管理委託契約で収益不動産を管理してもらう管理会社を適当に選んではいないでしょうか?
不動産投資の規模を拡大していくと必ずお世話になるのが賃貸管理会社です。
その賃貸管理会社にも様々なタイプがあります。
不動産投資で収益物件の管理を委託する不動産管理会社は、
- 不動産賃貸仲介を行う管理会社
- 不動産賃貸仲介を行わない管理専門の管理会社
に大きく分かれます。
多くの不動産投資家が管理委託しているのが、前者の不動産賃貸仲介を行う管理会社になります。
管理委託する際には、不動産賃貸仲介を行う管理会社の特徴を把握して選定するようにします。
この記事では、不動産投資でエイブルやアパマンなど賃貸客付けの営業力が強い管理会社の特徴と使うメリットと活用法をご紹介します。
不動産投資でエイブルやアパマンなど賃貸客付けの営業力が強い管理会社の特徴と使うメリットと活用法
不動産賃貸仲介を行う管理会社の特徴
自社の不動産賃貸仲介店舗網を持つ
不動産賃貸仲介を行う管理会社は、賃貸付けのための不動産賃貸仲介店舗網を持ちながら管理会社を運営している会社のことを指します。
いわゆる大手の賃貸仲介会社である、
- エイブル
- ミニミニ
- アパマンショップ
などをイメージすると分かりやすいと思います。
TVコマーシャルなども頻繁に放送されており、部屋を探そうと思うと、真っ先に思い浮かべる不動産賃貸会社ではないでしょうか。
不動産賃貸仲介を行う管理会社の賃貸付けの優先度について
不動産賃貸仲介を行う管理会社は当然自社の利益を最優先する
不動産賃貸仲介を行う管理会社としては、自社の利益が最大化するように賃貸付けを行おうとします。
この部分をきちんと把握しておかないと、空室対策などの改善がうまくいかないことになります。
例として、
- 家賃5万円
- 仲介手数料1ヵ月
- 広告手数料1ヵ月
- 管理料5%
- 入居期間3年
の場合のシミュレーションをします。
最優先:自社管理の物件を自社付けする
- 仲介手数料1ヵ月:5万円
- 広告手数料1ヵ月:5万円
- 管理料:5万円×5%×36ヵ月=9万円
この場合の売上は合計19万円となります。
このケースが、自社での利益が最大化するので、必然的に自社管理物件を最優先することになります。
2番目:自主管理大家もしくは専門管理会社の物件を自社付けする
- 仲介手数料0.5ヵ月もしくは1ヵ月:2.5万円~5万円
- 広告手数料1ヵ月:5万円
この場合の売上は合計7.5万円~10万円となります。
このケースでも仲介手数料が0.5ヵ月分になる場合は1ヵ月の物件よりも賃貸付けの優先度が落ちます。
3番目:他の不動産賃貸仲介を行う管理会社の管理物件に自社付けする
- 仲介手数料0.5ヵ月もしくは1ヵ月:2.5万円~5万円
- 広告手数料1ヵ月:5万円
この場合の売上は合計7.5万円~10万円となります。
このケースでも仲介手数料が0.5ヵ月分になる場合は1ヵ月の物件よりも賃貸付けの優先度が落ちます。
売上合計が同じでも3番目のケースはほとんどやりません。
なぜだかお分かりでしょうか?
なぜ他の不動産賃貸仲介を行う管理会社の管理物件に賃貸付けしないかというと、簡単にいうとライバル企業だからです。
- 好きこのんでライバル企業の管理物件の稼働率を上げようという気が起こらない
- 明確に競合会社の管理物件に賃貸付けしないように、会社としてお達しが出ている
などのケースが考えられるからです。
不動産賃貸仲介を行う管理会社は募集間口が狭い
不動産賃貸仲介を行う管理会社の賃貸付け優先度によって起こること
不動産賃貸仲介を行う管理会社の行動原理は、上記の優先度になるため、どのようなことが起こるか整理すると、下記の3つになります。
- 自社管理の物件は自社の仲介店舗のみで強力に賃貸募集する
- 他の賃貸付け併設型管理会社の仲介店舗では紹介されない
- 賃貸仲介専門の会社では紹介されるが、東京以外では囲い込まれていて非常に少ない状態
この現象が最も重要ですので、頭に入れて忘れないようにしておきます。
つまり、不動産賃貸仲介を行う管理会社では、賃貸募集の窓口が自社の賃貸仲介店舗メインとなり、協力してくれる賃貸仲介店舗は非常に少ないことになります。
このことからも、自社の賃貸仲介店舗が賃貸付けに圧倒的に強ければ、空室はどんどん埋まっていきますが、賃貸付けに弱いと他からの賃貸付けを排除しているだけに苦戦しやすくなるということです。
不動産賃貸仲介を行う管理会社の利益相反という問題点
利益相反するビジネスモデル
不動産賃貸仲介を行う管理会社の問題点とは賃貸付けの優先度だけではありません。
不動産賃貸仲介を行う管理会社は、本質的には利益相反する業務を同時に行っていることが問題になります。
どういうことかというと、
- 不動産賃貸仲介店舗は、借り手の利益のために、魅力ある部屋(家賃・グレード・条件の良い部屋など)を探す。
- 管理会社は貸し手である大家の利益のために、不良入居者を入れずに家賃を最大化する。
したがって、借り手の利益と貸し手の利益を同時に実現させようとしているところに無理があるといえます。
ビジネスでこういった利益相反するケースは稀です。
不動産業界は、不動産売買仲介でも買い手と売り手の両方に仲介する両手取引という慣習が、ことあるごとに物議をかもしていますが、一般的なビジネスとは違う、昔からそうやってきている傍から見ると特殊な世界であるといえます。
戦後の住宅が不足している時代は、借りさせてくださいという、貸し手が圧倒的に強い有利な状態でした。
そのため、入居者の利益よりも大家の利益を最大化しても、お互いに問題が起こらない仕組みであったといえます。
ところが、供給が増えてきて借りてが優位な時代となると、そうもいかなくなってきました。
今では、大家の利益よりも入居者の利益の最大化が最優先されるため、大家側としては、フリーレントや家賃の交渉、エアコンをつけてほしいなどの要望に対応せざるを得ない状況になってきています。
本来の姿であれば、管理会社は大家と契約しているのですから、大家の利益の最大化のために、入居者審査を厳しくしたり、無茶な賃貸仲介店舗の要求には応えずに、賃貸付けするように動かすことが必要ですが、今や入居者の要望を聞き入れて交渉するのが現状となりつつあります。
管理と営業のパワーバランス
管理と営業というのは、どこの世界でも同じですが、営業の方が強い傾向があります。
売上が上がり会社の利益になるのだから何とか利益が上がるようにしろという論理です。
管理しかしていなければ、街の賃貸仲介会社が無理を言ってきても、それならこちらでは受けられませんと跳ね返すことはできます。
しかし、利益が相反しているとはいえ、同じ会社なのです。
そのため、賃貸仲介店舗で申し込みが入ると、管理会社側としてはなかなか断りづらく、甘い審査になりがちです。
断ることで会社の利益が減るからです。
そしてリスクは管理会社の顧客であるはずの大家が最終的に負担させられていることになります。もしその入居者が家賃滞納しても、痛むのは大家の財布ということです。
家賃の交渉にしても、1万円の家賃減額があったとしても、管理料としては5%なので月々にすると500円しか管理会社の売上は下がりません。
そのため、営業会社としては当然ながら、目先の売上(仲介手数料・広告手数料)を優先してしまう傾向があります。
不動産賃貸仲介を行う管理会社に対してどのような姿勢が必要か
不動産賃貸仲介を行う管理会社の言いなりにならない
結論からいうと、大家側にも知識・スキル・行動が必要となります。
大家にも不動産投資の勉強や戦略上必要な情報収集が今まで以上に必要になってきているということです。
下記は一例ですが、大家側に不動産投資判断できる情報を持っておく必要があります。
- 競合物件の情報を把握し、フリーレントや家賃の値下げの幅について、事前に収支計算上でどのラインまで許容できるのかを把握しておく。
- 賃貸仲介店舗からは設備の新設・更新についてリクエストがあるが、どこを優先していけば空室が埋まりやすいかを、自分なりにマーケット情報を掴んでおき、投資対効果を見積もることができるようにしておく。
- 空室が3ヵ月以上になるようであれば、他の賃貸付け店舗を持つ管理会社の賃貸仲介店舗にも訪問し、賃貸付けを行うことができるようにしておく。(事前に管理委託している賃貸付け店舗を持つ管理会社に説明しておく必要はある)
など、ひとつひとつ情報収集して行動していくことが今後の大家には求められてくると考えられます。
おわりに
- 大手の不動産賃貸仲介を行う管理会社は、自社管理物件最優先かつ賃貸募集窓口が狭いという特徴がある。
- しかし、上記大手管理会社の自社管理物件の稼働率は90%以上あるところが多いのも事実である。
- 賃貸募集窓口は狭いが、稼働率が高い現状では、選択肢としては十分に有り得る賃貸管理会社だといえる。
- 不動産賃貸仲介を行う管理会社では、賃貸仲介店舗と賃貸管理会社という利益相反する本質的な問題を抱えているということを把握しておく。
- 不動産賃貸仲介を行う管理会社では賃貸仲介の方が短期的な売上が立つため、賃貸営業側の主張が通りやすく、大家
- の味方であるはずの管理会社の判断が会社全体の利益を考えると甘くなってしまいがちになる。
- 対抗するためにも大家側でも勉強を行い情報収集をおこなって、言いなりにならないためのスキルを上げていく必要がある。
- 時代は変わりつつあるが、なんだかんだ言っても規模の力が大きく、まだまだ不動産賃貸仲介を行う管理会社の影響力は強いので、管理委託する機会は増えると考えられる。