任意売却

担保権消滅許可制度を使った破産管財人弁護士の任意売却3つのケース

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担保権消滅許可制度を使った破産管財人弁護士の任意売却3つのケース

平成17年に新破産法が施行されて、破産管財人弁護士による任意売却にも新しい視点から取り組む必要が生じています。

その中心となるのが『担保権消滅許可制度』となります。

『担保権消滅許可制度』とは破産管財人による任意売却において、裁判所の下で強制的に担保不動産に付着するすべての担保権などを消滅させて、その売買代金の一部を破産財団に組み入れ、残りを担保権の順位に従って配当するというものです。

この記事では、担保権消滅許可制度を使った破産管財人弁護士の任意売却3つのケースをご紹介します。


担保権消滅許可制度を使った破産管財人弁護士の任意売却3つのケース

担保権消滅許可制度の制定された背景

従来、破産管財人の所有物件を任意売却する際には、

  • 破産財団への組入額の交渉
  • 担保解除料(ハンコ代)しかもらえない後順位担保権者との交渉

を粘り強く行う必要がありました。

破産財団への組入額については裁判所からの指導があるからという理由で売却代金の10%を譲らない破産管財人側と、少しでも回収の極大化を狙う銀行などの担保権者との間で対立が生じたり、配当のない後順位担保権者が高額な担保解除料を要求して任意売却が流れたりするケースが起きていました。

新破産法ではこうした問題を是正し、すべての担保権者などからの同意が得られなくても、破産管財人による任意売却が進められる担保権消滅許可制度が設けられたのです。

 

担保権消滅許可制度を使った任意売却

担保権消滅許可制度を使った任意売却の事例について下記のケースで見ていきます。

  • 担保不動産所有者:破産管財人弁護士
  • 担保不動産の時価評価:5000万円
  • 競売想定価格:3000万円
  • 担保権者:【第1順位】A銀行 根抵当権極度額3000万 【第2順位】B信金 根抵当権極度額4000万円 【第3順位】C金融 根抵当権極度額1000万円

時価5000万円の不動産に、A銀行、B信金の担保権が合計7000万円、さらにC金融の担保権が1000万円ついています。

この物件について破産管財人弁護士が主導する任意売却が進み、4000万円での購入希望者が現れました。

破産管財人は仲介手数料等の費用200万円を控除した配当可能金額3800万円について、以下の配分で任意売却を進めたいと各担保権者に提案したとします。

  • 破産財団組入額(売買代金の10%):400万円
  • 担保権者等配当:【第1順位】A銀行3000万 【第2順位】B信金380万円 【第3順位】C金融(解除料)20万円 合計3800万円

この配分案の提案に対し、根抵当権満額の配当があるA銀行は当然了承しますが、

  • B信金の回答
    ⇒売買価格4000万円は安すぎる。じっくり売却先を探せばもっと高い価格で売却先が見つかるはずだ。破産財団組入額も10%は法外であり5%程度が妥当なのではないか。
  • C金融の回答
    ⇒解除料20万円なんてすずめの涙程度で担保権を解除するつもりはない。最低でも100万円はもらはないと解除に応じない。競売でも担保権消滅許可制度でも好きにすればいい。

という具合に当然なってきます。

売買価格である4000万円は、当該不動産の時価と競売想定価格のほぼ中間程度であり、処分する価格としては妥当だと破産管財人弁護士は考えています。

破産管財人弁護士はこのような回答では任意売却をまとめることは難しいと判断し、裁判所に対して担保権消滅請求の許可申請を行ったというのがこの事例の経緯です。

このあとどうなっていくかを3つのケースに分けて見ていきます。

 

ケース①担保権消滅請求がそのまま進行した場合

破産管財人弁護士による担保権消滅請求の許可申請がなされると、その申立書と売買契約書がすべての担保権者にたいして送達されます。

申立書等が送達されてから、すべての担保権者が何も対抗手段をとらないまま1ヶ月を経過すると、破産管財人弁護士が探してきた売却先との間で自動的に売買契約が成立します。

そして裁判所による配当が実施されることになり、今回のケースでの配当額は、

  • 破産財団組入額:400万円
  • 第1順位 A銀行:3000万円
  • 第2順位 B信金:400万円
  • 第3順位 C金融:0万円

となります。

配当は担保権の順位に基づいて自動的に行われるため、解除料はなくC金融の取り分はゼロとなります。

 

ケース②担保権者の対抗手段1:競売の申立てがなされたケース

破産管財人弁護士による担保権消滅許可請求では、不服である担保権者に対抗手段を与えています。

そのひとつが担保権実行の申立てでありいわゆる競売となります。

申立書と売買契約書が送達された担保権者は、その送達から1ヶ月以内であれば競売に踏み切ることができます。

このケースではB信金が競売を申し立てました。

そうなると裁判所は担保権消滅の許可の決定を行うことはできず不許可決定を出すことになります。

その結果B信金の申し立てによる競売手続きが進行することになります。

なおこのケースでは競売想定価格が3000万円なので、B信金の申し立てた競売は無剰余(配当される見込みがない)で裁判所により却下される可能性が高いことがあらかじめ予想されます。

そこで裁判所においてその結論が出るまでの間、担保権消滅請求の可否判断を留保するといったケースも想定されます。

 

ケース③担保権者の対抗手段2:担保権者から買受申込があった場合

担保権者は申立書と売買契約書が送達されてから1ヶ月以内に、競売を申し立てるほかに、この担保不動産を破産管財人弁護士の予定する売得金(売買代金から経費を控除した額)の額に5%以上加算した金額で買い受ける旨を申し出ることができます。

このケースでは、NETの配分額である3800万円が基準となります。

買受人は債権者自身がなっても良いし、購入希望者を探し出してきても構いません。

ここではB信金が4300万円の購入希望者を探し出してきたします。

売買にかかる諸費用200万円を控除しても配当可能金額は4100万円となり3800万円と比較すると105%超となります。

この場合買受希望者は保証金として4300万円の20%である860万円を破産管財人に交付する必要があります。

結果、裁判所がB信金の連れてきた買受希望者への売却を許可するとそれぞれの配当額は、

  • 破産財団組入額:0万円
  • 第1順位 A銀行:3000万円
  • 第2順位 B信金:1100万円
  • 第3順位 C金融:0万円

となります。

 

担保権消滅許可制度の4つのポイント

ポイント①担保権実行の申立て

担保権者は競売の方が高く売却できると判断すれば、競売を申し立てることで破産管財人弁護士に対抗できます。

ここで注意する点は、競売を申し立てた後にその競売が取り下げられたり、無剰余で却下された場合は競売の申立書類は提出されなかったものとみなされるというところです。

つまり、担保権消滅許可制度を阻止するだけのような意図を持った競売は実質的に認められないということです。

 

ポイント②買受の申出

破産管財人弁護士が探してきた購入希望者よりも、その予定する売得金の額に5%以上高い買受希望者を担保権者が見つけてくれば買い受ける権利はそちらにいくことになります。

5%という基準は、たとえば売得金が1000万円だとすると、売得金が1050万円以上になる買受希望者を探してくれば良いことになります。

物件が小さければそれほど困難なことではありません。

しかし、すぐに対抗手段を取られるような担保権消滅請求の申立てを破産管財人弁護士が利用することはあり得ないと考えられるため、実際の運用となるとこのような手段が踏まれることは稀なのではないかと考えられます。

つまり、買受金額が高額な場合や破産管財人弁護士と担保権者との交渉が決裂した場合に、担保権消滅許可制度が用いられるものと考えられます。

 

ポイント③認められる諸費用の範囲

売得金を算出するにあたって、諸費用はどこまで認められるのかというと、控除される諸費用はかなり限定されると考えられます。

具体的には、

  • 不動産仲介手数料
  • 担保抹消費用
  • 評価が困難な場合の鑑定料

など本当に支出が必要な費用に限られます。

 

ポイント④任意売却に与える影響

担保権消滅許可制度は配当を受けることができない後順位担保権者による不当に高額な解除料の要求に対して、一定の牽制機能を果たすと考えられます。

担保権消滅許可制度に基づいた配当が行われるとなれば、配当の見込みのない後順位担保権者は一銭ももらえません。

結果として高額な解除料を要求すること自体が社会のルールに反するということになるということです。

破産管財人弁護士が行う任意売却は、担保権者等利害関係人全員の同意を取り付けて行うのが原則だと考えられます。

その意味では担保権消滅許可制度はあくまでも補完的なものとして意識され、そのようなものとして利用されるのが望ましいといえます。

任意売却は損益の大小はあるものの、利害関係者全員がwin-winの関係でまとまるのが最良です。

利害関係者全員が真摯に協議し、納得した上で任意売却を進めることができるように努力したいものです。

 

まとめ

破産管財人弁護士による任意売却で、破産財団への組入額の交渉や後順位担保権者との解除料の交渉などでこじれて前に進まない場合には担保権消滅許可申請を行うことができます。

破産管財人弁護士が担保権消滅請求を行うと、そこから1ヶ月が経過すると自動的に配分が行われて任意売却が成立することになります。

後順位担保権者が担保権消滅請求に対抗するには、

  1. 競売を申し立てる
  2. 破産管財人弁護士が予定する売得金(売買代金から費用を控除した額)の額に5%以上加算した金額で担保権者側が買い受ける申請を行う

の2通りしかありません。

どちらにしても後順位の担保権者になるほど、最初の段階で解除料をもらっておいたほうが結果的に配当される取り分が多くなるという場合が多いので注意が必要です。

担保権消滅許可申請ができることで無駄に結論を引き延ばす担保権者を牽制することができるようになったともいえます。

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