未曽有の超高齢化社会が到来していますが、不動産投資で高齢者に賃貸するのをためらうケースはまだまだ多いのではないでしょうか。
日本は近い将来は4人に1人が75歳以上になる見込みが出ています。
現在でも65歳以上の人口は3100万人を超えていてすでに4人に1人以上が高齢者なのです。
60歳以上になるともっと多いでしょう。
それくらい人数が多い市場を、高齢者だからという理由だけで敬遠するのは機会損失をしておりもったいないともいえます。
しかし、高齢者に賃貸する際には高齢者ならではのリスクがあるのも確かです。
押さえるべきところはきちんと押さえて、高齢者という大きな市場で収益を上げていくにはそれなりのノウハウが必要と考えます。
この記事では、不動産投資で高齢者に入居させる4つのリスクと孤独死などの告知事項になるリスクに備えるリスクヘッジ方法をご紹介します。
不動産投資で高齢者に入居させる4つのリスク
リスク①:設備上のリスク
高齢者になればなるほど体の自由が効きにくくなり、制約を受ける部分が増えてきます。
ましてや高齢者が一人で生活するということは大変なことです。
場合によっては室内のバリアフリー改装も考えなくては生活ができないということもあり得ます。
不動産投資家側に室内を改装してあげなければならない義務はありませんが、高齢者の入居中に手すりの設置などを相談される可能性はあります。
特に3点ユニットバスの浴槽は高さがあるので、高齢者が超えられなかったり、超えるときにけがをするなどのリスクがあるため、高齢者を入居させにくい要因のひとつとなっています。
リスク②:安全上のリスク
万が一お風呂や室内で転んでケガをした場合など、家族が同居していれば問題ないのですが、高齢者の一人暮らしとなると危険になります。
動けなくなった場合に発見が遅れれば命を落とす危険すらあるからです。
リスク③:認知症リスク
高齢者が入居中に認知症になってしまった場合に、厄介な問題となります。
昼夜逆転して深夜に徘徊したり大声を出したりした場合、当然他の入居者からのクレームとなり、不動産投資家に直接的な責任はなくても、管理者として毎度対応しなければならないので大変です。
リスク④:死亡リスク
高齢者には若い人よりも確率的に『死亡リスク』がつきまといます。
これは年齢的に仕方のないことです。
高齢者の一人暮らしの場合、室内において万が一のことが起きた場合に、発見が遅れると腐乱してしまうことも少なくありません。
そうなると、ご本人にも気の毒ですし、賃貸物件が被る経済的被害がとても大きくなってしまいます。
以上①~④のように、不動産投資で高齢者に対して部屋を貸すということは、通常の賃貸入居者よりも余計なリスクを背負うということになります。
そのため、高齢者と賃貸借契約を結ぶ場合は、契約に先立ち、下記のような点を契約書の条項などに盛り込む必要があります。
不動産投資で高齢入居者との賃貸借契約書に取り入れたい特約条項でのリスクヘッジ方法
リスクヘッジのための特約条項①:部屋を〇日以上あける場合は事前に貸主に連絡する
一人暮らしの高齢者のリスクを抑えるためには、貸主が少しでも早く異変に気付くようにしなければなりません。
そこで、
- 3日以上旅行などで部屋をあける
- 病院に入院する
- 娘、息子の家族の家に泊まる
などについては必ず事前に連絡してもらうことで、万が一連日部屋の明かりが消えていても、室内で倒れていると疑わずに済むことになります。
リスクヘッジのための特約条項②:賃借人と〇日以上連絡がつかない場合は、警察立会のもと室内の安全確認を実施することに同意する
条項①と併用して使うとより安心です。
これも、室内で万が一何かあった場合に少しでも早く気づいてあげるための措置です。
なので、電話連絡が数日つかない場合は、警察立会のもとで鍵を開けて室内を確認しますよということを契約書の条項に盛り込みます。
見方によっては強引な条項に見えるかもしれませんが、高齢者の入居者のためのものなので、理解を頂くようにします。
リスクヘッジのための特約条項③:認知症など一定の病気と診断された場合は、賃貸借契約を解除する
高齢者が認知症や長期入院が必要と診断された場合に、いつまでも部屋を貸し続けることはできなくなります。
ただ、これだけでは高齢者が行き場をなくしてしまい、事実上行使できないため、あらかじめ連帯保証人のほかに、
- 身元引受人
- 身元保証人
などを立ててもらい、万が一の際にはその人に高齢者を引き取ってもらえるようにしたいところです。
そのために、
- 別途合意書
- 承諾書
などを作成して契約時に交わしておくと安心です。
そしてできれば高齢者の子供や孫などの若い世代にお願いします。
高齢入居者の受け入れにあたっては事前に家族を交えて説明してリスクヘッジすることも重要
これらの条項は、契約していたとしても、もし裁判沙汰にまでなった場合は、賃借人保護の観点から認められない可能性があります。
借地借家法では賃借人にとって一方的に不利な条項は無効となるためです。
なので、これらの条項を盛り込む場合は、あらかじめ高齢者の家族も交えて、条項の意味をしっかり理解してもらい、任意で守ってもらうことを前提に入居してもらうことが重要になります。
そして、無条件に条項に従って執行するわけではなく、ケースバイケースでその時の状況をみて、本人や家族と話し合うことが円満解決になりやすいといえます。
高齢入居者の室内での孤独死対策には少額短期保険が有効
不動産投資で高齢入居者を避ける最も大きな原因が室内での孤独死だと言われています。
なので多くの不動産投資をしている大家は高齢者にはできれば部屋を貸したくないと思っています。
対策としてはいろいろあるのですが、大家に対する経済的な保障として孤独死に対する原状回復費用を補償する少額短期保険があります。
室内で孤独死が起こった後に
- 空室になった
- 賃料が下がった
などの際に最長で1年間、1事故あたり最大年間100万円~200万円程度が補償されます。
また室内をもとに戻すための原状回復費用に対しても保険が支払われる内容のものもあります。
何もなしで入居してもらうより大家としてはもしもの際の安心感は増すと思います。
不動産投資で独居高齢入居者の孤独死に対応する2つのリスク管理の方法
少子高齢化にともなって、高齢者が一人で住居を借りるケースは今後も増え続けると考えられます。
しかし、独居老人の賃貸を受け入れる場合、どうしても病気やケガ、あるいは最悪の場合亡くなるというリスクが思い浮かぶのではないでしょうか?
大家の立場でそういった独居老人独特のリスクを軽減するポイントは、孤独死リスクをヘッジすることに集約されます。
高齢者の孤独死のリスクは保険とセンサーを活用することで補償と予防の面からヘッジできます。
高齢者人口が全体の25%を占め、今後さらに高齢者比率が上昇していく日本において、高齢者に対する入居促進の対策は欠かせなくなると考えられます。
独居老人の賃貸を受け入れないで済むのであればそれでよいのですが、入居率を考えると、物件によっては受け入れざるを得ない物件もあります。
独居老人の賃貸を受け入れるにあたって大家が考えておくべき最大のリスクは、やはり孤独死です。
少子高齢化や家族関係の希薄化に伴い、孤独死のニュースを頻繁に目にするようになっています。
生ある者はいつかは亡くなりますし、高齢者であれば年齢と比例して亡くなる可能性も高くなりますが、問題は遺体発見までの時間にあります。
亡くなっているのを発見するまでの時間によって、大家が受けるダメージは大きく変わってきます。
死後1ヶ月以上経過していると大幅な工事が必要になりますが、数日であればそれほど問題にならない場合もあります。
死後2ヶ月の腐乱遺体が発見された部屋で、一度スケルトンにしてやり直すリフォームが400万円ほどかかったというケースもあります。そして、それだけではなく次の入居者が入るまでに半年以上かかり、その家賃は孤独死が起こる前の2割引きという水準に下がるということが起こっています。
収益物件の運用においては、保有するアパートで孤独死が起こり、発見が遅れてしまった場合、資産価値の大幅な毀損となるので大家としては絶対に防ぎたいところです。
発見に関しては運次第のところはありますが、独居老人が入居している物件は管理会社に巡回に力を入れさせ、出来る限り頻繁に物件を見回ってもらうなどの対策が必要です。
それでも完全に孤独死を発見することはできませんが、何もやらないよりは効果的です。
独居高齢入居者の孤独死に対するリスク管理①:保険加入で事後の資金的な補填を強化する
独居老人の孤独死に対するリスク管理としては、入居保険の活用が挙げられます。
少額短期保険の孤独死に対応した入居者保険などです。
これは万が一入居者が孤独死した場合、大家が孤独死によって被った損害の補償を受けられる内容となっています。
孤独死が発見された場合、家賃保証分として最大200万円、原状回復費用相当分として100万円が補償される、かなり手厚い保険です。
これによって万が一孤独死が起こってしまっても、原状回復費用や家賃相当額が補償されることになります。
保険の費用負担は大家で、1戸あたり3000円程度で1棟単位で加入できます。
高齢の独居老人を入居させる場合には必ずこういった補償のある入居者保険などを検討することをおすすめします。
独居高齢入居者の孤独死に対するリスク管理②:センサーで見守り長期放置を未然に防ぐ
孤独死は未然に防ぐことができればそれに越したことはありません。
保険はあくまで事後の金銭的なリスクヘッジにはなりますが、予防はできません。
そこで善後策として、独居老人世帯にセンサーを設置するという方法があります。
費用は1台あたり4~5万円程度です。
このセンサーは設定した時間で人が動かなければ自動的に管理者に知らせる機能があり、入居者の異変にいち早く気付くのに役立ちます。
行政によってはこのセンサーを設置する費用に補助を出しているところもあるので、もし導入を検討する際は確認するとよいでしょう。
おわりに
- これからもっとも伸びるのが高齢者の市場。これは不動産投資にも当てはまる。そのため、高齢者というだけでまったく入居させないというのでは、減っていくパイを奪い合うためにじり貧になってしまう可能性がある。
- 高齢者に入居してもらうためには、高齢者ならではのリスクを抑えて、もしもの時に柔軟に対応できる条項を作成し、それを一方的に行使するのではなく、本人やその家族に理解をしてもらったうえで、入居してもらうことが重要となる。
- 独居老人の孤独死のリスクは、賃貸を受け入れる限りは完全には防ぐことは出来ないが、保険とセンサーの活用で金銭的な補償と予防の面からヘッジできるので事前によく検討する必要があります。
- 大家の立場でそういった独居老人の賃貸受け入れのリスクを軽減するポイントは、孤独死リスクをヘッジすることに集約されます。