不動産投資において空室は空気に貸しているだけで賃料収入は1円も生み出しません。
そして空室期間に取り損ねた賃料は未来永劫リカバリーは不可能です。
空室は人口減少社会の日本の不動産投資においても最大のリスクだといえるでしょう。
そこで増え続ける生活保護受給者の入居を受け入れるかどうかに頭を悩ませることになります。
空室は埋めたいが生活保護受給者の受け入れはぶっちゃけどうなのか?
日本の人口は減少しても生活保護世帯の数は増加傾向にあります。
生活保護世帯を賃貸の入居者として考えた場合でも無視できないほどのボリュームとなってきています。
不動産投資において生活保護世帯を入居させる際に何に気を付ければいいのでしょうか?
現在、
- 精神的・身体的な病気で働けなくなった
- 高齢のため働けなくなった
- 離婚により一人親になった
などの理由で多くの人が生活保護を受けています。
厚生労働省によれば生活保護受給者数は平成29年2月現在で214万1881人となっています。
世界金融危機以降急増し多少の増減はありますが近年はほぼ横ばいで推移しています。
年齢別では65歳以上の被保護人員の増加率は大きくなっています。
被保護人員の全体の45.5%は65歳以上となっています。
今後高齢化が進むにつれ生活保護受給世帯も増加することが予想されています。
この記事では、不動産投資で生活保護世帯や生活保護受給者の入居を受け入れる際に注意しないと損してしまうポイントについてご紹介します。
不動産投資の空室対策で生活保護世帯や生活保護受給者の入居者を受け入れる前に生活保護受給者の住宅扶助額を知っておく
住宅の扶助は、生活保護受給者がいくらの物件に入居できるかを分析する上で重要な事項です。
生活保護受給者の住宅扶助の金額がいくらかが最大のポイントとなってきます。
生活保護受給世帯に認定されると、定められた額の範囲で家賃分の金額を住宅扶助として支給されます。
たとえば東京都や大阪市では、
東京都23区
- 一人世帯:40,900円〜53,700円
- 二人世帯:49,000円〜64,000円
- 三人世帯:53,200円〜69,800円
大阪市
- 一人世帯…40,000円
- 二人世帯…48,000円
- 三人世帯…52,000円
という住宅扶助の金額となっています。
母子家庭や障害者、病気などで特定の病院の近くに住む必要がある場合は特別額を加算される場合があります。
注意点としては住宅扶助で実費支給されるのは家賃のみです。
なので住宅扶助では共益費や水道費などは対象とならないので注意が必要です。
たとえば住宅扶助費最高40,000円の地域で家賃38,000円・共益費2,000円だとすると受給できるのは38,000円だけとなりますので注意が必要です。
住宅の扶助の金額が地域によって異なるのは級地制度があるためです。
厚生労働省は生活保護の基準に地域差を設けているのです。
級地制度で示される値は、各地域おける生活様式や物価差等による生活水準の差を踏まえたものとされています。
また級地制度は生活保護の受給額を決めるのに使います。
一般的に都市部より地方のほうが低い金額となります。
現行の級地は、1級地1から3級地2までの6区分あり
- 1級地1:100.0(東京23区、横浜市、大阪市など58市町村・3.4%)
- 1級地2:95.7(札幌市、千葉市、福岡市など49市町・2.9%)
- 2級地1:90.4 (秋田市、静岡市、高知市など121市町村・7.0%)
- 2級地2:88.3(長岡市、三島市、佐世保市など79市町村・4.6%)
- 3級地1:84.4(弘前市、福知山市、今治市など557市町村・32.4%)
- 3級地2:80.8(結城市、篠山市、宇和島市など855市町村・49.7%)
となっています。
空室のままにしておくよりは生活保護受給者の入居受け入れを検討する不動産投資家も増えている
人口減少や賃貸住宅の供給過剰で全国的に空室率が高まる中、空室対策として不動産投資家の間でも検討されているのが生活保護受給者の受け入れです。
生活保護受給者には自治体が賃料を支給し、場合によっては行政が家賃を自動入金してくれます。
生活保護受給者で空室を埋めるメリット①:生活保護世帯は滞納リスクが低く相場より高い賃料が得られるケースもある
会計検査院は生活保護の実施状況に関する報告書を公表しました。
調査対象の1778棟のうち、生活保護受給世帯が一般入居世帯より高額の賃料で契約している疑いのある物件が112棟見つかりました。
つまり同じスペックの部屋なのに一般入居世帯と生活保護受給世帯で異なる賃料となっているのです。
一般市場では賃料相場が下がっているエリアで、敷金・礼金を取るのは難しくなっています。
一般入居者で低所得世帯の場合は敷金や礼金が含まれていると支払いが難しくなり入居を諦めざるを得なくなりますので家賃交渉が行われます。
不動産投資家としては、空室率が高ければ何としてでも入居してもらいたいのが本音です。
なので多少の痛手は覚悟しフリーレントや礼金ゼロなどの値引きを承諾します。
その一方で生活保護受給者が入居する際の初期費用の大半は行政が支払ってくれます。
毎月の家賃も行政が補助してくれるので確実に入金があります。
行政は賃貸住宅の相場には無関心なことがほとんどです。
賃料を住宅扶助の上限いっぱいまで上げ、敷金・礼金をゼロから敷金1・礼金2に変更したという事例もあるくらいなのです。
生活保護受給者で空室を埋めるメリット②:生活保護世帯は退去せずにずっと住み続けてくれる
生活保護受給者のもう1つの受け入れメリットは、いったん入居するとずっと住み続けてくれるということです。
一般的に生活保護のイメージは良いものではなく、受け入れる賃貸アパートや賃貸マンションは限られています。
本人たちは追い出されれば次に住むアパートがなかなか見つからないのを承知していますので協力的に生活し長く住もうとします。
住まいが嫌になって退去するときは基本的に自己負担になります。
次のアパートに住むための初期費用や引っ越し代などのまとまったお金は持ち合わせていないでしょうし使いたくないというのが本音です。
なので生活保護受給者は不動産投資家にとってもありがたい入居者でもあるのです。
不動産投資の空室対策で生活保護受給者受け入れのリスク
上記のように生活保護受給者のメリットは多いのですが、不動産投資家としては生活保護受給者を受け入れるリスクも把握しておかなくてはなりません。
生活保護受給者なのに車に乗っていたり身なりが必要以上に整っている場合などは生活保護の不正受給を受けている可能性があるので注意が必要です。
こういう人は途中で生活保護の受給を打ち切られてしまいそこから家賃が入ってこないリスクが考えられるからです。
また若い受給者は精神障害が受給の要件になっている可能性があります。
生活保護受給者に限ったことではないですが、入居者に精神障害がある場合、
- 近隣住民とのトラブルの可能性
- 自殺による物件価値の下落の可能性
がリスクとして考えられます。
精神疾患系の生活保護受給者の入居は、特に受け入れ可能物件が少ないので逆に考えるとメリットもあります。
仲介会社や管理会社と協力して直接面談をするなどし、入居者がどんな人なのかを事前にできるだけ把握することでデメリットよりもメリットが大きければ受け入れを検討しても大丈夫だといえます。
つまり生活保護受給者を積極的に受け入れるにはオーナーの目利きで入居者を見極めることが成功のポイントとなるのです。
おわりに
- 日本の人口は減っているが生活保護受給世帯は増えていく傾向にある。
- 不動産投資家としては増え続ける生活保護受給者を入居者として受け入れるかどうかに頭を悩ませるところ。
- 不動産投資においての最大のリスクは空室リスクであり生活保護受給者であれば賃料の値引き交渉もなく滞納もない上に敷金礼金が取れるというメリットがある。
- 生活保護受給者のデメリットとしては不正受給者だった場合に突然生活保護の支給が打ち切られるとそこから滞納する場合がある。
- また若い世代の場合は生活保護受給の要件である働けない理由が精神疾患になっていることが多く入居者同士のトラブルや最悪自殺のリスクも考えられる。