不動産投資でのレバレッジの安全性を計るものさしをご存知でしょうか?
投資はリターンが大きければリスクも大きくなります。
逆に必要以上に安全にいきすぎると、リスクは小さくなりますがリターンも小さくなってしまいます。
リスクが大きくなり過ぎないところで適度にレバレッジをかけて投資リターンを最適化したいものです。
そこで押さえておきたいのが、レバレッジの安全性を知るということです。
この不動産投資指標をDCR(負債支払安全率・デッドカバーレシオ)といい、レバレッジの安全性を数値化することができ比較検討に役立ちます。
この記事では、不動産投資のレバレッジの安全度を知るためのDCR(負債支払安全率)分析法をご紹介します。
不動産投資指標DCR(負債支払安全率)の算出方法
DCRとは投資のレバレッジの安全性すなわちローンの返済余力を表します。
DCRは以下の式で求められます。
◎投資物件のレバレッジの安全性DCR(負債支払安全率)=NOI(NET収入)/ADS(年間返済額)
下記条件の物件購入時の資金計画・投資分析シミュレーションで見ていきましょう。
- 物件価格:9500万円
- 諸費用:650万円
- 購入総額:1億150万円
- 自己資金:1260万円
- ローン借入金額:8890万円
引き直し賃料(月額) | |
---|---|
引き直し賃料 | ¥720,000 |
▲空室損5% | ¥36,000 |
収入合計 | ¥684,000 |
支出の部(月額) | |
BM管理費 | ¥10,000 |
共用部光熱費 | ¥5,000 |
固定資産税・都市計画税 | ¥31,683 |
賃貸管理料 | ¥50,274 |
CATV | ¥6,300 |
支出合計 | ¥103,257 |
収支(年額) | |
GPI | ¥8,208,000 |
▲OPEX | ¥1,239,088 |
NOI | ¥6,968,912 |
▲ADS | ¥5,405,319 |
CF | ¥1,563,593 |
投資分析 | |
LTV | 93.58% |
CCR | 12.41% |
FCR | 6.87% |
表面利回り | 9.09% |
K% | 6.08% |
レバレッジ | + |
BE% | 76.90% |
最低稼働戸数 | 9.23戸 |
DCR | 1.29 |
PB | 8.06年 |
必要資金/資金調達対照表 | |
---|---|
必要資金 | 資金調達 |
諸費用:650万円 | 自己資金 1,260万円 |
物件金額:9,500万円 (購入総額:1億150万円) FCR=6.87% |
|
借入金額:8,890万円 (LTV=93.58%) 金利:4.5% 期間:30年 K%=6.08% ADS=540.5万円 CF=156.3万円 |
上記の事例でみると、NOI(NET収入)は696.8万円です。
ADS(年間借入返済額)が540.5万円なので、696.8万円の中から540.5万円を支払って返済する計算になります。
その残りがCF(キャッシュフロー)の156.3万円となります。
DCR(負債支払安全率)はこのNOIがADSの何倍あるかをみています。
簡単に言えば、NOIがADSよりも大きくその差が大きければ大きいほどその不動産投資は安全とも考えることができるからです。
将来的に、
- 金利が上がる
- OPEX(運営費)が上昇する
- 空室率が上がる
- 家賃が下がる
などが起こった際に持ちこたえられる余力があるかどうかという観点からみることができます。
この事例でのDCRの計算は下記となります。
◎DCR=NOI/ADS=696.8万円/540.5万円=1.29
不動産投資指標DCR(負債支払安全率)の考え方
この事例では、DCRが1.29ですのでADS(年間返済額)540.5万円が1.29倍に上がっても持ちこたえられる余力があるということになります。
そのラインまではCF(キャッシュフロー)が赤字にならないということです。
たとえば、NOI(NET収入)である営業純利益が100万円そのうちADS(年間返済額)が100万円だとします。
この場合、
DCR(負債支払安全率)=1.0
CF=0
となります。
- 金利が上がる
- OPEX(運営費)が上昇する
- 空室率が上がる
- 家賃が下がる
などで、瞬時に持ち出しになってしまう可能性が極めて高いということを示しています。
それでは、NOIが130万円入ってきて、ADSで100万円出ていくとすると、
DCR=1.30
CF=30万円
となり、30万円分の返済余力がある収益物件ということになります。
やはり、できるだけこの差を設けておいた方が安心だと思います。
DCRは1.30前後を確保しておくことで多少の変動は吸収でき、すぐにCFがマイナスになる心配をせずにすみます。
では、この事例でフルローンのケースを投資の安全性から考えてみましょう。
必要資金/資金調達対照表 | |
---|---|
必要資金 | 資金調達 |
諸費用:650万円 | 自己資金:650万円 |
物件金額:9,500万円 (購入総額:1億150万円) FCR=6.87% |
借入金額:9,500万円 (LTV=100.00%) 金利:4.5% 期間:30年 K%=6.08% ADS=577.6万円 CF=119.2万円 |
この場合、
CCR(自己資本配当比率)=CF/自己資金=18.33%
となり、かなり魅力的となります。
しかし、
DCR(負債支払安全率)=NOI/ADS=1.20
となり、1.30を大きく割り込んでいるため、投資の安全性は少し低くなってしまいます。
安全性を高めるためには、
- 自己資金を増やす
- 価格交渉で物件価格を下げる
などの選択肢が考えられます。
- 不動産投資効率であるCCR(自己資本配当比率)
- 不動産投資の安全性であるDCR(負債支払安全率)
は相反することがご理解いただけると思います。
効率(CCR)も大切ですが、その投資の安全性を見るDCRが確保できていればこその効率(CCR)とも言えますので、両者のバランスを探りながら不動産投資の最適化を狙っていくことで、比較的安全に高収益率を狙うことができるようになります。
おわりに
- 投資で大きなリターンを狙えばリスクも大きくなる。投資物件のレバレッジの安全性がどれくらいの水準であるかの不動産投資指標DCR(負債安全比率)を活用することで、リスクをとりながら、投資効率を最適化することができる。
- 不動産投資指標DCR(負債安全比率)はNOI/ADSで算出でき、NOIがADSの何倍あるかを示している。DCR=1.0でNOI=ADSとなり、純利益がすべて返済の支払いに回ることになる。
- 不動産投資効率の指標であるCCRと、投資の安全性の指標であるDCRは相反することになる。CCRを高めていけばDCRが下がり、効率は良いが安全性が下がる。CCRを低くすればDCRが上がり、投資の安全性は高まるが投資効率が下がることになる。
- 効率(CCR)も大切だが、その投資の安全性を見るDCRが確保できていればこその効率(CCR)とも言える。両者のバランスを探りながら、投資の全体最適化を狙っていくことで、比較的安全に高収益率を狙うことができる。