実際の任意売却の流れとはどのようなものなのでしょうか?
債務者の住宅ローンの滞納延滞に始まって最終決済まで、任意売却は大きく分けて下記の8つの流れで進んでいきます。
- 債務者の滞納延滞・倒産
- 担保不動産所有者の売却同意
- 担保不動産の調査・評価
- 購入希望者探し
- 買付証明書の取得
- 配分案の作成
- 債権者等利害関係人の調整
- 最終合意・契約決済・任意売却の終了
の主に8つのステップが任意売却にはあります。
この記事では、住宅ローンの滞納延滞から決済までわかりやすい任意売却の流れを時系列にご紹介します。
目次
任意売却のステップ①:債務者の滞納延滞・倒産
債務者の滞納延滞や倒産をきっかけとして担保不動産の処分を中心とした債権回収が始まります。
担保不動産の任意売却はこのような債権回収の中でも中心的な位置づけとなるものです。
担保不動産の任意売却をうまく活用して債権回収を図ることができれば、金融機関にとって回収の極大化につながります。
また、債務者から見ても任意売却で担保不動産をできるだけ高値で売却することができれば、債務の圧縮につながり残債務を減らすことができるのです。
任意売却のステップ②:担保不動産所有者の売却同意
任意売却前の面談交渉の重要性
任意売却を行うための条件として、担保不動産の処分権限者の売却意思と協力が必要不可欠です。
その中でも最も重要なのは、担保不動産の所有者との直接面談交渉にあります。
債務者自身は任意売却を行うことで担保不動産を取られてしまうことになるので、近所の評判や世間体などを気にして競売を避けたいという思いは必ずあります。
しかし競売になるのは嫌だと分かっていても任意売却でもなかなか債務者の腰は重いものです。
なぜ任意売却なのか?
任意売却には様々なメリットがあります。
物理的なメリットに目が行きがちですが、任意売却できちんと話し合いをして解決することで、その後の立て直しが競売よりもやりやすくなることが多いのです。
- 資産の値下がり
⇒時間が経つと資産の価値はどんどん目減りすることが多いので、できるだけ早期に任意売却で不動産を売却することで借金を少しでも多く返済した方が得策といえます。 - 生活や事業の再建
⇒このまま何も対処をせずに競売となってしまえば、生活や事業の再建立て直しはより困難になります。任意売却の売却先から賃借することでリースバックで生活や事業の再建を行うことも可能です。 - いつまでも請求がくる
⇒担保不動産の処分ができないままでいると、いつまでも債権者から請求を受け続けることになります。任意売却で早く処分すれば債権者も償却の手続きに入ったりサービサーに債権を売却したりするので、再建の可能性が高くなります。 - 残債や遅延損害金の減免
⇒任意売却はあくまでも債務者と債権者の話し合いで進められるものなので、場合によっては残債や遅延損害金の減免措置が得られる可能性もあります。 - 引越し費用の工面
⇒引越しするにも引越費用や新居を借りる費用などいろいろなお金がかかってきます。競売だと一銭も手元には残りませんが、任意売却であれば話し合いによって引越し費用が出る可能性もあります。 - 精神的にも楽
⇒長年住んだ家なので競売で強制的に処分されるよりも、任意売却で納得した上で手離す方が精神衛生上楽に感じられます。近所の人にも任意売却であれば自ら売却したと言えば事情に気づかれることはありません。
任意売却の期限
任意売却を進める上で重要なのが、『期限を区切る』ということです。
担保不動産の所有者によっては任意売却に協力するふりをしながら、ずるずるといつまでも占有を続けるケースがあります。
そこで、『いつまでに任意売却ができなければ競売を申し立てる』という形で期限を切ってくる債権者が多いです。
これは債務者が任意売却に同意して協力している場合でも、担保権者のなかに任意売却に応じようとしない者がいる場合にも有効です。
とにかく権利関係者全員が交渉のテーブルにつけるかどうかを早期に期限を切って結論を取ることが重要なのです。
このような過程で、ときには債務者と債権者の間で敵対関係に陥る可能性もあります。
なので、任意売却の交渉は債務者と債権者が直接行うのではなく、専門の不動産会社やコンサルタントを仲立ちにして交渉を行うということが有効なのです。
任意売却のステップ③:担保不動産の調査・評価
担保不動産は必ず自分の目で徹底的に現地調査を行うことが重要です。
- 地図
- 公図
- 不動産登記簿謄本
- 地積測量図
- 建物図面
くらいは最低限揃える必要があります。
最新の不動産登記簿謄本により権利関係者を確認し、現地調査により担保不動産の使用状況や占有状況などを把握することも必要です。
評価にあたっては、
- 地域制や用途
- 公法上の規制
- 権利関係
などの担保不動産の個別性をよく見たうえで、継続使用する評価ではなく処分できる評価を出すことが基本です。
任意売却のステップ④:購入希望者探し
そもそも購入希望者がいなければ任意売却は前に進みません。
そこで担保権者自身が努力するのはもちろん、協力してもらえる不動産業者などを総動員して購入希望者を探します。
ここで、
- 破産手続きに対しての知識がまったくない
- 任意売却に関する知識やコンプライアンスを理解できていない
ような不動産業者に任意売却を依頼すると、かなりの高確率で問題が発生しそれがトラブルへと発展してしまう危険性があるので注意が必要です。
任意売却のステップ⑤:買付証明書の取得
購入意思を確認するために購入希望者から買付証明書を取得します。
買付証明書には買付金額と買付条件を記載し、買付希望者の署名捺印をもらいます。
書式はさまざまな書式があります。
債権者の指定がなければ、不動産会社が使用しているもので最初は構いません。
任意売却のステップ⑥:配分案の作成
担保不動産には、売買価格を上回る抵当権の設定や税金等の滞納処分による差押え登記があるのが普通です。
任意売却を成立させるためにはそのような担保権者と交渉して抵当権や差押え登記を抹消してもらう必要があります。
基本的には公平に全ての利害関係者が納得する配分案を作成することが理想となりますが、この部分に関しては経験がものをいう部分でもあり、まったく初めての人が交渉するとうまく進まないこともままあります。
任意売却のステップ⑦:利害関係人の調整
抵当権を設定している担保権者や税金などの差押え登記を抹消してもらうために、解除料などの交渉などで一番負荷のかかるのがこの部分となります。
最も影響の大きい担保権者が主体となって利害関係人の調整に動くことによって任意売却がスムーズに行われる可能性が高くなります。
任意売却のステップ⑧:最終合意・契約決済・任意売却の終了
決済日の段取りを前もってきちんと行っておくことは非常に重要です。
なぜなら書類の不備などが決済日に判明したりすると、取引が中止にせざるを得ないことがあるので、司法書士などと十分な打ち合わせを行っておくことが望ましいといえます。
事前に解除書類のチェックを入念に行い、決済がスムーズに行うことができるように銀行に依頼しておき、配分案に沿った配分金種を準備しておくといった配慮が必要です。
決済当日は、
- 司法書士による解除証書の確認を行う
- 売買契約書の調印を行う(事前に契約調印してある場合は不要)
- 売買契約書に基づき買受人が担保物件所有者に代金を支払う
- 担保不動産所有者が銀行などの担保権者等に対し、配分案に応じた弁済を行う
- 担保権者などから担保不動産所有者に領収証を私、担保権等を抹消するための解除証書等を交付する
という流れになります。
おわりに
実際の任意売却の実務の流れは、通常の不動産売買と違ってプロセスが複雑になります。
まったく初めての不動産業者やその担当者であれば、わからないことばかりでうまく手続きを進められない可能性があります。