債権回収会社(サービサー)に債権譲渡されて破産管財人弁護士と任意売却を進めて無事に任意売却できたケース

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債権回収会社(サービサー)案件の一棟収益物件の任意売却が先日無事に完了しました。

もともとはスルガ銀行が不動産投資のローンを融資していた一棟収益で、所有者である債務者がローンの返済ができなくなり自己破産を申し立てて破産管財事件になっていたタイミングで債権回収会社(サービサー)に債権譲渡されたといういきさつの一棟収益の任意売却物件でした。

この一棟収益物件の任意売却物件は満室想定でキャップレート10%くらいで普通に査定をすると1億3000万円くらいになる物件でした。

それをスルガ銀行の融資で所有者様が購入したときは2億1000万円でした。満室想定利回りは6.2%というところです。

それはそれで特別良くもありませんが悪くもないと思うのですがなぜ所有者様は自己破産してしまったのでしょうか?

今回の取引は破産管財人弁護士が売主様として任意売却を行いましたので所有者様に直接聞いたわけではないのですが、今回の任意売却を行うにあたって物件を調査したところいろいろと見えてきたところがありましたのでお話しいたします。

物件価格2億1000万円・グロス利回り6.2%の一棟収益を買ってなぜ自己破産にまで追い込まれてしまったのか?

今回の所有者様はなぜ物件価格2億1000万円でグロス利回り6.2%の一棟収益物件を買って自己破産への道を選ばなければならなかったのでしょうか?

物件価格2億1000万円で満室想定利回りが6.2%ということは年間の家賃収入は約1300万円です。

月額の家賃収入は約108万円となります。

スルガ銀行で2億1000万円の不動産投資ローンを借り入れていたとすると金利4.5%・35年返済で年間のローン返済額は約1192万円、月々のローン返済額は約100万円となります。

満室想定での話ですが毎月のキャッシュフローが約10万円、年間のキャッシュフローが約120万円という計算になります。

これはサラリーマンには小さくない金額ですよね。

スルガ銀行から当時よく実行されていたフルローンを組めば書類にサインするだけで毎月10万円の副収入である家賃収入が見込めるということになります。

ただしあくまでも満室想定ですので満室に近い稼働率でないとこのキャッシュフロー計算は成り立たないことになります。

実際に破産管財人弁護士と任意売却を進めていく段階で詳しくこの一棟収益物件を調査するのですが、なるほどそれでスルガ銀行への不動産投資ローンの返済が行き詰まったのだなと思えるフシがあったのです。

破産管財人弁護士からの資料によると、この一棟収益物件の購入当初に半年間限定でサブリース契約の締結がなされていました。

半年間のサブリース家賃は月額100万円、半年間で600万円の保証という設定内容になっていたようです。

スルガ銀行のローンを払える金額にうまいこと設定がなされていました。

そしてサブリース期間が終わると当然サブリース賃料は入ってこなくなります。

そこからが地獄の始まりだったのではないかと想像できます。

なぜならほぼ半分の部屋が空室だったからです。

しかもサブリースを設定していた空室の部屋は転貸されていたという形跡はなくその前の入居者が退去したまま改装をされておらず荒れている状態のままだったのです。

これでは新たに入居者を募集するにもまず原状回復リフォームをして部屋をきれいにしなければいけません。

そのためには費用がかかりますしその費用はオーナーである所有者が負担しなければいけません。

しかし購入当初のサブリース時から賃料収入からスルガ銀行へのローン返済分を差し引くと月々10万円も残らない状況だったため一気に半数の部屋が空室になっても全部の空室を埋めることができなかったのだと想像できます。

そして半数の部屋が空室になって賃料収入が半分になったとしてもスルガ銀行へのローン返済分は毎月同じだけ発生しますので、毎月の持ち出しが45万円などという状況になっていたのではないでしょうか。

サラリーマンでなくても毎月45万円のローンの返済を持ち出しで行うというのは厳しいものがあると思いますのでサラリーマンであればそれこそ3ヶ月も持たない状況だっただと思います。

貯金などをやりくりして最初の3ヶ月程度を返済できたとしても続きません。

そしてスルガ銀行への返済が滞ることを恐れて新たにカードローンやキャッシングをしてまで返済を続けようとする人まで出てきてしまいます。

カードローンやキャッシングの借り入れ額にも限度がありますのでいずれ借り入れ額いっぱいまで借りてしまい手詰まりとなってしまうのです。

最後に残ったのは入居者が半分しか入っていない地方都市山形市の一棟収益マンションと約2億円のスルガ銀行の借り入れとその他のカードローンやキャッシングの借り入れだけということになってしまい、自己破産への道を選ばざるを得なくなったのではないかと考えられます。

 

債権回収会社(サービサー)に債権譲渡されて破産管財人弁護士と任意売却を進めて無事に7000万円で任意売却が完了

所有者様が自己破産を申立てたタイミングでスルガ銀行にも弁護士から通知が届きます。

スルガ銀行は自行でも任意売却を行うのですが今回のケースはスルガ銀行から債権回収会社(サービサー)に債権譲渡されました。

債権回収会社(サービサー)に債権譲渡することでスルガ銀行は損切りが完了します。

もうスルガ銀行はローンの貸主ではなくなるということです。

その代わりにスルガ銀行から債権譲渡を受けた債権回収会社(サービサー)が新たな債権者となり債務者である所有者と話をすることになります。

ただ今回のケースでは債権譲渡されたときにはすでに破産管財事件となっていて破産管財人弁護士が裁判所から選任されておりましたので、債務者の代わりに破産管財人弁護士が売主としての全権限を持つことになります。

この破産管財人弁護士と債権者である債権回収会社(サービサー)と私どもで交渉や調整を行いながら山形市の一棟収益物件の任意売却を進めていくことになったのです。

まずは破産管財人弁護士に債権者である債権回収会社(サービサー)からの依頼されているとして売却の窓口になるという件を了承頂かなければいけませんでした。

破産管財人弁護士の任意売却でよくあるケースなのですが、破産管財人弁護士にもよく使っている不動産会社がある場合にそこにも依頼したいとのことで、私どもと破産管財人弁護士のよく使っている不動産会社、そして地元山形の不動産会社の3社で一般媒介という形で任意売却を進めていくことになりました。

東京からは遠方でしかも一般媒介なので私どもにとっても厳しいものがあるのですが、懇意にして頂いている債権回収会社(サービサー)からのご依頼なので私どもで任意売却できるように進めていきました。

まずはこの物件の調査が必要ですので私どもで山形市に入って調査を行いました。

すると思った以上にひどい状況でした。

実際に賃貸管理を委託していた現地の管理会社に現在の状況を現地で確認したところ、

  • 半分ほど空いている空室は原状回復がされていない
  • 購入時のレントロールはデタラメで入居中の部屋の家賃もレントロールの記載よりも実際は安い
  • 建物の保守管理状況もあまり良くない

という状況だったのです。

債権者の債権回収会社(サービサー)の担当者とも一緒に現地に行ったのですが、いくらなんでもさすがに1億円以上では売れるよねなどという債権者側の見通しも一瞬で吹き飛んだような状況でした。

まずは現状をきちんと調べて持ち帰って対策を立てることになりました。

出口としてこういった一棟収益物件を専門に買い取っている不動産業者に声を掛けてはみたもののどこもだいたい購入するなら4000万円程度という見立てでした。

少し頑張ったところでも4500万円が精一杯という状況でした。

この目線を債権者である債権回収会社(サービサー)に伝えたところ、とてもじゃないがその価格では抵当権の抹消には応じられないという回答でした。

まあ1億円くらいを見込んでいて半額以下では当然の結果ではあります。

しかしなかなか難しいかなと思っていた矢先に、6000万円で購入するという買主が現れました。

もともとの目線は1億円くらいだったものの4000万円や4500万円などの価格から比べると破格に感じられる価格でしたので債権者の債権回収会社(サービサー)にお伝えして配分案を組んで抵当権の抹消をご提案しました。

これで債権者が抵当権の抹消に応じればめでたく任意売却の成立となります。

破産管財人弁護士も願ってもない価格だとのことで債権者の債権回収会社(サービサー)に猛プッシュしているようでした。

私どもとしてもおそらくこれで任意売却が纏まるのではないかとタカを括っていました。

売買契約のだいたいの予定日を設定して、その前に買主に現地をご案内までしていました。

しかし結果から言うと、かなり結論を引っ張った挙句に債権回収会社(サービサー)は6000万円での抵当権の抹消を拒否してこの価格では任意売却には応じられないとの最終回答を出してきたのです。

山形の現地まで案内したのに売買契約まで辿り着かなかったため買主様には本当に平謝りするしかありませんでした。

ただ買主さんも6000万円が目一杯というわけではなかったようで逆にいくらくらいなら債権者が抵当権の抹消に応じてくれて本当に任意売却が纏まるのか債権者に確認して欲しいとおっしゃっていただけました。

そこで債権者である債権回収会社(サービサー)と再度交渉を行い、本当に抵当権を抹消できる価格を探っていったところ売買価格が7000万円であればほぼほぼ抵当権を抹消できるとの見通しが立ったのです。

そして買主様とも調整を重ねて最終的に売買価格7000万円で山形市の一棟収益物件を任意売却で購入してもらえることになりました。

ただそのあとも通常であれば売買契約をしてから残金決済という形で取引が進むのですが、破産管財人弁護士のこだわりで一括決済(同日契約決済)でなければやらないと言い出したので一括決済の段取りで進めることになるなど最後までドタバタした不動産取引となった任意売却事案でした。

 

おわりに

いかがでしょうか。

債権回収会社(サービサー)や破産管財人弁護士の任意売却物件は思いのほか価格的には低く購入できることもあるため、一棟収益物件の仕入れの一つのチャンネルとしては狙い目です。

当然任意売却物件では売主である所有者はローンの返済ができなくなっている(デフォルトしている)ため、建物のメンテナンスや空室の原状回復などがまったくできていないことも多いため、必ず現地を確認して現状を自分の目で確かめることが必要です。

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