での物件評価を下げてしまいます。
家賃設定を下げた瞬間に資産が目減りするのです。
株価が数百円下がっただけでも大騒ぎする人も、家賃を数千円下げることに大きな抵抗がない場合もあります。
月々数千円でも年間数万円、長い期間で数十万円以上の損失となり収益還元評価ではときに数百万円の損失になります。
そうならないためにも、自分で考えるのを放棄せずにオーナー自ら家賃の設定くらいは調査するくらいの心構えが必要です。
そして稼働率改善と収支改善は別問題と考える必要があります。
余談ですが、空室対策を外部にお願いする場合は、単に稼働率を上げるだけではだめです。
収支を改善することをお願いしなければなりません。
- 稼働率を上げること
- 収支を改善すること
は同じではないのです。
そもそも稼働率だけをあげるのは比較的簡単で、募集家賃を落とせばほとんどの場合は解決するからです。
稼働率を上げたのにもかかわらず収支が悪化しては本末転倒な結果だと言わざるを得ません。
おわりに
- 賃貸管理会社に求められる業務能力のひとつに、入居者募集に関する提案力がある。提案力のない管理会社の場合の空室対策は単に家賃を下げていくといった、オーナーに対する提案のみに終始する傾向があり、部屋探しをしているお客様への提案という視点に欠けるものが多い。
- プレゼントキャンペーンも、部屋の設備のグレードアップを行えば、お客様のお得感の演出と、部屋のバリューアップの両方をまとめて行うことができる。
- 空室が埋まらないと相談して、家賃のことばかり提案してくる管理会社は、空室対策のアイデアを持ち合わせていない旧態依然の会社とみなしても構わない。
- 不動産投資の収入の根源である家賃設定を自分で考えずに、管理会社に任せ過ぎているオーナーが多いのが現実。
- 管理会社は保守的に家賃を見積もり、物件の収支ではなく、入居者が決まりやすい家賃設定を提案してくる。なぜなら、高い家賃で入居者が決まらなければ収入が入らない仕組みだから。
- オーナー自ら、エリアの管理会社や賃貸仲介店に市場の相場を聞いたりしてリサーチや分析を行うことがこれからは重要になる。
- 外部に任せて自分で考えなければ、募集家賃は下がる一方だと心得ることが重要で、インターネットも発達している現在は、市場リサーチも格段にしやすくなっているので、自分で面倒がらずに行うべき。