不動産投資では収益物件の購入に際して必要な金額の多くの部分を借入でまかなうことが多いと思いますが、金利以外での借入の調達コストを考えたことがあるでしょうか?
借入には、
- 借入額
- 金利
- 返済期間
の3つの要素があります。
金利が同じでも、借入額や返済期間が違えば年間の返済額は当然変動することになり、金利だけでは同一条件で借入の調達コストを比較することはできません。
K%(借入調達コスト・ローンコンスタント)は、この借入の調達コストを数値化した不動産投資指標になり、数値の大小で借入の調達コストを比較検討できるようになります。
この記事では、不動産投資の借入調達コストを同じものさしで数値比較できるK%分析法をご紹介します。
不動産投資指標の借入調達コストK%の算出方法
不動産投資指標の調達コストK%とは、借入に対する返済額の割合、借りるお金のコストを表します。
K%は以下の式で求められます。
◎K%(調達コスト)=ADS(年間返済額)/ローン残高×100
下記条件の物件購入時の資金計画・投資分析シミュレーションで見ていきましょう。
- 物件価格:9500万円
- 諸費用:650万円
- 購入総額:1億150万円
- 自己資金:1260万円
- ローン借入金額:8890万円
引き直し賃料(月額) | |
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引き直し賃料 | ¥720,000 |
▲空室損5% | ¥36,000 |
収入合計 | ¥684,000 |
支出の部(月額) | |
BM管理費 | ¥10,000 |
共用部光熱費 | ¥5,000 |
固定資産税・都市計画税 | ¥31,683 |
賃貸管理料 | ¥50,274 |
CATV | ¥6,300 |
支出合計 | ¥103,257 |
収支(年額) | |
GPI | ¥8,208,000 |
▲OPEX | ¥1,239,088 |
NOI | ¥6,968,912 |
▲ADS | ¥5,405,319 |
CF | ¥1,563,593 |
投資分析 | |
LTV | 93.58% |
CCR | 12.41% |
FCR | 6.87% |
表面利回り | 9.09% |
K% | 6.08% |
レバレッジ | + |
BE% | 76.90% |
最低稼働戸数 | 9.23戸 |
DCR | 1.29 |
PB | 8.06年 |
必要資金/資金調達対照表 | |
---|---|
必要資金 | 資金調達 |
諸費用:650万円 | 自己資金 1,260万円 |
物件金額:9,500万円 (購入総額:1億150万円) FCR=6.87% |
|
借入金額:8,890万円 (LTV=93.58%) 金利:4.5% 期間:30年 K%=6.08% ADS=540.5万円 CF=156.3万円 |
上記の事例でみると、ADS(年間返済額)は540.5万円で、ローン残高が8,890万円となりますので、
◎K%(調達コスト)=ADS/ローン残高×100=6.08%
となります。
不動産投資家側から見たときにはこのお金の調達コストK%は低いほうが良いことになります。
一方でこれは、銀行側から見た利回りとなります。
銀行からすると、8,890万円の投資をして、年間返済額である540.5万円が返ってきます。
銀行から見ると6.08%の利回りということになります。
不動産投資指標のK%(調達コスト)を活用した不動産投資シミュレーション
不動産投資指標K%(調達コスト)は、
- 借入額
- 金利
- 返済期間
で決まります。
一般的にローンを組むときには、なるべく低い金利で借りようとします。
しかし、金利を低く抑えられたとしても、返済期間によってK%(調達コスト)が変わってくることを理解する必要があります。
たとえば、上記事例は30年の返済期間でしたが、これが仮に20年だった場合はどうなるでしょうか?
返済期間が20年の場合の必要資金/資金調達対照表は下記のようになります。
必要資金/資金調達対照表 | |
---|---|
必要資金 | 資金調達 |
諸費用:650万円 | 自己資金 1,260万円 |
物件金額:9,500万円 (購入総額:1億150万円) FCR=6.87% |
|
借入金額:8,890万円 (LTV=93.58%) 金利:4.5% 期間:20年 K%=7.59% ADS=674.9万円 CF=21.9万円 |
どうでしょうか?
返済期間を30年⇒20年にすると、K%(調達コスト)は7.59%に上昇します。
これは、ADS(年間返済額)が540.5万円⇒674.9万円に上昇したことが原因です。
ちなみにADSが上昇したことで、CF(キャッシュフロー)も21.9万円に減少しています。
借入期間を30年から20年にすると、年間で21.9万円のCF(キャッシュフロー)ですので、毎月にすると収支がほぼトントンの状態だとみることができます。
今回は返済期間だけを変えてシミュレーションしましたが、金利と返済期間が違う2つのローンを比較するときなどに、調達コストである不動産投資指標K%で比較検討すると一目瞭然となります。
いくら金利が低くても、返済期間を短くすることで、全期間での利息は抑えられますがADS(年間返済額)が上がってしまい、CF(キャッシュフロー)が得られにくくなりますので、投資として成り立つのかは十分な検討が必要となってきます。
また、返済期間が長くローンを組めれば、
- ADS(年間返済額)が減る
- K%(調達コスト)が下がる
- CF(キャッシュフロー)が得られやすくなる
ので、返済期間が短いときよりも投資の幅ができたといえ投資として成立することが多くなってきます。
ポイントは、
金利が安い=良い投資ができる
というものでは決してなく、返済期間も含めK%(調達コスト)でならしてみていかなければ、レバレッジ(ファイナンスによる収益効果)が効いているとはならない点を理解することが大切といえます。
おわりに
- 借入には、借入額・金利・返済期間の3つの要素がある。金利が同じでも、借入額や返済期間が違えば、年間の返済額は当然変動することになり、金利だけでは同一条件で借入の調達コストを比較することはできない。
- K%(調達コスト・ローンコンスタント)は、借入の調達コストを数値化した投資指標であり、数値の大小で借入の調達コストを比較検討できるようになり、K%(調達コスト)=ADS(年間返済額)/ローン残高×100で求められる。
- いくら金利だけが低くても、返済期間によっては、借入全期間での利息は抑えられるがADS(年間返済額)が上がってしまい、CFが得られにくくなるので、投資として成り立つのかどうかは十分な検討が必要となる。