
根本的な話ですが 『不動産投資の利益』とは何をもって利益というのでしょうか?
不動産投資の家賃収入から得られるキャッシュフローだけが不動産投資の利益と考えてはいないでしょうか?
不動産投資において家賃収入から得られるキャッシュフローだけが利益ではありません。
収益物件をローンで購入して毎月の家賃収入からローンの支払い分を差し引いたものがざっくりとした手元に残るキャッシュフローとなります。
しかし不動産投資の利益として考えるとこのキャッシュフローが利益というのは間違いです。
なぜならこのキャッシュフローは、
- 頭金としての自己資金をいくら入れたか?
- ローンの金利
- ローンの返済年数
に応じていくらでも変わりますし操作できるものだからです。
このことをよく理解しておかないと目先のキャッシュフローにつられて利益が出ずに儲からない収益物件をつかまされたり、高金利のローンでも返済期間を長くすることで目先のキャッシュフローにごまかされたりして結果的に騙されやすいので注意しましょう。
不動産投資においてキャッシュフローは確かに利益の一部ではありますがそれをもって利益を判断する数字ではないのです。
なぜならキャッシュフローが出ていなくても確実に利益を生んでいる不動産投資はたくさんあるからです。
不動産投資の利益とはどのようなものなのかをきちんと知るには、収益物件の購入から売却までの不動産投資全体を見渡して不動産投資の『利益構造』をきちんと理解する必要があります。
目次
ローンを返済することであなたの不動産投資の『含み益』が増えているという考え方
不動産投資はその収益物件の価格が暴落しない限り、収益物件の売却時に非常に大きな現金が手元に残る仕組みになっています。
なので収益物件の売却時にいくらの現金が得られるのかを試算することが重要になります。
つまり今収益物件を売却したらいくらの現金が残るという、株でいったら『含み益』を常に計算しておくべきだといえます。
ローンで購入した収益物件は返済が進んでいけば当然ローンの残高が減っていきます。
ローンの残高が減った状態で買った時と同じ価格で売却すればそのローンの返済分だけドカンと手元に大きな現金が残るという仕組みです。
例えば1億円で買った収益物件のローン残高が7000万円まで減った段階でその収益物件を買った時と同じ1億円で売却すれば3000万円が手元に残ります。売却時の価格が1億円よりも上がっていればもっと手元に残るお金は増えることになります。
逆に収益物件の売却時の価格が大幅に下がってしまえば売却時の手元に残る現金は減ってしまうじゃないかと思うかもしれませんが、売却価格が極端に低い場合は売却をしなければいいだけの話です。
家賃収入を得ながらまた売却のタイミングを探っていけばいいことになります。
家賃という他人が払ってくれているお金でどんどん自分のローンの残高を減らしていくことができることに変わりはありません。
これが不動産投資における『含み益』という考え方です。
ローンで購入した収益物件は長期で保有するほどローンの残高が減っていって『含み益』は増えていきます。
毎月のキャッシュフロー以外にも将来的に現金化できる大きな『含み益』を積み立てているという感覚に近いと思います。
この『含み益』は簡単にいうと土地の持分と考えるとわかりやすいです。
建物は減価償却されてどんどん簿価の残価が減っていきますがローンの返済の元金分がどんどん土地の持分としての『含み益』となっていくと考えることができるのです。
キャッシュフローが多く出る不動産投資はローンや税金の支払いに追われることがなく、さらには生活費もまかなえて投資としては理想的だと思われるかもしれません。
しかし仮にキャッシュフローが出ない不動産投資でも土地の持分は『含み益』として蓄積されていくため将来的には売却した際にその土地の『含み益』分を現金化して大きな利益を得ることができると考えることができるのです。
不動産投資の利益は『スプレッド』から発生すると理解するとわかりやすい
ローンの元金返済分が土地の持分としての『含み益』として蓄積されて資産が増えることにつながるということは不動産投資の利益の考え方で一番重要なところです。
しかしこのことを十分に理解して不動産投資に取り組んでいる人は少ないです。
そしてこのことを理解していない人は毎月の収支であるキャッシュフローばかり見て含み益の蓄積を見ないためトータルで見ると損してしまうということになるのです。
ローンを借り入れて収益物件を購入した場合に、安定した高い賃料収入と低いローン金利との差額である『スプレッド』こそが不動産投資で収益物件を保有したときの利益の源になっているということを理解しましょう。
その『スプレッド』が不動産投資の利益の源であるということに今の低金利がとても大きな恩恵をもたらしていると考えることもできます。
純利回りと金利支払いの差額のスプレッドから税金を差し引いた残りが正味利益であり毎年の純資産増加額なのです。
たとえば、表面利回りが8%だとして経費率を30%とすると純利回りは5.6%となります。
そしてローン金利が1.3%だとすると純利回りとローン金利の差額5.6%-1.3%=4.3%がスプレッドとなります。
そしてそのスプレッドから平均税率を30%とした税金を差し引くと正味利益は3.0%となります。
その正味利益の内訳は
- キャッシュフロー
- 含み益の蓄積=ローン元金返済=土地の持分増加
となるのです。
この正味利益こそが毎年の純資産増加額であり、不動産投資が生み出す本当の利益だといえるのです。
そしてこのスプレッド幅が変わらない限りこの正味利益の発生する額は毎年一定であると理解することが大切です。
そして正味利益がキャッシュフローとなっていますぐ手元に現金として戻ってくるのか、将来の売却時に現金化される『含み益』の蓄積になるのかの比率は、ローンの借り入れ条件によって変わるというわけです。
不動産投資の利益が増えるとキャッシュフローが減る問題について
ローン借入の返済がある不動産投資では毎年少しずつキャッシュフローが悪化するという問題があります。
そのため事前に収支予想シミュレーションをして複数の収益物件を保有して十分なキャッシュフローが出る収益物件を組み入れるなどの工夫をしなければ将来的にキャッシュフローが尽きてローンの返済ができなくなるというものです。
このことをデッドクロスともいいます。キャッシュフローが尽きてしまうことを不動産投資家は最も恐れるからです。
このような状態でキャッシュフローが減り儲からなくなったといってほとんどの人は売り時だと考えるのです。
この問題の本当のところは、年数がたつごとに金利の支払いが減ることと、将来的には建物の減価償却が終わるために経費が減って税金が増えることにあります。
ローン金利の支払いは税務上の経費になりますがローン元本の返済は経費にならないからです。
金利の支払いが減ると税務上の経費が減るので同じ売上だったとしても年々税務上の利益が増えてそれに課税される税金の支払いが増えるのです。
しかし銀行へのローン返済の支払い額は毎月一定額なので、税金支払い額が増えた分だけキャッシュフローを圧迫するというカラクリです。
さらに建物の原価償却が終われば税引き後のキャッシュフローが急激に減ります。
これも税務上の経費が減価償却がなくなった分だけ急激に減って税務上の利益が急激に増えたことによる税金の支払い額が増えたことが原因です。
このように長期で見るとキャッシュフローが悪化することを考えるとやはり収益物件の長期保有は非効率と思われるかもしれません。
しかし本質的に実はそうではないのです。
ローンの金利負担は年々減っていきますので毎月より多くのローン元本を返済してローン残債が減っていくペースは速くなります。
そして金利支払いが減ることによりスプレッドが広がりますので正味利益が増えるペースが年々少しずつアップすると考えられるのです。
また減価償却についても経験者の方でも誤解の多いところなのですが、実は減価償却の有無は不動産投資の投資リターンにはそれほど影響を与えるものではないのです。
それは減価償却が終わった後は税引き後キャッシュフローが急激に減る一方で純資産の増えるペースは安定的になるからなのです。
このような利益とキャッシュフローの関係を理解していればキャッシュフローが減ったとしても健全な理想的な不動産投資の形に近づいているわけだ儲からなくなったと考えるのは早計であることがわかります。
先述の通り不動産投資の利益は、
- いますぐ得られる賃料からのキャッシュフロー
- 将来の売却時に現金化される『含み益』
の2つに分かれています。
ローン金利支払い分が減って経費が減ったり、減価償却がなくなって経費が減ったりすることは、いずれも純資産は順調に増えているのにキャッシュフローが出なくなっただけなのです。
おわりに
仮にキャッシュフローが出なくてもローンの返済を続けて純資産である土地の持分『含み益』が増えてくれば自由度も増えてくるのが不動産投資の醍醐味でもあります。
収益物件からキャッシュフローが出なくなっても金融機関からの追加借り入れによって運転資金を確保するという選択肢も持てるようになるからです。
賃料収入から得られるキャッシュフローでも、銀行借り入れなどの財務活動によるキャッシュフローでも自由に使える現金が増えて賃貸経営が安定することに変わりはありません。
そのためには賃料から得られるキャッシュフローばかりにとらわれるのではなく、いかに正味利益の純資産を増やしていくのかに着目することが重要なのです。
純資産の蓄積は多くの場合で何らかの方法で現金化することもできるからです。