法人所有不動産の任意売却の場合の担保不動産の処分権限者は誰なのでしょうか?
担保不動産を任意売却して売るためには処分権限がなければいけません。
法人は個人と違って、担保不動産の処分権限者は、法人の倒産の形態や状況によって違います。
この記事では、
- 不渡り
- 破産
- 民事再生
- 特別清算
- 会社更生
の法人の業況の変化に伴い、誰が担保不動産の処分権限者となるのかについてご紹介します。
目次
法人が不渡り・破産・民事再生・特別精算・会社更生の状態では誰が任意売却を行う権限があるのか?
不渡りの場合
たとえ債務者である法人の業況が悪い方に傾斜してきているとしても、
- 延滞
- 第1回不渡り
- 銀行取引停止処分
などの事実が発生した段階では、まだ法的な申立てを行っているわけではないために、依然として担保不動産の所有者が処分権限者となります。
不渡りが生じてもその事実だけではただちにその法人が倒産したとはいえません。
とはいえ、多額の資金不足を理由とする不渡りはその実態から支払い停止と判断され、金融機関の債権管理面では債権回収というステージに移行することになります。
この段階で、債務者の代理人弁護士が受任をすることがよくあります。
一般的に自己破産の手続きの準備をしているということになりますが、弁護士が受任したからといってこの段階では必ずしも自己破産の手続きが取られるとはかぎりません。
破産の場合
破産管財人がつくと破産管財人が処分権者となる
債務者が破産手続きの申立てを行った場合でも、破産申立ての段階では担保不動産の所有者が処分権限者であることに変わりはありません。
このケースでは、本人と破産手続きの申立てをした代理人弁護士がいる場合はその破産申立代理人弁護士にも協力をお願いして任意売却を検討することになります。
破産申立てを受けて破産手続きが進み、破産開始決定となって破産管財人が選任された場合は、破産管財人弁護士が処分権限者となるため、任意売却の交渉についてはすべて破産管財人との間で行うことになります。
担保不動産が個人で明らかにオーバーローンな場合であるなどで同時廃止となった場合は、破産管財人が選任されないため、担保不動産の所有者自身は引き続き処分権限者となります。
破産手続きが集結したり、破産財団から放棄され、担保不動産の所有者が法人の場合で任意売却を行う場合は、担保権者が利害関係人として裁判所に清算人の選任申立てを行います。
そして裁判所により選任された清算人を法人の代表者として任意売却を進めることになります。
民事再生の場合
民事再生手続の場合は、原則として担保不動産の所有者本人が処分権限者となりますが、実際の任意売却にあたっては裁判所により選任された監督委員による同意が必要になります。
この場合の実務では本人および民事再生申立代理人弁護士と任意売却を行うのが一般的です。
特別精算の場合
特別精算会社は財産管理処分権限を失わないので、特別精算会社自身が処分権限者となります。
ただし、任意売却にあたっては監督委員の同意または裁判所の許可が必要となります。
近年では第二会社方式により企業再生が行われることが多くなりました。
そのようなケースでは旧会社を特別清算で処理するのが一般的となっており、特別清算会社が行う任意売却が増えています。
会社更生の場合
会社更生法では、担保権者といえども更生手続き意外に権利行使をすることができません。
したがって、更生管財人と協議をしながら進めていくことになります。
民事再生法では担保権の実行は可能なのですが会社更生法では担保権は更生担保権として処遇され、更生手続きによらなければ権利行使できないことになります。
なので会社更生法の場合は担保権者や所有者主導の任意売却は実質的にはできないということになります。
おわりに
法人所有の不動産における任意売却時の不渡り・破産・民事再生・特別精算・会社更生の処分権限者についてそれぞれまとめています。
会社更生法だけは担保権者といえども更生手続き以外に権利を行使することができませんので注意が必要です。
会社更生法の場合は更生管財人と協議を行う必要があります。