シミュレーション

一棟収益物件の購入判断シミュレーションの詳細解説事例

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る
投資指標をフル活用した一棟アパート購入実戦シミュレーション

収益物件購入の際に、どの程度のレベルまでシミュレーションをしておけば安心なのでしょうか?

緻密にシミュレーションしようと思えばいくらでもできるのですが、手間がかかりすぎて現実的ではありません。

収益物件購入時のシミュレーションで最低限押さえておきたいことは、

  • 資金計画
  • 投資分析

の2点にほぼ集約されます。

この記事では、一棟収益9,500万円の購入判断シミュレーションの詳細解説をご紹介します。

一棟収益物件の購入判断シミュレーションの詳細解説事例

一棟アパート9,500万円購入シミュレーション

購入収益物件のシミュレーション設定

今回のシミュレーションの設定を下記に記載します。

  • 物件価格:9,500万円(税込)
  • 鉄骨造3階建
  • 1K×12部屋
  • 満室想定賃料(月額):790,000円
  • 現況満室
  • 築4年

 

購入資金計画

資金計画では、

  • 物件価格だけではなく、諸費用も含めた資金調達が必要な資金調達総額
  • 資金調達内訳とその資金計画

の2点をシミュレーションします。

 

資金調達総額

購入総額
物件価格 ¥95,000,000
諸費用(概算)   ¥6,500,000
合計 ¥101,500,000

物件価格9,500万円に対して諸費用が概算で650万円で見積もります。

諸費用としては物件価格の7%弱となりますので、この程度を見積もっておけば安心です。

以上より、この物件では合計1億150万円の資金調達が必要となることがわかります。

 

資金計画

資金計画
自己資金 ¥12,600,000
借入額 ¥88,900,000
金利 4.500%
借入期間 30年
月額返済 ¥450,443
固定資産税・都市計画税(概算) ¥380,200
不動産取得税 ¥485,000

借入額は総額の約87.5%、物件価格の約93.5%で計算しています。

特に理由はありませんが、あまりキリが良い数字過ぎると現実味が薄くなるからです。

スルガ銀行などでよくある90%融資を基準に設定しています。

ちなみに、上記の融資額/物件価格は後で出てくるLTV(ローン資産価値比率)のことです。

総額の1億150万円から融資額の8,890万円を差し引いた、1,260万円が自己資金額となります。

金利は4.5%と高めに設定します。

ほぼスルガ銀行の設定になってきますが・・・ここを低く見積もりすぎると、シミュレーション結果は良い数字が並びますが、『皮算用』となってしまいます。

融資実行時に金利は決定すると思いますが、シミュレーションより条件が悪くなることがないように厳しく見積もっておくと安心です。

仮に良い条件で金利が下がれば、その分シミュレーション結果は良くなることになります。

鉄骨造の耐用年数は34年ですので、築4年であれば最大30年の融資が引ける可能性があります。

本物件は鉄骨造で築浅でもあり、30年の融資は問題なく引けると考え、融資期間は30年に設定しています。

月額返済額は、

  • 借入額
  • 金利
  • 融資期間

が決まれば自動的に計算できます。

固定資産税・都市計画税は毎年必ずかかるので、概算でもよいので必ず出しておきます。

不動産取得税は初年度1回きりですが、金額が大きくなるのでこれも必ず資金計画に入れておいたほうが安心です。

不動産取得税の納付書が来てからもし現金がないと慌てることになるからです。

 

投資分析

投資分析を行う際には必ず、

  • 満室想定
  • 引き直し家賃+空室損

の2通りのシミュレーションを行い、

  • 物件のポテンシャル
  • 投資収益判断

を確認することをおすすめします。

 

満室想定シミュレーション

満室想定での収支シミュレーションは下記のようになります。

満室想定賃料(月額)
現況賃料 ¥790,000
   
収入合計 ¥790,000
支出の部(月額)
BM管理費 ¥10,000
共用部光熱費 ¥5,000
固定資産税・都市計画税 ¥31,683
賃貸管理料 ¥58,065
CATV ¥6,300
支出合計 ¥111,048
収支(年額)
GPI ¥9,480,000
▲OPEX ¥1,332,580
NOI ¥8,147,420
▲ADS ¥5,405,319
 CF ¥2,742,101
投資分析
LTV 93.58%
CCR 21.76%
FCR 8.03%
表面利回り 9.98%
K% 6.08%
レバレッジ
BE% 71.07%
最低稼働戸数 8.53戸
DCR 1.51
PB 4.60年

満室想定のシミュレーションは、この物件の最大ポテンシャルを表します。

現況満室なので、物件を買った瞬間は、このパフォーマンスが発揮されていると言えますが、これが未来永劫続くことを想定することはできません。

あくまでこの物件の最大ポテンシャルです。

しかしながら、満室想定でのパフォーマンスすら低いとなると、家賃の引き直しや空室損の設定に耐えられなくなりますので、まずは最初のチェックする関門といえます。

『収支』と『投資分析』については、後でまとめて記載しようと思いますので、先に引き直し家賃+空室損のシミュレーションを行います。

 

引き直し家賃+空室損を考慮したシミュレーション

家賃を引き直し、空室損を考慮に入れたシミュレーションは下記のようになります。

引き直し賃料(月額)
引き直し賃料 ¥720,000
 ▲空室損5% ¥36,000
収入合計 ¥684,000
支出の部(月額)
BM管理費 ¥10,000
共用部光熱費 ¥5,000
固定資産税・都市計画税 ¥31,683
賃貸管理料 ¥50,274
CATV ¥6,300
支出合計 ¥103,257
収支(年額)
GPI ¥8,208,000
▲OPEX ¥1,239,088
NOI ¥6,968,912
▲ADS ¥5,405,319
 CF ¥1,563,593
投資分析
LTV 93.58%
CCR 12.41%
FCR 6.87%
表面利回り 9.09%
K% 6.08%
レバレッジ
BE% 76.90%
最低稼働戸数 9.23戸
DCR 1.29
PB 8.06年

どうでしょうか?

家賃を引き直してマイナス7万円/月、空室損を5%考慮するだけで、

  • CF(キャッシュフロー)・・・約118万円減少。実に約43%のダウンとなります。
  • CCR(自己資本配当比率)・・・9.35%のダウン
  • FCR(総収益率)・・・1.16%のダウン

不動産投資にとって家賃収入がどれほど重要か、数字にしてみるとごまかしがきかないので、よく分かると思います。

逆にいえば、いい加減な家賃設定で購入してしまうと、後で苦労することになるということを示しています。

月額収入の減少が年額になると大きくなり、それを毎年繰り返すので、累積での減少はもっと大きくなります。

物件情報やレントロールの家賃を鵜呑みにしてはいけない理由がここにあります。

今回のシミュレーションでは、家賃引き直し+空室損を入れてもある程度理想的な物件になっています。

満室想定家賃と引き直し後の家賃の差が大きいほど、数値の落ち込みも激しくなりますので注意が必要です。

特に部屋数が多い比較的規模の大きな物件になるほど、1部屋当たりの月額賃料を下げて引き直すだけで、全体では年額で大きな収入減少となり、各数値を大きく下げる要因となります。

 

収支・投資分析シミュレーション詳細説明

収支・投資分析シミュレーション詳細

今回の収支・投資分析シミュレーションを、上から順番に分かりやすく見ていきます。

満室想定の月額賃料を年間賃料に直すと、GPI(潜在総収入)となり、引き直し家賃と空室損を差し引くと、EGI(実効総収入)となります。

管理料やBM(ビルマネジメント)費用を年額に直し、固定資産税・都市計画税の支出を合算したものがOPEX(運営費)となります。

EGIからOPEXを差し引くと、NOI(NET収入)が出ます。

◎NOI=EGI-OPEX

この物件の場合は、NOI=696.8万円となります。

購入総額に1億150万円かかるこの物件を、すべて自己資金で買えたとすれば、このNOIの696.8万円が丸々手元に残ることになります。

借入8,890万円に対する毎月の返済額に12ヵ月を掛けて年間当たりに直すと、それがADS(年間借入返済額)となり、ADS=545.5万円となります。

NOIからADSを差し引くとCF(キャッシュフロー)が出ます。

◎CF=NOI-ADS

となり、今回のCF=156.3万円となり、これで最終的に手元に残る金額が分かることになります。

LTV(ローン資産価値比率)は、借入が購入物件価格に占める割合です。

◎LTV=借入金額/物件価格×100

となり、今回は借入金額が8,890万円で物件価格が9,500万円ですので、LTVは93.58%となっています。

CCR(自己資本配当比率)は、投資の効率性をみる指標であり、投下した自己資金がどれくらいの利回りで運用できているかを表します。

◎CCR=CF/自己資金額×100

となり、CFが156.3万円、自己資金額が1,260万円ですので、CCR=12.41%となっています。

ローンの借入をテコに、1,260万円のキャッシュを最終税引前の段階で、年利12.41%で運用できていることを表しています。

FCR(総収益率)は、物件の実質的な収益力を表しています。

NOIを購入総額で割り戻すと計算できますが、要は、現金で購入したとして、諸費用も含めた場合の実質的な利回りということになります。

◎FCR=NOI/購入総額

となり、今回はNOIが696.8万円、購入総額が1億150万円ですので、FCR=6.87%となります。

NOI(NET収入)を出し、FCR(総収益率)で比較することで、様々な条件の物件を同一の条件下でならして比較検討できることになり、単純にFCRが高い物件ほど、現状での購入総額に対する収益率が高い物件だといえます。

K%(調達コスト)は、借入に対する返済額の割合=借りるお金のコストを表します。

投資家から見たときは、このコストは低いほうが良いことになります。

一方で、この数値は貸し手の銀行から見たら、利回りとなります。

◎ローンコンスタントK%=ADS/ローン残高×100

となり、今回はADSが540.5万円、ローン残高が8,890万円ですので、K%=6.08%となります。

これはどう評価するのかというと、FCRやCCRとの比較です。

調達コストであるK%よりFCRやCCRが上回っていれば、レバレッジが効いている状態であるといえます。

今回は上回っていますので、レバレッジは『+(プラス)』と判定されています。

BE(損益分岐点)は、損益分岐点であるブレークイーブンポイントに対する割合を表します。

OPEXとADSを足したものを、EGI(空室損は除く)で割り戻したものです。

◎BE=(OPEX+ADS)/EGI(空室損除く)×100

となり、今回はOPEXが123.9万円、ADSが540.5万円、EGI(空室損除く)は864万円ですので、BE=76.90%となります。

ちなみに、

  • BE<100%・・・CFがプラス=収益
  • BE>100%・・・CFがマイナス=損失
  • BE=100%・・・CFが0=損益が0

ということになります。

最低稼働戸数は年間通しての平均稼働戸数の損益分岐点を表し、総戸数にBEを掛けて計算できます。

◎最低稼働戸数=総戸数×BE

となり、今回は総戸数が12戸、BEが76.90%ですので、最低稼働戸数=9.23戸となります。

DCR(負債支払安全率)は、NOIがADSの何倍あるかということを表します。

◎DCR=NOI/ADS

となり、今回はNOIが696.8万円、ADSが540.5万円ですので、DCR=1.29となります。

  • DCR=1・・・NOI=ADS
  • DCR>1・・・NOI>ADS
  • DCR<1・・・NOI<ADS

となり、年間返済額に対してNOI(NET収入)がどれくらいの余力があるかを数値化できます。

なお、DCRはCCRと反比例する関係にあります。

借入率を大きくしてCCRを高くすると、DCR(負債安全支払率)が小さくなり、投資環境の変化に対するマージンが小さくなります。

PB(自己資金回収期間)は、自己資金をペイバックする期間を表します。

投下した自己資金額をCFで割り戻すことで計算できます。

◎PB=自己資金額/CF

となり、今回は自己資金額が1,260万円、CFが156.3万円ですので、PB=8.06年となります。

投下した自己資金を8年と少しで回収できることがこれで分かります。

以上で、収支・投資分析シミュレーションの各項目を上から順番に全て見てきたことになります。

シミュレーションして数値化することで、良し悪しをはっきりさせた上で、購入するかどうかの検討をすることで、購入してからの『こんなはずじゃなかった・・・』を防ぐことができます。

ここまでのシミュレーションを、貸借対照表(B/S)のように、必要資金と資金調達を並べて表にしたものが下記となります。

 

必要資金/資金調達対照表

必要資金と資金調達を左右で対照表にしたものです。

必要資金/資金調達対照表
必要資金 資金調達
 諸費用:650万円 自己資金
1,260万円
物件金額:9,500万円
(購入総額:1億150万円)

FCR=6.87%
NOI=696.8万円

借入金額:8,890万円
(LTV=93.58%)
金利:4.5%
期間:30年
K%=6.08%
ADS=540.5万円

 

以上、ここまでがひと通りのシミュレーション結果となります。

まとめ

  • アクイジション(物件取得)時に最低限押さえておきたいシミュレーションは、①資金計画②投資分析の2つに集約される。
  • シミュレーションのスタートはレントロール記載の家賃をきちんと現状でも埋まる家賃に引き直すことから始まる。ここがいい加減だったり希望的観測が入っていれば、どんなシミュレーションをしても出てきた数値と現実が乖離してしまうので、購入後に困ることになる。
  • 空室損やOPEX(運営費)を多めに見積もっておくことも有効だが、あまり安全にやりすぎるのも検討範囲を狭めてしまうので、バランスをもって検討する。
  • あくまで検討のシミュレーションなので、数をこなして、いろいろな数値で計算してみることで、シミュレーションを見る目を養うことができる。

あなたにおすすめの記事

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

無料相談:不動産投資のセカンドオピニオンサービス

不動産投資に関して聞きたいことがあるときにいったい誰に相談すればよいのでしょうか?


◎物件購入を検討しているが本当にこの物件でよいのか?

◎不動産会社に勧められている物件は本当に買いなのか?

◎不動産会社の担当者に言われたことの信ぴょう性は?

◎査定してもらった売却価格は妥当なのか?

◎節税対策や相続税対策をどのように進めるべきか?

◎今後の展開や投資戦略はどうしていけばよいのか?


など、様々な不動産投資に関する疑問に対して、プロの目線で第三者のアドバイスを無料で受けることができます。


是非、不動産投資のセカンドオピニオンサービスをあなたの不動産投資にお役立てください。


不動産投資のセカンドオピニオンサービス

【免責事項】

 

当サイトのすべてのコンテンツ・情報につきましては、可能な限り正確な情報を掲載するよう努めておりますが、必ずしも正確性・信頼性等を保証するものではありません。
当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねます。
本免責事項、および、当サイトに掲載しているコンテンツ・情報は、予告なしに変更・削除されることがあります。

コメントを残す

*