貸主として賃貸募集の際の条件を管理会社に言われて何となく決めてしまってはいないでしょうか?
賃貸の市場環境は刻一刻と変化しておりその変化のスピードも年々上がってきています。
変化に対応し続けてていくことが不動産投資で収益をあげていく重要な要因となります。
- 以前までの賃貸募集条件では空室が埋まらない
- 入居希望者を案内しても決まらない
という場合は周辺の競合物件に賃貸募集の条件面で劣っている可能性も考えられます。
現状の賃貸募集の条件を客観的に見て、周りのライバル物件に比べて魅力的になっているかどうかを貸主自身が定期的にチェックすることは、今後ますます必要になると考えられます。
当然、ライバル物件と比較して賃貸の条件を緩和すると空室が決まりやすくなる場合が多いです。
この記事では、効果的な賃貸募集条件【敷金・礼金・更新料・初期費用・フリーレント】設定法まとめをご紹介します。
空室が埋まる賃貸募集条件の決め方①:礼金・敷金・更新料の設定
最近は礼金・敷金をゼロゼロとする物件が増えてきていますので、対抗するためには、賃貸の条件として礼金・敷金をゼロにしてみると効果が出やすいといえます。
更新料も高い地域だと家賃1ヵ月や家賃0.5ヵ月分と設定していると思いますが、収入が低い層だと更新時期の負担が重たくなります。
更新料は取る場合でも1~2万円程度にしておきなるべくなら自動更新にしておくと最近では良い結果が出やすいようです。
自動更新だと心配だと言われる貸主がいますが、地域によっては自動更新が普通という場所もあるので怖がる必要はないといえます。
保証会社を入れてあれば保証会社の更新のタイミングでは連絡を取り合うことになるので状況の確認はできることになります。
空室が埋まる賃貸募集条件の決め方②:初期費用の設定
礼金・敷金だけでなく、仲介手数料や保証会社への保証料等を貸主側の負担で払ってあげるのはとても効果のある取り組みです。
昔ながらの貸主にとっては売り手市場だった時代からするとびっくり仰天なのですが、今や時代は買い手市場となっています。
お金に余裕がない低所得層では貯金が少ないため、定期的な収入から家賃を払うことはできても初期費用と引っ越し費用の負担が重たくなります。
初期費用を貸主が負担しても、1ヵ月~2ヵ月早く決まるなら投資対効果が出てきます。
貸主の中には引っ越し費用まで負担するケースも出てきており、2年契約であればキャッシュバックポイント有りのような大手携帯電話会社の価格戦略のようなサービスを提供して入居者を獲得している場合もあります。
それだけ入居者獲得競争は激化してきており、今後は既存入居者をどのように奪うかまで踏み込んだ募集戦略が必要になる時代が来るかもしれません。
②-1:賃貸の条件を初期費用ゼロにする際に気を付けるポイント
賃貸の条件で初期費用ゼロの場合は確実に保証会社に加入させたほうがいいといえます。
初期費用がまったく準備できていないで引っ越しをする人は、かなり属性が悪いレベルとなり昔であれば入居できなかった層です。
保証会社必須にて保険をかけておく必要があります。
空室が埋まる賃貸募集条件の決め方③:フリーレント期間の設定
初期費用が重い入居希望者には、家賃の1ヵ月分を無料にするなどのフリーレントプランを使うと効果的です。
今では当たり前のように入居希望者からフリーレントを要望される時代になってきています。
空室が埋まる賃貸募集条件の決め方④:生活保護・高齢者・外国人などにも募集間口を広げる
まだまだ生活保護者や高齢者、外国人などの受け入れを拒む貸主が多いことは事実です。
現在の日本を見ていて、
- 低所得層である生活保護者は増え続けている
- 高齢化社会で高齢者はうなぎのぼりで増えていく
という環境の中で、これらをまったく受け入れないというのは、かなりの割合で入居者を限定してしまっていることとなり賃貸募集にとっては不利です。
まだまだ生活保護者・高齢者・外国人を積極的に受け入れる貸主は少ないので賃貸募集店も喜んで紹介してくれることになります。
リスクとしては滞納リスクがありますが、保証会社を入れることでリスク回避すればそれほど怖がることではありません。
リスクの中で一番怖いのは、高齢者が家の中で亡くなられることです。
さすがに70歳を超えてきた場合には、保証人の方に定期的に来てもらって無事を確認してもらったりなどを約束してもらうとベターです。
家の中で病死や自然死も保険に入っておくことで回避したり、特殊清掃会社を事前に選んでおくなど対策はいくらでも取れるようになっています。
空室が埋まる賃貸募集条件の決め方⑤:ペット飼育可・音楽可などの設定
- ペットを飼いたい方
- 音楽をやりたい方
の入居者もかなりの数がいると考えられます。
ペットは犬・猫が主流ですが、猫を飼えるという物件はまだ少ないので猫を狙うという手もあります。
ただし猫は退去時の原状回復トラブルが多いので注意が必要です。
その場合は敷金を30万円程度など高額に設定しておくと安心です。
ペット可や音楽可とする物件は少ないので家賃の下落が少ないこともメリットです。
注意点としては、ペット不可で入居している既存入居者がペット可になったことで退去につながるケースが考えられます。
家賃を下げて戦略的な家賃設定にして空室をてっとり早く埋める方法もある
家賃できるだけ下げないに越したことはありません。
家賃を下げるのは貸主としてはやりたくないことです。
ただ、空室理由の調査や募集条件を工夫しても空室が埋まらない場合は、そもそもの家賃の価格設定に無理がある場合も少なからずあるのが事実です。
家賃を下げることは不動産投資の売上を下げることなので、できるだけ損失が少なくなるように考えて行いたいところです。
空室を埋めるための家賃の見直しの考え方
- 空室が埋まらない理由を調査して対策を行う
- 募集条件を工夫して募集間口を広げる
などを行っても空室が埋まらない場合は、家賃が入居希望者の目線よりも高いということになります。
つまり、もはや家賃を下げないと決まらない物件になっているということです。
何ヵ月も空室のままで募集を続けるよりは、適正家賃にして数カ月以内に部屋を埋めたほうがベターです。
空室を埋めるために家賃を下げる考え方の例
家賃5万円の部屋で3年間の収益を例にします。
単純化するために広告費は省き、家賃のみの収益で見ます。
- 1年間空室の後に決まった場合
・・・5万円×(36ヵ月-12ヵ月分の空室)=120万円 - 家賃を5千円下げて2ヵ月後に決まった場合
・・・4.5万円×(36ヵ月-2ヵ月分の空室)=153万円
となり、家賃を5千円下げても、
153万円-120万円=33万円
の収益のプラスが期待できることになります。
あくまで計算例でありどのくらい空室期間が続くのかを考慮しないといけませんが、家賃を下げてでも決まったほうが機会損失がなく収益にプラスが出る場合が多いです。
収益の根幹をなす家賃の見直しをしたくないのは重々わかりますが、適正家賃もしくはそれより下げていかないと最近では決まりにくくなっているというのが実態でもあります。
空室を埋めるのに効果的な家賃の下げ方
適正家賃を賃貸業者に確認し、適正家賃より2千円~3千円の幅で下げると反応が非常に良くなることが多いようです。
その場合の方法として、下記2点が有効です。
- 家賃のみ下げる
・・・共益費を取っている物件は、共益費を下げず、家賃のみを下げます。ポータルサイトでは、家賃と共益費の込みで順番を表示はしますが、家賃の絶対額が安いほうが反響はとれます。 - 家賃を切りのいい数字より1,000円下げる
・・・ポータルサイトの特性上、40,000円未満のような検索機能があるので、家賃を3万9,000円に下げると反響が取れやすくなります。家賃40,000円・共益費3,000円であれば、家賃39,000円・共益費4,000円にして募集します。
これらは細かいテクニックですが、インターネットの表示項目上、家賃が目立つようになっているため、共益費が若干高くてもそれほど見られない傾向にあります。
また数字のテクニックとして、1,000円下げることで万の単位を下げて割安感を目立つようにさせると効果が出やすいといえます。
特別プランで一気に埋める
- 家賃を半年または1年半額
・・・家賃の絶対額は下げず、最初の入居期間の半年や1年間は半額にするとものすごくお得感が出るので決まりやすくなります。実質の値下げではあるものの、長く住んでもらえれば、高い家賃で住んでもらえるため効果の高い方法です。 - フリーレントを長期で設定
・・・1ヵ月のフリーレントを3ヵ月や4ヵ月に設定することで、実質家賃の値下げ効果を狙うものです。3ヵ月や4ヵ月のフリーレントがあると、初期費用が実質ゼロとなり、入居者には喜ばれます。
上記プランをキャンペーンの期間限定で賃貸募集店に告知すると効果てきめんです。
一気に案内数が増えて決まりやすくなります。
おわりに
- 賃貸の募集条件の緩和は、競合物件でも進んでいることから、可能な範囲で緩和していくと、空室が決まりやすくなる。
- 募集条件を緩和して稼働率を上げていくと、当然入居者の属性も様々になってくるので、入居者の多様化にあわせて賃貸運営能力を高めていくことが必要となる。
- ペット可の場合は原状回復のトラブルに注意する。またペット不可だった物件を突然ペット可に変えると、ペット不可で入居していた既存入居者の退去につながる可能性があるので注意する。
- 家賃の値下げは収益が悪化するので、オーナーとしては取りたくないが、まわりのライバル物件が家賃を値下げしてきたときは、対抗せざると得ない部分でもある。
- 家賃を下げる際は、現状で見込まれる空室期間と、家賃を下げてすぐに決まった場合の収益の差額を、3年程度の期間で区切って計算し、理論的に下げるようにする。
- 家賃を下げて5.0万円などになる場合は、あと1,000円下げて4.9万円としたほうが反応が良くなる。共益費を取っている場合でも、家賃部分を下げる。