不動産投資で保有している収益物件の大規模修繕はどのタイミングでするべきなのでしょうか?
サラリーマンや公務員などの不動産投資家は特に大規模修繕を行う必要はありませんが、法人化して不動産投資を行っている場合は税金面を考慮して決めるとよいといえます。
大規模修繕とは、
- 外壁塗装
- 屋上防水工事
- 玄関や廊下などの共用部の刷新
などを行うことをいいます。
費用が数百万円単位でかかることも多く実施するかどうかは慎重な判断が必要となります。
この記事では、不動産投資で保有する収益物件の大規模修繕の費用概算と大規模修繕を行うタイミングについてご紹介します。
収益物件の大規模修繕の費用概算
外壁塗装
外壁塗装は一般的に10〜15年に一度程度やるべきだとされています。
外壁を触ったときに粉を吹いている状態かどうかが外壁塗装をする必要があるかどうかがわかります。
工事内容はただ単に塗装するだけと思われがちですが、足場を組んで外壁の高圧洗浄をして下地塗りから初めますので、かなり大規模な工事になります。
外壁工事にかかる費用は
- 外壁の面積
- 塗料の種類
- 足場の高さ
などによって変わってきます。
外壁塗装の費用の目安
外壁塗装の目安となる費用は下記の通りです。
- アクリル塗装・・・耐用年数約6年、1400円/㎡
- ウレタン塗装・・・耐用年数約10年、1600円/㎡
- シリコン塗装・・・耐用年数約15年、2000円/㎡
- フッ素塗装・・・耐用年数約20年、3000円/㎡
外壁の面積を測ったことがある人はほとんどいないため見積もりを取ってもらうしか方法はありません。
費用のイメージとしては4階建のファミリーマンションで500万円以上はかかると考えて間違いありません。
屋上防水
屋上防水は適切な頻度で実施していないと雨漏りなどの原因となるので、剥がれなどが目視で確認できる場合は必ず対応しておくべきです。
屋上防水もいろいろな工法があり耐用年数も変わってきますが、平米当たり5000円程度の工事費が目安となります。
RCマンションであれば少なくとも数十万円以上、部屋数が30戸以上ある場合は100万円以上かかることになります。
共用部の刷新
共用部の刷新は、
- 玄関のリニューアル
- 廊下の塗装
- ポストの交換
などが該当します。
対応しないことにより何か具体的な不具合が発生するわけではありませんが、対応すれば物件案内時の第一印象が大きく良くなる可能性があります。
費用については、それぞれ個別に実施する場合で数十万円見ておけば大丈夫です。
収益物件で大規模修繕を実施するタイミング
大規模修繕を実施するタイミングですが、よほど必要性に迫られないかぎりあまりやらないほうがいいと考えます。
屋上防水は水漏れの心配があり、防水シートが剥がれている場合は行わなければいけませんが、外壁は多少古びていてもすぐに機能的な問題が発生するわけではありません。
例えば、ファミリーで24戸の物件で外壁塗装の費用を見積もったら、足場などをすべて含めて500万円だったとします。
この投資を利回り15%以上で回すためには、すべての部屋で2600円の家賃アップが必要な計算になります。
⇒◎2600円×24戸×12ヶ月÷500万円≒15%
築20年超のマンションの外壁が多少新しくなったところで、2600円も家賃を上げられるかどうかはかなり厳しいです。
しかも、既存の入居者に家賃アップを交渉することは現実的にも難しいと考えられるので、この例からも外壁塗装は効率の悪い投資になるということが分かると思います。
しかし、税金を絡めて大規模修繕を考えると見方が変わってきます。
大規模修繕を原状回復ではなく、物件のバリューアップのための位置づけにできれば資産計上できる可能性があるからです。
通常の部屋のリフォームは原状回復となる場合がほとんどなので、その年度の経費として一括計上することになりますが、外壁塗装や屋上防水は資産計上して減価償却費にすることが可能な場合があります。
ただし大規模修繕が資産計上できるかどうかは工事内容により、税理士に相談する必要があります。
物件を長く所有していると、段々と経費の支出がなくなり、ローンについても元利均等返済により経費にできる利息の支払いが減って元金の返済が増えていきますので、帳簿の数字上よりも実際のキャッシュフローが悪くなっていきます。
そのタイミングに合わせて大規模修繕を行い、家賃アップや現在の家賃の維持を図ることができれば、物件の稼働率を安定化させるとともに減価償却費を増やすことができることになります。
おわりに
サラリーマンや公務員の投資戦略では、大規模修繕は基本的にはする必要はありません。
ただし、屋上防水の劣化などで水漏れがしているなどの急を要する修繕は、できるだけ早く実施する必要があります。
外壁塗装などの見栄えに関しては、それを実施したところでかかった費用を家賃に転嫁するのは難しいため、慎重に判断するほうが賢明です。
物件を長く所有していて、まだしばらく保有し続ける場合に、大規模修繕を資産計上して減価償却を増やしたいというような明確な目標がある場合は、経費計上できる費用が減ってきたタイミングで大規模修繕に取り組むのが最も効率的だといえます。