任意売却不動産が任意売却でなかなか売れない場合にひと工夫加えると売れるようになり任意売却がうまく進む場合があります。
例えば任意売却不動産の処分を検討していると、一筆のまとまった土地のままだと広すぎてなかなか売れないという場合があります。
そのような場合でも広い土地を任意売却の過程で分筆して宅地分譲すると、早期に任意売却できたという成功事例があります。
任意売却はあくまで不動産の売却のためそのまま右から左では買い手が見つからなくても、市場ニーズにあわせて任意売却の過程で加工することで買い手が見つかり、任意売却がまとまるということは多々あります。
この記事では、そのまま任意売却するより宅地分譲することで早く売却できた成功事例をご紹介します。
そのまま任意売却するより分筆して宅地分譲することで早く任意売却できた任意売却成功事例
今回の任意売却成功事例は債権者に対しての任意売却の提案でまとまった土地を分筆して宅地分譲して回収の極大化を図るという青写真を描いて
- 担保権者の配分調整
- 後順位担保権者担保解除料の調整
を行ったケースです。
【本成功事例の概要】
- 担保不動産:約330坪の更地
- 担保権
第1順位:A銀行 根抵当権4000万円
第2順位:B農協 根抵当権3000万円 - 担保物件の評価
・現状有姿一括売買⇒2640万円
・分筆後分譲⇒330坪のうち30坪は道路とし、残り300坪を一区画50坪の6区画にて分譲すると、一区画の評価600万円×6区画で3600万円となる。
A銀行はこの提案を受け、担保不動産からの債権回収の極大化を図るため、任意売却を提案した私と協力して債務者である土地の所有者と交渉しました。
その結果、
- 担保不動産を分筆する
- 宅地分譲する
- 任意売却による回収
という任意売却の出口戦略を描きました。
分筆や整地費用、不動産仲介手数料等の諸費用が400万円程度かかるものの、それでも全部売却すればA銀行は3600万円-400万円=3200万円の配当を得ることができ、一括して現状有姿で売却するよりも多額の回収ができることになります。
また、宅地分譲なのでローンを付けて販売することにより、銀行としては新たなビジネスチャンスも生まれます。
土地を分筆して任意売却する際の後順位担保権者との解除料の交渉
私はA銀行とともにこの任意売却の出口戦略を持って、任意売却の担保解除料についてB農協との交渉に臨みました。
任意売却の解除料の配分交渉の中で、B農協は分譲宅地が一区画売れる都度30万円の解除料が欲しいと要求してきました。
しかし一区画30万円の解除料を支払うとなると6区画で合計180万円もの解除料となってしまいます。
そこで私とA銀行は、
- もし土地を一括売買すれば通常の解除料の相場では30万円〜50万円
- 一区画の解除料を10万円で合計60万円の解除料でお願いできないか
という内容で後順位者のB農協との交渉を行いました。
B農協は当初この案には難色を示していました。
ただよく考えてみると、A銀行もB農協も同じ地盤で営業する金融機関同士であり、ある意味お互い様であるといえます。
今後逆のケースがあった場合は、当然A銀行も協力するということで一区画10万円の解除料で了解を得るに至ったのです。
おわりに
このような債権者同士が『お互い様』の事例は、次のように先順位根抵当権に配当がありその担保権者が後順位で担保権を設定していたというケースにも当てはまります。
【配分案】
- 配当可能金額:5000万円
- 担保権者配当
第1順位 K銀行 根抵当権3000万円 配当額3000万円
第2順位 L農協 根抵当権3000万円 配当額1950万円
第3順位 K銀行 根抵当権3000万円 解除料0万円
第4順位 L農協 根抵当権3000万円 解除料0万円
第5順位 O信用保証協会 根抵当権3000万円 解除料50万円
先順位で配当を受けた担保権者は、後順位で同一不動産に担保権を設定していたとしても、配当の見込みのない後順位の担保解除は解除料なしで解除するのが一般的なのです。
任意売却を長い間手がけているほど様々なケースに当たりますのでその都度債権者やステークホルダーに対して協議を行って解決していくことになります。
実際の任意売却ではこのようなケースをはじめとして、科書的な決まった解決方法が無い場合も多々あります。
その場合は任意売却の出口戦略を練って債務者、債権者にとって妥協できる落とし所を探っていかなければ任意売却を早期にまとめることは不可能となります。