不動産投資で賃貸借契約の際に連帯保証人をつけるのが一般的です。
しかし連帯保証人にはいったいどの程度の法的義務が発生するのか理解している人は少ないのではないでしょうか?
連帯保証人をつけずに保証会社をつけることも増えてきましたが、連帯保証人をつける場合もまだまだ多いと思います。
不動産投資家としては万一の際に連帯保証人にどこまで請求できるのかを知っておくことは重要です。
この記事では、
- 連帯保証人にどの程度まで請求できるのか
- 連帯保証人と保証人の違い
について、まとめてご紹介します。
賃貸借契約における連帯保証人と保証人の大きな2つの違いとは?
『連帯保証人』と『保証人』は似ていますし、どちらのことも口頭では『保証人』として話すことが多いです。
両者を同じような意味でとらえている人も多いですが重要な点が異なっています。
保証人にはあって連帯保証人にはない権利が2つありそれが両者の決定的な違いとなります。
保証人と連帯保証人の違い①:保証人には催告の抗弁権がある
賃借人が家賃を滞納した際に、
『まずは賃借人本人に請求してからにしてよ』
と言い返すことができる権利のことです。
連帯保証人にはこの権利がないため家賃滞納が発生した場合にいきなり家賃を賃借人の代わりに立て替えるよう迫られても断ることができないことになります。
連帯保証人のほうが保証人よりも責任が重たいということです。
保証人と連帯保証人の違い②:保証人には検索の抗弁権がある
『まずは賃借人本人の財産から弁済を受けてください』
と言える権利のことです。
保証人の場合は賃借人に支払能力があることを証明すれば自分自身への請求を拒否することができます。
しかし連帯保証人の場合はこの権利がないため賃借人本人に資力がある場合でも自己の財産を差し押さえられる恐れがあります。
不動産投資家としては、
- 賃借人でも連帯保証人でもどちらから支払を受けても構わない
- 賃借人と連帯保証人の当事者どうしであとは話をつけてください
というスタンスになります。
以上のように連帯保証人は法的には非常に責任の重い立場に置かれることとなるのです。
なので不動産投資家としては万が一家賃滞納が発生したら連帯保証人に遠慮する必要はないのでどんどん連帯保証人に連絡して督促するべきだといえます。
連帯保証人に請求できるポイント①:滞納家賃の保証
契約期間中に賃借人が家賃を滞納した場合、連帯保証人には賃借人に代わって家賃を払う義務があります。
もちろん、家賃だけに限らず、
- 共益費
- 管理費
なども同様です。
大家側は滞納家賃を賃借人本人の同意がなくても連帯保証人に直接取り立てることが可能です。
ただし水道光熱費に関しては、別途ガス会社や水道局、電力会社などと個別に契約を結ぶことが多いためそれらについては賃借人が単独で責任を負います。
連帯保証人に請求できるポイント②:原状回復費
賃借人が部屋を退去する際には敷金精算を行います。
あらかじめ預け入れた敷金の範囲内で原状回復費をまかなうことができれば問題ありませんが、万が一汚損や破損が酷い場合は敷金では足りない場合があります。
この場合は、別途追加で請求することになりますがこの原状回復費の支払いに賃借人が応じなければ連帯保証人に請求することになります。
連帯保証人に請求できるポイント③:契約解除後の家賃
契約解除日を過ぎても部屋を明け渡さない場合、解除日から明渡日までについて家賃の2倍相当の損害賠償を請求される場合があります(賃貸借契約の内容による)。
契約解除後の居座りに対しての損害賠償請求ついても連帯保証人の連帯保証義務の範囲内になりますので大家は損害賠償を連帯保証人に請求することができます。
連帯保証人に請求できるポイント④:借家人賠償責任
賃借人の不注意で
- 部屋の設備を壊した
- ボヤなどで燃やしてしまった
などのような場合は大家側から損害賠償請求をされますがこの際の債務についても連帯保証人の義務の範囲内となります。
以上の①~④のポイントのように連帯保証人は賃借人とほぼ同等の義務を負っているため、不動産投資家としては連帯保証人がいれば万が一の時にはとても安心できます。
連帯保証人は契約者である賃借人を後見するようなイメージですが実際の連帯保証人の義務は賃借人本人とほぼ同等であるということが重要なポイントとなります。
大家側から積極的に連帯保証人に連絡してもかまわない
家賃滞納が発生しても、賃借人に遠慮して連帯保証人には督促せず、賃借人にばかり連絡をしてしまう大家さんがいますが完全に間違いです。
家賃滞納の督促のコツはできる限り連帯保証人を巻き込むことです。
もし自分が賃借人の立場だと仮定して連帯保証人である親や兄弟に督促をされたら嫌なものです。
家賃が遅れたらすぐに連帯保証人に連絡されると分かっていれば、普通の感覚であればなんとかして払おうとします。
早期に連帯保証人に連絡するという大家としての姿勢を賃借人にしっかりと見せておくことで家賃滞納の抑止力となり得ます。
また、基本的には賃借人よりも連帯保証人のほうが資力があることがほとんどなので、まずは資力に余裕のある連帯保証人に家賃を立て替えてもらい、あとは連帯保証人から賃借人に内々で請求してもらう形が可能であればより早く滞納家賃を回収することができます。
連帯保証人に早く督促するという初動は
- 家賃滞納の予防
- 早期解決
に大きな効果を発揮します。
おわりに
- 連帯保証人は契約者である賃借人と同じ責任を負っている。家賃滞納が起こったときは、遠慮せずになるべく早く連帯保証人に連絡を入れるスタンスを見せることで、家賃滞納の抑止と早期解決につなげることができる。
- 将来の民法改正で連帯保証人の責任範囲(金額)が明確になり、契約時に定めた以上の債務は連帯して保証する範囲外となる可能性がある。