生命保険の死亡保険金や法人契約のがん保険の非課税枠が縮小されていることはご存知でしょうか?
多くの人が加入しているであろう生命保険。
死亡保険金は被相続人が亡くなってから支払われるため、『みなし相続財産』とよばれています。
改正前は法定相続人1人あたり500万円までは非課税とされていましたが、条件が厳しく縮小されました。
また法人にとってのポピュラーな節税対策だった法人契約がん保険の保険料の全額損金扱いが半額しか損金計上できなくなりました。
この記事では、生命保険やがん保険まで及ぶ次々に消える相続税節税手段について取り上げます。
目次
生命保険の死亡保険金の非課税枠の縮小
死亡保険金の非課税枠はかなりの縮小に
改正前の生命保険の死亡保険金の非課税枠は、
◎500万円×法定相続人の数
となっていてすべての法定相続人が対象でした。
しかし、改正後は、
- 未成年者
- 障害者
- 生計を一にする者
のいずれかに該当しなければ、非課税対象者として認められなくなってしまいました。
親から独立して生計を別にしている子供は多いと考えられます。
保険会社から節税対策として進められて多額の生命保険に加入していた人も少なくないでしょうから、注意したい改正のポイントとなっています。
生計を一にするかどうかの判断は難しい
生計を一にするかどうかの判断が問題となるケースも多くなると考えられます。
専門家でも人によって意見が分かれるほど、『生計を一にする』かどうかの判断は複雑なので、税務署や税理士に確認を取っておいたほうが安心です。
定期金も節税商品ではなくなった
資産家の多くが相続税と贈与税の節税に使っていた定期金も、改正で節税商品ではなくなりました。
定期金とは、
- 個人年金保険
- 死亡保険金
などの分割払い契約などが当てはまります。
個人年金保険の場合は例えば保険料1億円を払っておき、満期を迎えたら1億円を数年から数十年の期間に年金形式で受け取る契約となっています。
死亡保険金の分割払いは、保険金を数年から数十年の分割払いで受け取るという仕組みです。
改正前であれば評価額は、
- 給付金額の総額×残存期間に応じた割合(20~70%)
- 1年間に受け取る金額×15倍
のいずれか低いほうと決められていました。
例えば年200万円の定期金を残存期間15年で受け取る契約をしていた場合、給付金額の総額は3000万円となりますが、残存期間15年は50%の減額となるため1500万円のみが課税対象となっていました。
上記のように、残存期間によって減額割合は異なるものの、大きな節税効果があったため定期金は人気商品でした。
しかし、改正後の現在では、
- 解約返戻金相当額
- 一時金の給付を受けられる場合には一時金相当額
- 1年間に受けるべき金額×特定利率の複利年金原価率
のうち、いずれか高い額が適用されることになりました。
平たく言えば、原則として解約返戻金相当額が評価額となるということです。
これによって評価額はほとんど下がらなくなり、節税効果は見込めなくなってしまいました。
法人契約のがん保険の節税枠の縮小
相続税や贈与税ではありませんが、増税の波はいたるところに押し寄せているといえます。
法人にとってポピュラーな節税対策だった法人契約がん保険の保険料の全額損金扱いが変更となり、半額しか損金扱いされなくなりました。
まとめ
生命保険の死亡保険金の非課税枠や法人契約のがん保険の損金計上枠など、これまで有効だった節税手段は次々に狙い撃ちにされてしまいました。
制度改正は突然行われることが多いので、制度改正に乗り遅れないためにも各方面にアンテナを張って情報収集をして定期的なチェックを行うことが必要だといえます。