相続対策の方法はたくさんあるのですが、難易度やリスク、効果が高いもの低いものがいろいろあります。
中には効果が微妙なものや、法整備が変わってきているものもあるので、実際に実行するにあたっては、専門家の指示を仰ぐほうがいいです。
話題のタワーマンションを用いた相続対策も例外ではありません。
この記事では、タワーマンションの安易な相続税対策を国税当局がマークしている理由をご紹介します。
タワーマンションの安易な相続税対策を国税当局がマークしている理由
近年、都心部などのタワーマンションの上層階を購入することで、相続対策とする事例が爆発的に増えています。
本来は土地の評価は路線価などから行います。
家屋は固定資産税評価など、市場価値とは異なる公的な指標から算出し相続税の計算の基礎にします。
しかし、タワーマンションの場合は上層部に行くにしたがって、市場価値が雪だるま式に膨れ上がり、相続税評価額はその市場価値ほどは上がらないため、その差額が反映されない分だけお得に節税できるというのがタワーマンションを利用した相続税対策となります。
この相続税の節税対策をうたい、お得感を利用した不動産業者の大々的な広告宣伝効果もあり、タワーマンションを購入する資産家が爆発的に増えたという背景があります。
明らかに相続税逃れを狙ったこのスキームに、国の税収を確保しなければならない国税当局は当然焦ります。
そして実際にタワーマンションを用いた相続税対策をけん制するために、今後タワーマンションの相続税評価を上げて、相続税対策としての恩恵を小さくする施策を講じるなどを行っています。
ある事例では、タワーマンション購入による相続税の減税分を否認し、これに反発した納税者との裁判でも国税当局が勝訴しました。
国家権力である国税当局を甘く見てはいけない
相続税の対策は、被相続人となる人が死亡する時期に近い期日で実行することになりがちです。
生前贈与などもそうですが、相続発生前3年間になされた生前贈与は、相続財産に組み戻されて計算されます。
これは相続税対策の効果を薄める効果を狙ってのことです。
タワーマンションスキームの場合、被相続人の死亡日に近い時期に購入したタワーマンションの効果を利用して相続税の税額を下げることができたとしても、そのあとすぐに売却して換価すれば投機的な性格が強く、不当な相続税逃れであると国税当局に判断され、税務調査を経て将来的に追徴課税を課せられてしまうということが実際に起こり得るということです。
国税当局は、相続財産の評価方法について、ある程度裁量権をもっており、財産評価基本通達によらなくても、他の合理的な方法による評価が許される余地があるのです。
この合理的とは、国税当局にとっては都合がよく、より多く税金を徴収できる方法を用いることができるということです。
さらには、タワーマンションを用いた相続税対策を考えている人に向けて注意喚起の記者発表を行ったり、タワーマンションの上層階などで市場価値と相続税評価額の落差が大きい物件についてはその評価方法自体をあらためることを検討しています。
国税当局のこうした対応によって、タワーマンションを用いた相続税対策は今後その恩恵が薄くなっていくことが予想されます。
まとめ
- タワーマンションの上層階などを用いた相続税の節税対策は、国税当局が相続税逃れとみなしており、本気で取り締まる方向なので、安易な取り組みはしないほうがよい。
- 相続税対策をするなら、王道の方法で専門家にきちんとアドバイスをもらって行うべき。買って売って節税完了というのは、投機的な一面もあり国税当局に睨まれても当然だといえる。
- 相続の時点では節税になっていても、後からいくらでも追徴課税できる国税当局の国家権力を甘く見てはいけない。