不動産投資において一棟収益の中長期的な修繕計画や修繕費用の積み立てまで考えて購入する人はほとんどいません。
購入した後も目先の修繕はその都度行いますが中長期での修繕などはどうしても先送りになってしまいがちです。
不動産の建物部分は計画的かつ定期的に修繕をしないとどんどん劣化して価値が下がってしまいます。
不動産投資のトータルでの利益を考える上で一棟収益の中長期的な修繕費用は原状回復リフォームなどに比べて多額の出費になり、万一その費用が捻出できなければ建物の老朽化が進みその後の入居率や売却時のリセールバリューに大きく影響することになります。
この記事では、収益物件購入後の10年後のキャッシュフローを左右する修繕費積立額の目安と修繕計画作成のポイントをご紹介します。
収益物件購入後の10年後のキャッシュフローを左右する修繕費積立額の目安と修繕計画作成のポイント
不動産投資の利益を左右する中長期での修繕計画作成のポイント
不動産投資において一棟収益の減価償却費が減っていき借入の元金部分の返済が増えて、キャッシュフローよりも申告所得が多くなってしまう逆転現象=『デッドクロス』が起きるのが購入後10~15年の時期です。
その結果、キャッシュフローが手元に残らないどころか税金を払うとキャッシュの持ち出しになってしまうこともあります。
追い打ちをかけるのが10~15年で設備機器などもいっせいに老朽化して修繕費の負担が大きくなる時期と重なってしまうことです。
その時期に修繕する資金がなければ建物を維持できずに家賃水準や入居率を維持することが年々難しくなっていきます。
そのため中長期にわたる計画的な修繕費の積み立てはどうしても必要になります。
いつ、どれくらいの費用が必要かを把握して、計画的に修繕費用を準備する必要があります。
きちんと修繕を行うことは出口戦略にも影響し、ひいてはその物件の投資全体の収益率を左右することになります。
利益をきちんと出し、その利益の中からきちんと再配分することが大切になります。
修繕内容・時期・費用を事前に把握する
修繕する内容、時期、費用の目安を把握しておきます。
代表的なものとして、
- 屋上防水の補修工事 12~18年ごと 8,000~12,000円/㎡
- 外壁補修工事 10~15年ごと 1,000~30,000円/㎡
- バルコニー・開放廊下の防水補修工事 10~15年ごと 6,000~8,000円/㎡
- 鉄部塗装工事 4~6年ごと 3,000~5,000円/㎡
- 給水ポンプの取り換え 12~18年ごと 150~250万円
- 給湯器の交換 10~15年ごと 8万円/台
- エアコンの交換 10~15年ごと 10万円/台
PM・管理会社から提案がある場合はその内容を精査しましょう。
大規模物件になるほど修繕費用のグロスも大きくなりますが、その分キャッシュフローも多いので規模の原理で費用の比率は下がります。
具体的な修繕費用を概算する
具体的な修繕費用を算出するためには、
- 工事業者・不動産管理会社から見積もりをとる。
- 物件を建築した当時の見積もりで再調達価格(修繕費用)を確認する。見積書に施工箇所の面積が載っていれば、必要な面積に施工単価をかけて予算を計算する。
- 自分で施工個所の面積を測り、施工単価をかけておおよその予算を求める。
修繕計画を作成する
- 修繕項目・費用・修繕の時期の目安を一覧表にまとめる。
- 時期の目安は、たとえば12~18年ごとであれば、15年ごとに計上していくという要領で。
- 過去の修繕履歴と照合して時期の目安を立てる。
- 毎年の積立額を計算する。たとえば、10年後にかかる修繕費用の総額を10年で割れば単年度の積立額をだすことができる。
ちなみに修繕費の積立額は通常の修繕費用と違って実際に支出していないので経費として計上することはできません。
このように、概算で修繕計画を具体的に作成し修繕費の積み立てを行っておけば、不意な支出で資金ショートすることなく、安定的な不動産投資運営を行うことができます。
おわりに
- 収益物件の長期的な修繕にかかわる費用は、原状回復リフォームに比べて大きな出費になり、万一その費用が捻出できなければ建物の老朽化が早まり、入居率や家賃水準の維持に大きく影響してしまいまう。
- 中長期の修繕内容・時期・費用を把握して修繕計画を立て、支出が見込まれる費用は毎年積み立てていくことで、万一の出費でも資金ショートを防ぐことができる。