不動産投資で収益物件の購入の際の売買契約時に支払う『手付金』について、間違った認識で覚えているといざというとき大変危険です。
手付金には3つの種類
- 解約手付
- 違約手付
- 証約手付
があり、その限度額もあります。
また、手付を放棄して契約解除する際にもいつでも解約できるわけではなく手付解除のルールもあります。
間違った認識のままだと、思っているとおりに進まなくなるリスクがありますので、『手付金』に対してのきちんとした認識を持っておくことは不動産売買を行う上でとても大切です。
この記事では、不動産投資で収益物件購入時の手付金の種類・手付金の限度額・手付解除の重要ポイントをご紹介します。
物件購入時の不動産売買契約での手付金の3つの種類
手付金には3つの種類があります。
①解約手付
売買契約を解除することができる手付のことを解約手付といいます。
手付金の扱いは、買主が解除した場合と売主が解除した場合とで、その扱いが異なります。
買主が購入を辞退するために解除する場合は、既に支払った手付金を放棄することで売買契約を解除することができます。
売主が売却をとりやめたい場合は、手付金として受け取った金額の倍額を買主に返還することで売買契約を解除することができます。
②違約手付
売主、買主のいずれかに売買にあたって違法行為(代金を支払わないなど)があった場合、そのペナルティとして受け取ることができる性質を持つ手付金のことを言います。
また、違約手付とは別に損害賠償請求することも可能です。
③証約手当
契約が締結したことを証明する目的で交付する手付金のことをいいます。
収益物件の取引の場合に、手付金とは通常は解約手付を指しています。
そのため、他の手付金ではないことは一応確認しておくとよいでしょう。
物件購入時の不動産売買契約での手付金の限度額について
宅建業者が売主となる売買においては、宅建業法上買主から受領できる手付金の金額に、売買価格の20%の制限がかかります。
そのため、1億円の収益物件であれば、2,000万円までしか手付金を受け取ることができません。
なお、この際の手付金は、『解約手付』としなければなりません。
これに対し、個人が売主となっている売買契約の場合は、この手付金に関する制限はありません。
収益物件の売買契約において、1億円程度の収益物件を購入する際に求められる手付金の金額は概ね500~1,000万円程度とするのが主流です。
実務上は個別の取引に応じて、手付金の金額を細かく設定するということはあまりやりません。
それは、解約手付の場合、手付金を支払う買主も受け取る売主も、手付金の金額が大きくなりすぎると、万が一の場合のリスクも大きくなるからです。
ただ、あまりにも手付金が少ないと、買主、売主双方から簡単に手付解除しやすくなるので、通常の範囲内でできるだけ多くという感じになります。
買主として確実に物件を手に入れるためにも、手付金はできるだけ多く入れておいた方が安全と言えば安全です。
なぜなら、売主が手付解除する場合は、現契約よりも好条件の買主が現れていることが多いからです。
1億円で契約したあとに1億1,000万円で買いたいと言うオファーがあったら、もし手付金が200万円ならば、手付解除して1億1,000万円の買主と契約したくなるのが人情です。
その他に、手付金の授受を行わず、解約手付を認めないケースもあります。
これはやや高度な使い方ですが、手付解除を認めず契約不履行時に違約金がかかるようにする場合もあります。
これは、契約を確実に履行させたい場合などに使います。
物件購入時の不動産売買契約での手付解除時の注意点
仮によい収益物件を見つけて、他の人にとられてはならないと思い、即決して売買契約を締結し、手付金100万円を売主に交付したとします。
その後、冷静になったら、やっぱり利回りが思ったよりも低そうだということに気づき、売買契約を解除したいとします。
この場合は、すでに支払った100万円を放棄することで、売買契約を無条件に解除することができます。
すなわち、売主に対してキャンセルに至った理由を細かく説明して納得してもらう必要もなく、手付金の100万円さえ放棄すれば、それでことがおさまるというのが、手付解除の特徴です。
反対に、100万円の手付金を交付した後に、売主の気が変わってやっぱり売りたくないと言ってきた場合は、100万円の倍額の200万円を売主から返してもらうことになります。
ドタキャンされて頭にくるかもしれませんが、100万円が倍の200万円になって戻ってこれば、よほどのことがない限り買主も文句は言わないでしょう。
ただし、手付解除は、
『当事者の一方が契約の履行に着手するまで』
が期限となり、それ以降は、手付放棄や手付倍返しによる無条件解除はできなくなります。
『契約の履行の着手』とは、
- 物件の引き渡し
- 所有権移転登記
などがこれに当たるとされています。
仮に売主がこれらに着手したあとに手付金を放棄するといっても、それでは手付解除は認められないことになります。
実務上は、手付解除が行われる場合においては、『履行の着手』の要件をめぐってトラブルとなることが多々あります。
つまり、どこからが『履行の着手』と言えるのかが当事者同士で意見が食い違い、最終的に裁判所の判断を仰ぐというケースが散見されます。
目安としては、今から解除してもすでに引き返せない状況に向かっている場合などは『履行の着手』となり、手付解除が成立しない可能性が高いと考えます。
例えば、
- 買主が購入する前提で売主がリフォームした
- 買主が購入する前提で売主が取り壊し工事に着手した
などの場合には、原則的に手付解除は成立しないことになります。
おわりに
- 収益物件の取引時の手付金は、一般的に解約手付を指す。
- 手付解除時に問題になるのは、契約の履行のタイミング。トラブルを防ぐためには、契約時に決済前のリフォームや解体工事などを盛り込み過ぎないほうが安全といえる。
- 手付解除時の『契約の履行』は当事者間でも意見が分かれるものなので、手付金を放棄すればいつでも無条件に契約解除できるという認識は危険である。